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今月の野菜 野菜情報 2022年7月号

にんにくの需給動向

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調査情報部

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 にんにくは中央アジア原産といわれ、紀元前3200年ごろには古代エジプトで利用され、ピラミッド建設を支えた労働者たちの一種の強壮剤として使用されていたといわれている。
 日本にも古い時代に中国から伝わり、少なくとも1000年以上前から薬用として栽培されていたとみられている。その臭いが好まれなかったため食用とはされず、強い臭いを嫌う仏僧、公家、武士などのもとでは食することを禁じていたようである。中国料理、西洋料理の普及などから利用が盛んになったのは第2次世界大戦後のことである。
 たまねぎの仲間であるにんにくは、ねぎ類の中でもっとも多くアリシンを含み、高い抗菌作用や抗酸化作用を持つ。アリシンは、血流をよくするほか、風邪の予防やがん予防などにその効果が期待されている。
 かつてはもっぱら(りん)(けい)と呼ばれる地下茎が肥大した玉の部分を食べていたが、若い()(けい)(にんにくの芽)や葉(葉にんにく)も食べられるようになった。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和2年の作付面積は、2530ヘクタール(前年比100.8%)と、前年よりわずかに増加した。
 上位5道県では、
●青森県1460ヘクタール(同 101.4%)
●北海道147ヘクタール(同 108.1%)
●香川県103ヘクタール(同 101.0%)
●秋田県58ヘクタール(同 107.4%)
●岩手県56ヘクタール(同 98.2%)
となっている。

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 令和2年の出荷量は、1万5000トン(前年比100.0%)と、前年並みとなった。
 上位5道県では、
●青森県1万500トン(同 101.0%)
●香川県681トン(同 102.7%)
●北海道668トン(同 106.7%)
●岩手県220トン(同 102.8%)
●鹿児島212トン(同 78.5%)
となっている。

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 出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、青森県の0.98トンが最も多く、次いで香川県の0.82トン、鹿児島県の0.67トンと続いている。その他の県で多いのは、徳島県0.88トン、福島県0.64トンであり、全国平均は0.84トンとなっている。

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作付けされている主な品種等

 にんにくは、寒地栽培の品種と暖地栽培の品種とに分けられる。寒地栽培の品種は青森県や北海道などで作付けされており、ホワイト種と呼ばれる福地ホワイトなどがある。これらは、中身が6片に分かれていて粒が大きく甘みが強いという特徴を持つ。暖地栽培の品種は上海早生などがあり、匂いや辛味を強く感じないマイルドな味わいが特徴である。

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東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和2年)を見ると、中国産と青森産が主体となり、周年出荷されている。5月から7月にかけては、香川産の入荷も目立つ。

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 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和2年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に青森産と中国産が主体となって周年出荷されているが、年間を通じて青森産がトップとなっている。また、東京市場と同様5月から7月には香川産の入荷があり、5月は徳島産の入荷も目立つ。

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東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場の価格(令和2年)を見ると、国内産にんにくは1キログラム当たり884~2271円(年平均1372円)、海外産にんにくは1キログラム当たり300~384円(年平均344円)の幅で推移している。国内産と外国産とでは、3~6倍の価格差がある。

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輸入量の推移

 にんにくの輸入量を見ると、加工や冷凍に比べて生鮮が多く、令和2年は生鮮2万2832トン、冷凍2109トン、加工6569トンとなっている。国・地域別輸入量を見ると、いずれも中国からの輸入が圧倒的に多いが、近年、生鮮と冷凍はスペインからの輸入も見られる。

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消費の動向

 にんにくの供給量(収穫量+輸入量)を見ると、4万トン前後で比較的安定しており、増加傾向にある。
 にんにくは、料理の臭みを消す矯臭性の香辛料の代表的なものの一つである。野菜としては糖質、ビタミンB1が比較的多く含まれている。にんにく特有の強い香りのもとはアリシンという成分で、ビタミンB1と結合するとアリチアミンとなり、ビタミンB1の吸収を高めるとともに、体内での保持力も良いと言われている。また、 スコルジニンという成分も含まれており、エネルギーの燃焼促 進作用のほか血液循環促進、血中コレステロール低下作用、高血圧、動脈硬化、高脂血症、心筋梗塞、脳梗塞などの予防に効果が期待される。

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