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今月の野菜 野菜情報 2024年2月号

セルリー(セロリ)の需給動向

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調査情報部

主要産地

 
タイトル: p030
 
 セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)は、紀元前の古代ギリシャ、ローマ時代から薬草や匂い消しとして利用されていた。食用として栽培されるようになった歴史は比較的浅く、ヨーロッパ南部で17世紀に入ってからと言われている。
 食用種のセルリーが日本に入ってきたのは江戸時代だが、独特の強い香りが好まれなかったため普及しなかった。しかし、昭和30年代以降、食の欧米化が進むに連れて徐々に利用が広がった。日本での栽培は、大正時代に試験栽培としてスタートしたが、播種(はしゅ)から収穫までおおよそ半年かかるセルリーの栽培には高い技術を要するため、作柄の安定までは多くの年月を必要とした。
 セルリーは茎葉の色によって、黄色種、緑色種、中間種などに分けられ、日本ではかつて黄色種が多く利用されていたが、最近は、黄色種と緑色種の特徴を取り入れて米国で育成された中間種が主流となっている。繊維が少なく香りも穏やかな中間種は、サラダなどの生食利用が多い日本人向きの品種として定着している。一方で、スープや煮込み料理、肉料理や魚料理の匂い消しなど加熱して用いることが多い欧米では、肉厚で香りの強い緑色種が好まれている。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和4年の作付面積は、532ヘクタール(前年比98.3%)と、前年に比べてわずかに減少した。
 上位5道県では、
●長野県  226ヘクタール(同 97.0%)
●静岡県  83ヘクタール(同 93.3%)
●福岡県  47ヘクタール(同 102.2%)
●愛知県  42ヘクタール(同 105.0%)
●北海道  20ヘクタール(同 95.2%)
 となっている。

タイトル: p031a
 
 令和4年の出荷量は、2万8100トン(前年比97.6%)と、前年に比べてわずかに減少した。
 上位5県では、
●長野県  1万2000トン(同 96.8%)
●静岡県  5060トン(同 91.7%)
●福岡県  3460トン(同 105.2%)
●愛知県  2640トン(同 104.8%)
●茨城県  953トン(平成28年比(※)87.4%)
 となっている。
 ※前回調査年が28年のため

タイトル: p031b
 
 出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、福岡県の7.59トンが最も多く、次いで愛知県の6.62トン、茨城県の6.49トンと続いている。その他の県で多いのは、香川県の9.36トンであり、全国平均は5.51トンとなっている。

タイトル: p031c

作付けされている主な品種等

 現在日本で流通しているセルリーの大半を占める中間種のうち、米国のコーネル大学で育成された「コーネル系」が代表的な品種である。香りが強く加熱調理に向く緑色種では、代表的なものに、耐病性に優れた「トップセラー」がある。

タイトル: p032a

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和4年)を見ると、5月に入荷が始まる長野産は、その後10月までほぼ市場を独占している。11月より静岡産などの入荷が増え始めて、翌4月まで静岡産を中心に、福岡産、愛知産、茨城産、香川産などの産地で構成されている。栽培期間が長く、高い栽培技術が必要な作物の一つであることから、産地がほぼ限られている。

タイトル: p032b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和4年)を見ると、長野産と静岡産の入荷で全体の8割近くを占めているが、夏場は長野産、冬場が静岡産とすみ分けができている。東京市場と同様、夏場は長野産の入荷が大部分を占め、11月から静岡産の入荷が増え始め、その後、春まで福岡産、長崎産、香川産などの入荷がみられる。

タイトル: p033a

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場におけるセルリーの価格(令和4年)は、1キログラム当たり181~329円(年平均262円)の幅で推移した。冷涼な気候を好む野菜であるため、入荷量が減少する夏場に価格が上昇する傾向にある。

タイトル: p033b

輸入量の動向

 セルリー(生鮮)の輸入量は、平成30年までは8000トン程度であったが、令和元年は大幅に減少し、その後も減少基調にあり、令和4年は3061トンとなった。米国産の輸入が多かったが、令和元年の同国の不作を境に年々減少している。近年はメキシコからの輸入が年々増えている。

タイトル: p034

セルリーの消費動向など

 一般的に香味野菜としてカレーやシチューなどの洋食の煮込み料理などに用いられることが多いが、生でサラダやジュース、漬物、中華料理で炒め物などに利用されることも増えており、需要の幅は広がっている。また、フランス料理などの外食利用も多いため、食の欧米化や外部化が進むのに合わせて需要が拡大していった。
 セルリーは播種(はしゅ)から収穫までおおよそ半年の栽培期間を要し、高い栽培技術を必要とするうえ、鮮度が落ちるのが早いため、真空予冷施設やコールドチェーンなどを確立している産地が多く、消費者の手元に届くまでに多くの手数がかかる作物の一つである。
 古代より薬用として利用されてきた歴史がある通り、セルリーの独特の香りは、アピインという精油成分に由来し、精神を安定させ不眠に有効であるとともに高い抗酸化作用もあるといわれている。また、ベータカロテン、ビタミンB1、ビタミンB2などのビタミンや、カリウム、カルシウム、鉄などのミネラル、食物繊維を含み、胃潰瘍の予防と緩和、神経系を整える作用が期待され、利尿、浄血、血圧低下などの作用もあるといわれている。