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今月の野菜 野菜情報 2024年10月号

しいたけの需給動向

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調査情報部

主要産地

タイトル: p030

 しいたけの原産地は日本と中国で、自然界では主に、コナラ、クヌギ、シイなどの広葉樹の枯れ木に生えるきのこである。温暖湿潤な日本には、6000種を超えるきのこがあり、このうち食用きのこは約200種類、栽培きのこは約100種類あるが、その代表の一つがしいたけであり、西洋のマッシュルーム、東南アジア・中国のフクロタケとともに、世界三大栽培きのこの一つとされる。
 しいたけの栽培方法は、クヌギなどの幹に胞子を植える「原木栽培」と、おがくずに栄養となる米ぬかを加え滅菌した培地で栽培する「菌床栽培」の二つがあり、この2種の人工栽培技術が昭和時代に確立されてからその生産量は飛躍的に伸びた。現在流通しているしいたけの約9割は菌床栽培となっており、安定した品質のしいたけが一年を通して出回るようになった。
 原木栽培のしいたけは、本来のしいたけの旬である春と秋に出回り、天然のしいたけに似て香りが高く肉厚とされることから、菌床栽培のしいたけより高値で流通している。1本のほだ木から約1キログラムのしいたけが収穫できるが、このほだ木は約10キログラムあり、これを扱うのは重労働のため生産量が減少している。

生産量の推移

 令和5年の生産量は、6万3373トン(前年比93.5%)と、前年に比べてかなりの程度減少した。
 上位5道県では、
●徳島県  7200トン(同 94.7%)
●岩手県  4292トン(同 97.7%)
●群馬県  3912トン(同 106.8%)
●秋田県  3770トン(同 91.0%)
●北海道  3562トン(同 72.2%)
 となっている。

タイトル: p031a
 
 令和5年の菌床栽培は、5万9379トン(前年比93.5%)と、前年に比べてかなりの程度減少した。
 上位5道県では、
●徳島県  7161トン(同 94.7%)
●岩手県  4181トン(同 98.0%)
●秋田県  3638トン(同 89.8%)
●群馬県  3515トン(同 107.0%)
●北海道  3439トン(同 71.4%)
 となっている。

タイトル: p031b

作付けされている主な品種等

 同じように見えるしいたけだが、各地の気象や立地条件に適した品種選定が不可欠であり、さらに厚み、大きさ、形状によって多くの品種が開発されている。かつては菌床栽培でも原木栽培用品種が使われて、収量などが不安定だったが、その後専用品種の開発が進んだ。原木栽培は植菌から収穫まで約2年間かかるのに対し、菌床栽培は4~5カ月で収穫できる。
 
タイトル: p031c
 

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、入荷量は4~8月にかけて減少し、10月~年末年始にかけて増えている。秋田産、岩手産、栃木産が通年入荷しており、1~5月には輸入の中国産の入荷もあった。

タイトル: p032a
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、徳島産が通年で入荷し、数量的に大きな割合を占めている。年末年始にかけて岐阜産の入荷が増え、兵庫産、岡山産の入荷もほぼ通年で見られる。

タイトル: p032b
 

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場における生しいたけの卸売価格は、お正月需要もあり11月~翌1月にかけて高値となる傾向がある。直近3年で見ると、令和5年が最も価格が高く推移した。令和5年の価格を産地別に見ると、国内産が1キログラム当たり800~1200円(年平均1088円)で推移しているのに対し、輸入品は同500~800円(同718円)と、国内産の7割程度となっている。

タイトル: p033a
 
 タイトル: p033b

輸入量の動向

 しいたけ(生鮮)の輸入は中国産がほぼ全量を占め、令和2年までは減少傾向であったが、ここ数年は増加傾向に転じている。乾燥しいたけも中国産が大部分を占めるが、令和2年以降、輸入量は減少し4500トン程度で推移している。

タイトル: p034a

タイトル: p034b

しいたけの消費動向

 一人当たり年間購入数量は令和2年をピークに減少しており、令和5年は約490グラムとなった。小売価格は令和5年はキログラム当たり185円と上昇傾向で推移している。
 しいたけは室町時代から食べられており、生しいたけは、塩焼きやバター炒め、煮物、てんぷら、汁や鍋の具として、和風にも洋風にも用いられている。また、うま味成分であるグアニル酸を含み出汁(だし)には欠かせない食材である。栄養面では、特にカルシウムの吸収を助けるビタミンDが豊富なほか、悪玉コレステロールを減らす作用が期待できるエリタデニンが、ほかのきのこと比べ非常に豊富である。しいたけのかさの裏側を日光に30分ほど当てるだけで、うま味とビタミンD含有量が増えるので試していただきたい。また、腸内環境を改善する食物繊維を多く含み、低カロリーであるため、健康食品としても存在感が大きく、さらに抗がん成分としてβ-グルカンの一種であるレンチナン(多糖類)を含むことなども注目されている。

タイトル: p035a



 
タイトル: p035b
 
 
タイトル: p035b