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今月の野菜 野菜情報 2022年12月号

いちごの需給動向

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調査情報部
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 いちごは、江戸後期(18世紀)にオランダ人によって長崎に伝えられたことからオランダイチゴと呼ばれたが、野性のいちごに親しんでいた当時の日本人には定着しなかった。
 日本で本格的に栽培されたのは明治時代に「福羽(ふくば)」の栽培に成功してからで、大正時代には東京周辺に広まり、その後静岡県久能山の石垣栽培に導入され有名になった。福羽は日本のいちごの基礎を作った名品種で、これが親となって次々と新品種が生まれた。
 1960年代までいちごの旬は5~6月頃だったが、温室栽培が普及し、年末年始の需要の多い時期に対応できるよう現在は秋苗が主流となっている。栃木県、茨城県、静岡県など多くの県で、県で育種した品種の生産振興を図っており、人気品種が続々登場している。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和3年の作付面積は、4930ヘクタール(前年比98.2%)と、前年に比べてわずかに減少した。
 上位5県では、
 ●栃木県509ヘクタール(同 98.3%)
 ●福岡県428ヘクタール(同 98.4%)
 ●熊本県298ヘクタール(同 97.7%)
 ●静岡県292ヘクタール(同 100.0%)
 ●長崎県266ヘクタール(同 99.3%)
 となっている。

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 令和3年の出荷量は、15万2300トン(前年比103.7%)と、前年に比べてやや増加した。
 上位5県では、
 ●栃木県2万2900トン(同 107.5%)
 ●福岡県1万5800トン(同 101.3%)
 ●熊本県1万1500トン(同 100.0%)
 ●愛知県1万 400トン(同 105.6%)
 ●長崎県1万 300トン(同 102.0%)
 となっている。

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 出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、栃木県の4.79トンが最も多く、次いで愛知県の4.32トン、熊本県の4.07トンと続いている。その他の県で多いのは、佐賀県の4.61トン、香川県の3.93トンであり、全国平均は3.34トンとなっている。

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作付けされている主な品種等

 品種の改良も進み、より甘く大きいものが求められ、人気品種の交代も激しい。各県とも次々に新品種を打ち出している。

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東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和3年)を見ると、11月から栃木県産が入荷し、12月からは福岡県、茨城県、静岡県、佐賀県も加わり急増する。ピークは3月で、5月まで入荷が続く。6月以降は宮城県産が入荷するものの量は少なく、10月までは入荷が非常に少ない時期が続く。

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 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和3年)を見ると、11月から入荷が始まる長崎県、熊本県、福岡県、佐賀県は春に向けて数量を増やしていく。12月以降は香川県産も入荷し、3月のピークに向けて全体の数量は増えていく。6月に激減して、7月から10月までは非常に入荷が少ない時期が続く。

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東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場における国内産の生鮮いちごの卸売価格(令和3年)は、1キログラム当たり929~2663円(年平均1757円)の幅で推移している。出荷の増える1月からは下落し、4~5月に底となり、7~10月にかけて上昇する傾向がみられる。

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輸入量の動向

 生鮮いちごの輸入量は3000トン前後で推移しており、国産の出荷量が極端に少なくなる夏場に業務用として輸入される米国産が中心である。冷凍いちごは2万5000トンから3万トン強の間で推移しており、主にジャムやジュースなどの原料に使用され、主な輸入先国は中国、エジプト、モロッコである。ピューレなどが含まれる調製いちごについては、中国産、米国産、チリ産が中心である。

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輸出量の動向

 いちごの輸出量は近年増加傾向にあり、令和3年度の輸出量は1776トンと、平成26年から約8.6倍に延びている。主な輸出先は、香港、台湾、シンガポールなどのアジアが中心であり、香りが高くて甘みが強く、酸味が少ない日本産の人気が高まっている。

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いちごの消費動向

 令和3年のいちごの1人当たり年間購入量は771グラムで、平成26年に比べて91%と、減少傾向にある。通常、1パック300グラムで販売していたものを食べ切りサイズにするため、200グラムのものを追加したことなどが購入量減少につながったとみられる。

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