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今月の野菜 野菜情報 2025年2月号

やまのいもの需給動向

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調査情報部

主要産地

 タイトル: p026
 
 やまのいもが属するヤマノイモ科ヤマノイモ属は、アジア、アフリカ、中南米を中心に世界中に分布し、600種以上がある。この中で食用できるものを「ヤム(yam)」と総称し、日本では「やまのいも」や「やまいも」と称するが、主に円筒形の「ながいも」、扁平な「いちょういも」(関東ではやまといもと呼ばれる)、球形の「やまといも」(関東ではつくねいもと呼ばれる)の3群に分類される。やまといもには、石川県の「加賀まるいも」、三重県や奈良県の「伊勢いも」、兵庫県の「丹波いも」といった特産品がある。すりおろして、とろろにした時の粘りが強いのは、「自然(じねん)(じょ)」や「いちょういも」、「やまといも」で、「ながいも」は水分が多いためしゃきしゃきとした歯ごたえが魅力で、漬物のほかかるかん饅頭(まんじゅう)のような饅頭の皮にも使われる。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和5年のやまのいもの作付面積は、6350ヘクタール(前年比95.8%)と、やや減少した。
 上位5道県では、
●青森県  2140ヘクタール(同 95.5%)
●北海道  1800ヘクタール(同 95.7%)
●千葉県  466ヘクタール(同 98.1%)
●群馬県  354ヘクタール(同 90.8%)
●長野県  260ヘクタール(同 98.9%)
 となっている。

タイトル: p027a
 
 令和5年のやまのいもの出荷量は、13万8800トン(前年比104.1%)と、前年に比べてやや増加した。
 上位5道県では、
●北海道  6万8500トン(同 103.6%)
●青森県  4万5000トン(同 108.4%)
●長野県  4860トン(同 98.8%)
●千葉県  3940トン(同 94.9%)
●群馬県  3150トン(同 87.5%)
 となっている。
 
タイトル: p027b
 
 やまのいもの出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、北海道の4.49トンが最も多く、次いで長野県の2.44トン、青森県の2.30トンと続いている。その他の県で多いのは、鳥取県の2.73トンであり、全国平均は2.58トンとなっている。
 
タイトル: p027c

作付けされている主な品種等

 北海道と青森県が主力産地となっているが、各道県独自の品種が開発されている。令和5年のやまのいもの作付面積は約4%減少したが、出荷量は約4%増えており、年によって作柄の変動はあるものの、多収系への転換が進んでいることがこの一因とみられる。

タイトル: p028a

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、青森産に次いで北海道産の割合が高く、この2産地で約8割を占める。千葉産、茨城産、岩手産、埼玉産の入荷も通年で見られる。貯蔵できるため、大きな入荷のピークはないが7月に最も入荷が増え、その後徐々に入荷量が減り、12月にまた入荷が増えている。
 
タイトル: p028b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、北海道産が最も多く、次いで青森産となっており、この2産地で約9割を占める。大阪中央卸売市場では、7月の入荷も多いが、その後徐々に入荷量が減った後、東京都中央卸売市場よりひと月早く、11月から入荷が増え、12月にピークを迎える。
 
タイトル: p029a

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場におけるながいもおよびやまといもの年平均卸売価格は、ながいもは令和3年が305円、4年が292円と300円前後で推移したが、5年は11月の538円をピークに年平均は439円と約1.5倍の価格となった。やまといもは3年は536円、4年は629円、5年は689円と毎年1割程度価格が上昇している。
 
タイトル: p029b

輸入量の動向

 ながいもの輸入量のうち、生鮮は、平成29年が最も多く、その後は減少傾向で推移しており、中国産とベトナム産で9割を占めている。冷凍は、30年をピークに令和2年まで減少傾向で推移した。元年から3年にかけては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、現地での作業停滞などの影響があったものと考えられる。3年からは増加傾向に転じ、直近の4年および5年は、650トン程度で推移しており、COVID-19拡大前と同程度の輸入数量に戻っている。なお、輸入先は中国産が大半を占める。
 ※財務省の統計では、やまのいもは「ながいも」に分類される。
 
タイトル: p030a

輸出量の動向

 ながいもは、いちごと並び海外への輸出が進んでいる品目で、台湾や米国が大きな市場となっており、直近2年のながいも(生鮮)の輸出量は7000トンを超えている。台湾では薬膳料理やジュースの材料として人気があり、大型サイズが好まれる傾向がある。米国では西海岸のアジア系マーケットが販売の中心となっているが、米国東海岸やシンガポール、香港などにも市場を拡大している。
 
タイトル: p030b

やまのいもの消費

東京都区部の小売価格は、平成29年に1キログラム当たり945円の高値をつけ、その後同800円前後で推移していたものの、令和5年は同872円と値を上げた。
 ながいもは、粘りが少なめで水分が多くシャキッとした歯触りのため、千切りやたたきで酢の物にする他、山かけや揚げ物のつなぎに利用される。やまといもは、ながいもよりも粘りが強くあくが少ないので、すりおろしたとろろに向く。丹波いもや伊勢いもに代表されるごつごつしたこぶしのような形状のやまといもは、粘り気が最も強く、肉質も良いことから高級食材として需要があり、また、和菓子や練り物のつなぎとしても利用される。自然じねんじょは、粘り気が強く風味がよいため、とろろに最適である。
 近年、このとろろが、胃腸の働きを助ける「腸活食材」や、体を温めて体調を整える「温活食材」として注目されている。とろろには夏の食欲増進食材というイメージがあるが、近年は鍋物に取り入れる需要が高まっている。株式会社ぐるなびが選出した「2023年トレンド鍋®」に「とろみ鍋TM」が選ばれ、同社調べによると、23年7月までの1年間でとろみメニューを扱う飲食店が1.5倍に増え、このとろみをイメージする食材として、とろろがメニューに活用されている。また、季節を問わないこれら飲食店の需要や、コンビニ・居酒屋メニューとして加工業務用向けの需要が高まっており、このニーズを受けて皮むき加工し、冷凍とろろとして供給する取り組みを行う産地も出てきている。
 
タイトル: p031