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今月の野菜 野菜情報 2024年12月号

さといもの需給動向

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調査情報部

主要産地

タイトル: p024
 
 さといもは、サトイモ科の熱帯性多年草で、原産地はインドからマレー半島の熱帯地域とされている。東南アジアや太平洋諸国ではタロと呼ばれ、タロイモ種が主食とされているが、その中でも北方で栽培されていたものが、中国を経て、日本には稲よりも早く、縄文時代中期に渡来した。かんしょやばれいしょが渡来する江戸時代までは、いも類の主流であり、山で自生していた「山いも」に対し、里で栽培されることから「里いも」と呼ばれるようになった。種いもに寄り添い、子いも、孫いもとたくさんのいもが出来ることから、子孫繁栄の縁起物として正月料理などに用いられるほか、東北地方では、秋の収穫を祝う行事として、いも煮会が行われる。秋が旬だが、貯蔵性が高いので一年中出回る。奈良・平安時代の貴族たちの間では、七夕の宮中行事で、さといもの葉にたまった夜露(よつゆ)を天の川のしずくにたとえ、そのしずくで墨を溶き、和歌をしたため芸事の上達を願ったということに代表されるように、日本の文化に深く根差した野菜と言える。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和5年の作付面積は、9580ヘクタール(前年比94.9%)と、前年に比べてやや減少した。
 上位5県では、
●宮崎県  803ヘクタール(同 94.7%)
●千葉県  745ヘクタール(同 86.6%)
●埼玉県  717ヘクタール(同 97.2%)
●新潟県  521ヘクタール(同 98.3%)
●熊本県  450ヘクタール(同 97.2%)
 となっている。
 
タイトル: p025a
 
 令和5年の出荷量は、8万6300トン(前年比91.5%)と、前年に比べてかなりの程度減少した。
 上位5県では、
 ●埼玉県  1万2700トン(同 92.7%)
 ●宮崎県  1万200トン(同 90.3%)
 ●千葉県  9080トン(同 83.3%)
 ●愛媛県  8500トン(同 118.2%)
 ●鹿児島県  5420トン(同 87.6%)
 となっている。
 上位5県のうち、愛媛県以外の出荷量はかなり減少したが、愛媛県は18.2%増となっている。

タイトル: p025b
 
 10アール当たりの収量を見ると、出荷量上位5県では 愛媛県の2.33トンが最も多く、次いで埼玉県の2.31トン、宮崎県の1.53トンと続いている。その他の府県で多いのは、大阪府の1.65トンであり、全国平均は1.32トンとなっている。
 
タイトル: p025c

作付けされている主な品種等

 さといもの主要品種は「(いし)(かわ)()()」や「()(だれ)」の系統で、子いも・孫いもを主に食べる小いも用種である。「石川早生」は全国的に栽培が盛んで、旧暦の8月15日は「芋名月」ともいい、皮ごとゆでたさといもを供える。平安時代の女性の被り物「きぬかつぎ」を思わせるので、この皮ごとゆでたさといもを「きぬかつぎ」とも呼ぶ。「土垂」は晩生(おくて)種で、関東で栽培が多く周年出回る。赤目芋とも呼ばれるセレベスも全国的に生産が多い。千葉県の「ちば丸」は戦略品目として産地で開発され厳格に種いもが管理されている。「大和早生」も新潟県で20年以上の歳月をかけて改良された品種である。
 
タイトル: p026a

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、8月から年末にかけて千葉産、埼玉産を中心に入荷が増え、9月以降、愛媛産や栃木産、新潟産などが入荷し、12月がピークとなる。年明け以降は入荷量が減少し、5~7月は鹿児島産、宮崎産など九州からの入荷となる。

タイトル: p026b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、愛媛産を中心に1~5月にかけて徐々に減少し、9月以降年末にかけて増量し12月がピークとなる。年明け以降は鹿児島産、熊本産、宮崎産など九州の産地から入荷が見られる。中国産は5~8月を除き、毎月一定程度の入荷が見られる。
 
タイトル: p027a

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場における令和5年の国内産の価格は、需要期である年末年始は1キログラム当たり300円~400円程度、年平均345円で推移し、入荷量が減る5月~8月にかけて同400円~670円程度で推移し、3年および4年を上回った。5年6月の高値は、主力産地である宮崎県が度重なる豪雨の影響により収穫できず、総入荷量が平年を3割以上下回ったことによる。
 外国産は通年、1キログラム当たり200円程度、年平均251円で安定的に推移している。例外的に5年8月が高値となっているが、例年、さといもの主な輸入先は中国であるところ、この月に限り中国からの輸入がなく、台湾からスポット的にわずかな量が入荷したことによるものである。
 
タイトル: p027b
 

輸入量の動向

 生鮮さといもの輸入は、平成28年には5224トンであったが、近年減少傾向で推移しており、令和5年は71%減の1501トンとなった。
 冷凍さといもの輸入は、平成28年~令和4年までは3万トン前後で推移していたが、令和5年は2万6558トンと平成28年の20%減となった。生鮮および冷凍ともに、輸入先は中国が99%以上を占めている。
 
タイトル: p028

さといもの消費動向

 1人当たりの年間購入量は年々減少傾向にあり、平成28年には約600グラムであったが、令和5年には433グラムと27%減少している。一方で、さといもの購入量は比較的地域差が大きく、1世帯当たり(二人以上の世帯)の品目別年間支出購入数量(注)を見ると、全国平均は1345グラムであるが、上位5位は、新潟市(2565グラム)、山形市(2335グラム)、名古屋市(2121グラム)、熊本市(2106グラム)、福井市(2101グラム)と、全国平均の約2倍を購入している地域もある。
(注)総務省統計局の家計調査(令和3~5年の平均の品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市)
 
 さといもは、成長の仕方や食用部分によって大きく四つに分類できる(参考表)。食感などの特徴も異なるため、好みや用途によって使い分けたい。
 さといもの主成分はでんぷん質であるが、水分が多くいも類の中では低エネルギーの部類で、塩分排出に効果的なカリウムが最も多く、高血圧の予防につながる。特徴的なぬめり成分は、水溶性食物繊維のガラクタンであり、ガラクタンは免疫系に働きかけ、がん予防や感染症予防に効果があるといわれている。また、水溶性食物繊維は、血糖値の上昇や血中のコレステロール値を抑える働きがあり、肥満予防や便秘解消などに効果がある。
 
タイトル: p029