野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > きゅうりの需給動向

今月の野菜 野菜情報 2024年9月号

きゅうりの需給動向

印刷ページ
調査情報部

主要産地

タイトル: p028


 きゅうりは、インドのヒマラヤ山麓(さんろく)が原産地とされ、3000年も前に栽培が始まり、そこからヨーロッパ、中国北部(華北ルート)、中国南部(華南ルート)の3方面へと広がっていった。
 日本に最初にきゅうりが伝わったのは、平安時代中ごろで、華南ルートを経て、黒いぼ種が持ち込まれたとされている。現在、流通の主流となっている白いぼ種は、華北ルートを経て江戸時代末期に伝わり、食用として定着していった。異なる2つのタイプのきゅうりが交雑を繰り返しながら、特徴のある品種を日本各地に生みだしていった。現在、日本で生産されるきゅうりの9割以上が、白いぼ種の白いぼきゅうりとなっており、皮が薄く、果肉はみずみずしく歯切れが良いのが特徴で、生食のほか、どんな料理にも向いている。一方、黒いぼ種の黒いぼきゅうりは、皮が厚く味が濃いため、煮物や炒め物などの加熱調理に向いているが、現在では九州や四国などでわずかに栽培されるだけとなった。
 きゅうりは、果菜類の中で国内収穫量第2位であるが、ハウスなどの施設栽培が7割を占め、その結果、周年出荷が可能となっている。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和5年の作付面積は、9450ヘクタール(前年比96.7%)と、前年よりやや減少した。
 上位5県では、
●群馬県  772ヘクタール(同 97.8%)
●福島県  660ヘクタール(同 97.3%)
●宮崎県  546ヘクタール(同 93.5%)
●埼玉県  541ヘクタール(同 95.9%)
●茨城県  459ヘクタール(同 96.0%)
 となっている。

タイトル: p029a
 
 令和5年の出荷量は、46万2900トン(前年比97.1%)と、前年よりわずかに減少した。
 上位5県では、
●宮崎県  5万8200トン(同 95.7%)
●群馬県  4万8500トン(同 97.0%)
●埼玉県  3万9300トン(同 98.3%)
●福島県  3万5500トン(同 97.3%)
●千葉県  2万8100トン(同 98.9%)
 となっている。

タイトル: p029b
 
 出荷量上位5県について、令和5年の10アール当たりの収量を見ると、宮崎県の11.30トンが最も多く、次いで埼玉県の8.00トン、千葉県の7.46トンとなった。その他の道県で多いのは、高知県の16.70トン、北海道の11.50トンであり、全国平均は5.60トンとなった。

タイトル: p029c

作付けされている主な品種等

 きゅうりの品種改良は盛んに行われ、毎年、複数の種苗会社から新しい品種が販売されている。いくつかのポイント(果形や収量の安定性、耐病性、食味など)ごとに改善をめざして品種改良され、特に耐病性については、収穫量に甚大な被害を与えるうどんこ病やべと病などの病害に強い品種開発が進められている。

タイトル: p030a

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、7~9月は福島産など東北産の露地栽培ものが中心となり、9~11月は群馬産や埼玉産などの関東産の抑制栽培ものが入荷しており、11月~翌2月は宮崎産などの促成栽培ものが入荷し、3~6月は関東産の半促成栽培、雨よけ栽培ものが入荷している。

タイトル: p030b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に、各産地や作型によってリレー出荷されているのがわかる。7~9月にかけては福島産や北海道産などの入荷が増え、10月~翌6月にかけては宮崎産など九州産と高知産など四国産を中心に入荷している。

タイトル: p031a

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場のきゅうりの価格(令和5年)は、1キログラム当たり237~509円(年平均344円)の幅で推移した。5年の価格はおおむね例年通り1月から下げ基調となり、きゅうりの月別入荷量が8月に次いで、2番目に多かった5月に価格が最も安くなり、その後、10月まで緩やかに上昇した。

タイトル: p031b

輸入量の推移

 きゅうりの輸入は、生鮮はごくわずかであり、令和5年は17トンである。また、漬物などの加工品である塩蔵等が主になっており、5年は1万5898トンで、きゅうりの輸入量全体に占める割合は、78.4%と最も多いが、ここ数年は減少傾向にある。続いて酢調製が同4367トン(同21.5%)であり、総合計輸入量は、直近5年は2万トン近くで推移している。
 国・地域別輸入量を見ると、生鮮は、2年は韓国が約8割を占めていたが、5年は米国からの輸入が最も多く8割を占めた。塩蔵等は中国が約8割を占め、酢調製はスリランカが約5割を占め、その他を、米国、ベトナム、中国、ドイツ、インドがそれぞれ1割弱を占めた。

タイトル: p032a
 

タイトル: p032b


タイトル: p033a
 

タイトル: p033b

輸出量の推移

 きゅうりの輸出は、酢調製が年によって量および輸出先国にばらつきがあるが、令和5年は約1.7トンで、フランスと米国に輸出された。

 

タイトル: p034a

きゅうりの消費動向

 近年において、きゅうりは果菜類の中では、トマトに次ぐ第2位の購入量となっている。令和3年以前は、1人当たり年間購入量は、2500~2700グラム程度で推移していたが、4年以降減少しており、5年は2500グラムを下回った。
  小売価格(東京都区部)の動向を見ると、平成28年以降は1キログラム当たり500円台後半から600円台前半で推移していたが、令和5年は651円と600円台後半に上昇した。
 きゅうりは水分が95%以上を占めているものの、ナトリウムを排出させるカリウムを比較的多く含むため、むくみの予防や利尿作用、高血圧の抑制効果が期待できる。
 以前から、スティック状で手軽に食べやすい形状を活かした「冷やしきゅうりの一本漬け」が、清涼感のある夏野菜の商品として、盛夏期のお祭りなどで見かけられたが、最近は、コンビニエンスストアでサラダチキンバーや豆腐バーの陳列と並べて売られるなど新たな販売手法が見られ、手軽に野菜摂取を行いたいという需要の喚起が期待される。

タイトル: p034b


 
タイトル: p035a




タイトル: p035b