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今月の野菜 野菜情報 2024年8月号

にがうりの需給動向

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調査情報部

主要産地

タイトル: p044

 にがうりは熱帯アジア地域原産とみられ、中国やインドでは古くから薬用植物として重宝されていたほど栄養価の高い野菜である。16世紀頃には日本に伝来していたと考えられており、中国との交易を通じて沖縄では早くから栽培が盛んだった。その後、1990年代に沖縄の野菜や果物が県外に出荷されるようになり、全国に普及した。

 にがうりの別名でもある「ゴーヤ(ゴーヤー)」は、沖縄の方言で「苦いウリ」を意味する。また「つるれいし」とも呼ばれ、「れいし」とは果物のライチ(茘枝)のことで、にがうりが熟すと果肉が黄色くなり、種の周辺が赤くなるところがライチに似ていることから、こう呼ばれるようになったと言われる。
 表面の色が濃く、突起が小さなものほど苦味が強いと言われている。一方、苦味が少なく、皮の色が白く突起に丸みのある「白ゴーヤ」は、サラダなどの生食にも利用される。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和4年の作付面積は、600ヘクタール(2年比90.0%)と、2年に比べてかなりの程度減少した。
 上位5県では、
●沖縄県  218ヘクタール(同 82.9%)
●鹿児島県  96ヘクタール(同 88.9%)
●宮崎県  81ヘクタール(同 98.8%)
●群馬県  69ヘクタール(同 104.5%)
●長崎県  34ヘクタール(同 103.0%)
 となっている。

タイトル: p045a
 
 令和4年の出荷量は、1万5000トン(2年比91.5%)と、2年に比べてかなりの程度減少した。
 上位5県では、
●沖縄県  5,030トン(同 82.9%)
●宮崎県  2,490トン(同 95.8%)
●群馬県  2,000トン(同 105.8%)
●鹿児島県  1,600トン(同 95.8%)
●長崎県  1,080トン(同 114.6%)
 となっている。

タイトル: p045b
 
 出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、長崎県の3.26トンが最も多く、次いで宮崎県の3.11トン、群馬県の2.90トンとなっている。その他の県で多いのは、高知県の8.15トンであり、全国平均は2.70トンとなっている。

タイトル: p045c
 

作付けされている主な品種等

 にがうりは大きさによって短果種(20~25センチメートル程度)、中長種(30センチメートル程度までのもの)、大長種(30~40センチメートル程度)に大別される。沖縄県の「(むる)(ぶし)」や「汐風」、鹿児島県の「か交5号」、宮崎県の「宮崎つやみどり」など、県独自の育成品種も多い。

タイトル: p046a

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、関東産の入荷が少ない11~翌6月は沖縄産や長崎産などの九州産が多く、ピークとなる7月以降は、群馬産、茨城産、栃木産といった近在産地からの入荷が増える。

タイトル: p046b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、12~翌4月までの入荷はほぼ沖縄産が占め、数量が増える5月以降、ピークとなる7月にかけては長崎産、鹿児島産、宮崎産を中心に九州からの入荷が多くなる。入荷量が減る8月以降は、群馬産や和歌山産といった九州以外の産地からも入荷する。

タイトル: p047a

東京都中央卸売市場における価格の推移

 令和5年の東京都中央卸売市場における卸売価格は、1~6月までは1キログラム当たり500~600円前後で推移し、入荷量が増える7~9月は下落する。入荷量が減ってくる10~12月は再び上昇し、年平均は同407円である。

タイトル: p047b

輸入量の動向

 冷凍にがうりの輸入は年によってばらつきがあるが、減少傾向であり、中国産が減少する一方でタイ産のシェアが拡大している。冷凍にがうりは、外食用や惣菜用に使用されている。

タイトル: p048

にがうりの消費動向

 にがうりの苦味の成分の「モモルデシン」は、肝機能を高め、血糖値の降下に効果があり、また胃液の分泌を促して食欲を増進させるため、夏バテ予防の効果が期待できる。ビタミンCの含有量も多く、果皮が硬いにがうりのビタミンCは過熱しても壊れにくいのが特徴である。
 苦味が強すぎる場合は、水にさらしたり、塩もみをしてからお湯でさっとゆでたりすると苦味を減らすことができる。また、苦味の成分は果実の表面に多く含まれているため、表面の皮を少しむくと苦味がやわらぐ。
 にがうりは病害虫に強く、比較的栽培しやすいことから、家庭菜園の品目としても人気が高い。最近は「緑のカーテン」としての利用も増えている。ほかのものにつかまって上に伸びていくにがうりの特徴を生かして、窓の外にネットを張って栽培する取り組みが広がっているため、苗の出回りも増えている。家庭や学校での利用が多く、室内や地面の温度上昇を抑える効果がある。実付きより葉の茂りを優先する品種もある。