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今月の野菜 野菜情報 2025年1月号

かぶの需給動向

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調査情報部

主要産地

タイトル: p023

 かぶは、春の七草の「すずな(鈴菜)」として古くから親しまれている。キャベツやはくさいと同じアブラナ科で、アフガニスタンを原産地とする「アジア系」と、地中海沿岸に自生していた「ヨーロッパ系」の2種類がある。日本へは、弥生時代に中国から伝わったとされ、「日本書紀」には持統(じとう)天皇(645~703)が五穀を補う作物として栽培を推奨したとの記録が残っている。このような長い栽培の歴史の中で、日本は世界的に見ても品種発達の重要な中心地となっている。日本では、アジア系とヨーロッパ系の分布が関ケ原辺りで分かれ、通称「かぶらライン」と呼ばれる(27ページを参照)。東日本のヨーロッパ系は、耐寒性があり、温海(あつみ)かぶや金町(かなまち)小かぶ、(くれ)(つぼ)かぶなどがある。西日本のアジア系は、肥大した根が中型から大型のものが多く、天王寺かぶや聖護院(しょうごいん)かぶ、長崎赤かぶなどがある。根は食べずに葉だけを使うかぶもあり、特に有名なのは野沢菜で、実はかぶの仲間である。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和5年の作付面積は、3720ヘクタール(前年比96.1%)と、前年に比べてやや減少した。
 上位5県では、
●千葉県  847ヘクタール(同 98.1%)
●埼玉県  388ヘクタール(同 99.2%)
●山形県  210ヘクタール(同 93.3%)
●滋賀県  162ヘクタール(同 97.6%)
●青森県  156ヘクタール(同 94.0%)
 となっている。
 
タイトル: p024a
 
 令和5年の出荷量は、8万2400トン(前年比93.7%)と、前年に比べてかなりの程度減少した。
 上位5府県では、
●千葉県  2万5400トン(同 97.7%)
●埼玉県  1万2200トン(同 89.1%)
●青森県  4860トン(同 95.3%)
●滋賀県  3720トン(同 100.0%)
●京都府  3490トン(同 89.5%)
 となっている。
 
タイトル: p024b
 
 出荷量上位5府県について、10アール当たりの収量を見ると、埼玉県の3.76トンが最も多く、次いで青森県の3.55トン、千葉県の3.15トンと続いている。その他の道県で多いのは、福岡県の3.53トンであり、全国平均は2.65トンとなっている。
 
タイトル: p024c

作付けされている主な品種等

 かぶは、日本全国各地に約80もの品種があり、それぞれに、白、赤紫、紅などの色や大小、形状などが異なる地域独特の在来品種が数多くある。全国的に栽培が盛んな白い小かぶは、東京金町(かなまち)の特産だった「金町小かぶ」を元に改良されたものである。一方で、各地域で様々な地方品種があり、山形県で伝統的な焼畑で栽培される「温海かぶ」、京都の「(せん)(まい)()け」の材料となる日本最大級品種の「聖護院かぶ」、金沢の冬の味覚「かぶら寿司」に欠かせない「金沢青かぶ」、塩漬けによりピンク色に染まる「桜漬け」に利用される「日野菜かぶ」など、地域ごとの食文化に欠かせない伝統食材として、特色ある品種が自家採種などで大切に承継されている。
 
タイトル: p025a
 

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、年間通して千葉産と埼玉産が入荷し、夏場を中心に5~11月にかけて青森産が入荷する。
 
タイトル: p025b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、東京市場より幅広い産地からの入荷が見られる。6~10月は青森産が主流だが、11月以降は福岡産が増え、徳島産、千葉産、石川産なども増え、12月にピークとなる。1~4月までは減少しながらも、これらの産地から入荷がある。
 
タイトル: p026a
 

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場における令和5年の卸売価格は、年初が高めだったものの、過去2年とあまり変わらない動きで、1キログラム当たり150円前後で推移した。
 
タイトル: p026b

かぶの消費動向

 かぶは、根部分は淡色野菜、葉茎部分は緑黄色野菜に分けられるため、それぞれで栄養成分が大きく異なる。根には、皮膚や血管の老化を防ぐビタミンCやカリウム、また、だいこんと同様に消化酵素であるアミラーゼを含む。一方、葉茎部分は、根の4倍近いビタミンCを含み、βカロテンや水溶性カルシウム、食物繊維も豊富である。葉も栄養豊富であるため、調理法を色々と工夫したい。
 かぶは、日本では古くから食材として取り入れられているため、和食のイメージが強いが、バターやクリームを使ったパスタやシチューといった献立にもなじみ、加熱せずサラダなどの生食に使うこともできる。

タイトル: p027