野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > たまねぎの需給動向

今月の野菜 野菜情報 2025年4月号

たまねぎの需給動向

印刷ページ
調査情報部

主要産地

タイトル: p039

 たまねぎの原産地はインド北西部、中央アジア南西部辺りと言われているが、いまだ野生種は見つかっていない。しかしながら古代から栽培され、エジプトではピラミッド建設の労働者への報酬とされたり、「千夜一夜物語」でもたまねぎを食したり精力剤にする話があったりと、古くから食べられていたことがわかる。日本へは江戸時代にオランダから長崎へ伝わり、本格的に栽培され始めたのは明治中期以降で、北海道で春まき栽培、大阪で秋まき栽培が始まり産地として発展していった。1年を通して出回る重要な野菜で、家庭でも一般的な野菜の一つである。
 日本で栽培されているたまねぎの大部分は「黄たまねぎ」で、辛みがあり貯蔵性が高い。春先からは府県産の「新たまねぎ」が出荷されるが、これは辛みが少なく生でもサラダでも食べられる。その他、サラダなどに適した生食用の「赤たまねぎ(紫たまねぎ)」や、春先のわずかな期間に出回る「白たまねぎ」「サラダたまねぎ」「葉たまねぎ」、直径4センチメートルほどの「ペコロス」、スパイスとして用いられる「エシャロット(仏語)」などがある。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和5年の作付面積は、2万5500ヘクタール(前年比101.2%)と、前年に比べてわずかに増加した。
 上位5道県では、
●北海道  1万4900ヘクタール(同 100.7%)
●佐賀県  2130ヘクタール(同 106.0%)
●兵庫県  1650ヘクタール(同 103.1%)
●長崎県  762ヘクタール(同 101.3%)
●愛知県 468ヘクタール(同 98.5%)
 となっている。
タイトル: p040a
 
 令和5年の出荷量は、106万6000トン(前年比96.5%)と、前年に比べてやや減少した。
 上位5道県では
●北海道  70万6600トン(同 91.4%)
●佐賀県  9万700トン(同 116.1%)
●兵庫県  9万100トン(同 114.5%)
●長崎県  2万7300トン(同 103.4%)
●愛知県  2万1900トン(同 97.8%)
 となっている。
タイトル: p040b
 
 令和5年の出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量(単収)を見ると、兵庫県の5.93トンが最も多く、次いで愛知県の5.19トン、北海道の5.05トンと続いている。その他の県で多いのは、香川県の5.02トン、富山県の4.95トンであり、全国平均は4.60トンとなっている。
タイトル: p040c

作付けされている主な品種等

出荷量が最大の北海道は、貯蔵たまねぎの産地であるが、九州地方は新たまねぎの産地としても有名である。
 作付けされている品種を見ると、北海道の春まき用と府県産の秋まき用とでは、抽苔(ちゅうだい)(とう立ち)のしにくさや生育に必要な日照時間が異なるため、品種もそれぞれ異なるものが用いられている。

タイトル: p041a
 

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、北海道産と九州産が同時に入荷する4月が最も多く、5~7月の夏場にかけては佐賀産、兵庫産の入荷が中心となる。8月以降は再び北海道産が増え、年明け1~3月は白たまねぎの産地である静岡産の入荷が見られる。

タイトル: p041b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、東京市場と同様に北海道産と佐賀産や長崎産といった九州の産地と兵庫産が同時に入荷する4月の入荷が最も多い。近隣産地である兵庫産は通年入荷しているが、特に5~8月の入荷が多い。

タイトル: p042a

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場における令和6年の国内産たまねぎの価格は、1キログラム当たり105~204円(年平均147円)の幅で推移した。4年はたまねぎの絶対量不足から2~6月まで1キログラム当たり200円を超える高値で推移した。5年および6年は、全体的に野菜価格が高値で推移しものの、たまねぎの価格は比較的安定して推移した。
 外国産たまねぎの平均価格(令和6年)は、110~132円(年平均120円)の幅で、国内産価格(147円)の8割程度で推移し、年間を通して価格の変動は少なかった。




輸入量の推移

 たまねぎは家庭での消費以外に、中食や外食などの業務用利用が多い食材でもあり、生鮮野菜の中で最も輸入量が多い野菜である。
 生鮮たまねぎの輸入量は、令和2年が過去10年で最も少ない22万トンとなっており、コロナ禍による外食需要の減退が影響しているとみられる。輸入先のシェアは中国が拡大する一方、米国、ニュージーランドは縮小している。中国産たまねぎは周年で輸入されており、主に加工・業務用野菜(むきたまねぎ)として輸入されていたが、一部は卸売市場にも入荷される。米国産は主に8月~翌4月に輸入されており、量販店などでも販売される。
 乾燥たまねぎの輸入量は、7000トン前後で推移しており、主な輸入先は、米国、エジプト、中国などである。





消費の動向

 たまねぎの1人当たりの年間購入量を見ると、5400グラム程度で推移していたが、令和2年は6296グラムと過去10年間で最も多くなった。これはコロナ禍に家庭内消費が増えたこと(いわゆる巣ごもり需要)が要因と考えられる。
 たまねぎを切ると涙が出るのは「硫化アリル」という揮発性成分の影響であるが、一方でこの成分は心身の疲れ、不眠症、イライラの解消に役立つ。また、ビタミンB1の吸収を高める働きがあるため、調理の際にはビタミンB1を豊富に含む豚肉やベーコンなどと食べ合わせるとその吸収が高まる。その他、たまねぎには血液をサラサラにする効能が認められており、動脈硬化、血行不良、脳血栓や脳梗塞の予防にも効果が期待できる。