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今月の野菜 野菜情報 2023年5月号

アスパラガスの需給動向

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調査情報部

主要産地





 アスパラガスは、「たくさん分かれる」「激しく裂ける」というギリシャ語が語源であると言われている。原産地はヨーロッパ南部からロシアとされ、江戸時代にオランダ人によって長崎に伝えられたという説があるが、当初は観賞用であった。食用としての栽培は、大正時代に北海道開拓団によって導入されたのが始まりとされているが、当時は缶詰加工用に盛り土をして軟白栽培するホワイトアスパラガスが主流であった。現在は、食生活の洋風化や健康志向の高まりと共に、太陽を浴びて栄養をたっぷり含み、地上に伸びた緑の若芽を収穫するグリーンアスパラガスが主体で、流通量の9割以上を占めている。これ以外にも生鮮用のホワイトアスパラガス、紫アスパラガス、ミニアスパラガスなど、色や大きさのバリエーションが増えている。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和3年の作付面積は、4500ヘクタール(前年比93.8%)と、前年に比べてかなりの程度減少した。
 上位5道府県では、
  ●北海道1060ヘクタール(同 89.8%)
  ●長野県655ヘクタール(同 85.9%)
  ●山形県364ヘクタール(同 100.3%)
  ●秋田県350ヘクタール(同 96.7%)
  ●福島県338ヘクタール(同 98.5%)
  となっている。



 令和3年の出荷量は、2万2400トン(前年比94.9%)と、前年に比べてやや減少した。
 上位5道県では、
   ●北海道2670トン(同 77.2%)
   ●佐賀県2350トン(同 104.0%)
   ●熊本県2210トン(同 107.3%)
   ●長崎県1760トン(同 95.7%)
   ●福岡県1750トン(同 108.0%)
  となっている。



 出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、熊本県の2.36トンが最も多く、次いで福岡県の2.16トン、佐賀県の2.10トン、長崎県の1.70トンと続いている。その他の県で多いのは、栃木県の1.54トンであり、全国平均は0.56トンとなっている。

作付けされている主な品種など

 各産地とも、生育ぞろいが良く、露地栽培、ハウス半促成栽培、トンネル栽培の全ての作型に汎用性がある極早生種の「ウェルカム」が多い。北海道では、低温萌芽性(低温時でも芽を出せること)に優れ、グリーンアスパラガスだけでなく、軟白栽培のホワイトアスパラガスにも利用できる「ガインリム」も栽培されている。

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和3年)を見ると、1~3月はメキシコ産が多く、3月には長崎産、佐賀産、栃木産などの国内産の入荷が増え始め、5~8月はさらに秋田産、山形産といった北日本の産地からの入荷があり、7月がピークとなった。9月以降は入荷量が減り、豪州産が増え、10月からは再びメキシコ産が入荷した。
 


 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和3年)を見ると、1~3月はメキシコ産の輸入品が多いが、3月以降は佐賀産、長崎産、福岡産が増え始め、7月のピークに向けて熊本産や愛媛産、岡山産の入荷がみられた。9月までは九州の産地からの入荷が中心となるが、10~12月はメキシコ産、豪州産の輸入品が主流となった。
 

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場における国内産アスパラガスの価格は、入荷量の増加に伴って1月から徐々に下降し、11月以降に上昇する傾向が見られる。年によって大きな変動はないが、令和4年は1キログラム当たり874~2864円(年平均1313円)の間で推移した。外国産アスパラガスの価格は、国内産の出回りが少なくなる10月~翌1月が高くなるという傾向がある。令和4年は647~1424円(年平均943円)と、国内産の7割程度の価格で推移した。

 

輸入量の動向

 生鮮アスパラガスの輸入量は1万トン前後で推移していたが、減少傾向が続き、近年は1万トンを切っており、令和3年は9037トンであった。周年で輸入され、主に秋から春先の国内産が少ない端境期に多く輸入されている。主な輸入先国はメキシコと豪州で、近年メキシコ産のシェアが増加している。
 調製アスパラガスは減少傾向にあったが、令和元年から2年は増加。中国産の輸入量、比率ともに減少し、ペルー産が多くなっている。
 

 

消費動向など

 国産アスパラガスの春採りは1月から、夏採りは5月頃から出荷が始まる。1キログラム当たりの小売価格に大きな変動はなく、平成27年から200円前後で推移している。
 一年中出回り、簡単な調理でおいしく食べられ、料理の彩りとしても映えることから、人気が高まっている。野菜として利用するのは若芽の部分だが、収穫後も成長を続けることから、出荷時には真空予冷で芯まで冷却して出荷される。鮮度を保つため、購入後も穂先を上に立てて野菜室で保存するとよい。
アスパラガスの中で最も栄養価が高いのは、太陽を浴びて育ったグリーンアスパラガスで、ビタミンを豊富に含み、穂先にルチンやアスパラギン酸といったアミノ酸の一種を多く含む。中でも多量に含まれているアスパラギン酸には、体内でエネルギー代謝を活発にし、疲労回復を早める効果がある。