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今月の野菜 野菜情報 2022年3月号

ばれいしょの需給動向

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調査情報部

産地地図

 
ばれいしょの写真
 
 ばれいしょは用途によって、家庭やレストランなどで消費される生食用、ポテトチップスなどに利用される加工用、かたくり粉や麺類に利用されるでん粉原料用に大別される。
 南米のペルー、ボリビア周辺が原産地といわれ、ペルーやチリでは6世紀以前にすでに栽培されていた。スペイン人によって欧州へと伝えられたのが16世紀頃で、当時はもっぱらばれいしょの花が観賞用として広まったようである。
 日本へは江戸時代にジャワ島のジャガタラ(現ジャカルタ)からオランダ船によって伝来した。じゃがたらいもが後につまってじゃがいもになったといわれる。日本の作物学上の名はばれいしょ(馬鈴薯)であるが、これは江戸時代の書物に「馬の鈴に似たいも」と書かれたことに由来する。
 国産の生食用の二大品種は、粉質系でほくほくした食感が魅力の「男爵薯」と粘質系で煮崩れしにくい「メークイン」であるが、そのほかにも「ニシユタカ」や「キタアカリ」など、消費の多様化によりさまざまな品種が作付けされている。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和2年の作付面積は、7万1900ヘクタール(前年比96.6%)と、前年よりやや減少した。
上位5道県では、
・北海道  4万8100ヘクタール(同 97.0%)
・鹿児島県  4270ヘクタール(同 93.2%)
・長崎県  3210ヘクタール(同 94.4%)
・茨城県  1620ヘクタール(同100.6%)
・千葉県  1160ヘクタール(同 98.3%)
となっている。
 なお、農林水産省「令和3年産春植えばれいしょの作付面積、収穫量及び出荷量(以下「同資料」という)」によると、3年の北海道の作付面積は4万7100ヘクタール(前年比98%)であった。
 
作付面積の推移
 
 令和2年の出荷量は、185万7000トン(前年比91.6%)と、前年よりかなりの程度減少した。
上位5道県では、
・北海道  155万3000トン(同 91.5%)
・鹿児島県  7万8600トン(同 90.3%)
・長崎県  7万3700トン(同 93.1%)
・茨城県  3万5500トン(同 87.0%)
・千葉県  2万3300トン(同 95.1%)
となっている。
 なお、同資料によると、3年の北海道の出荷量は150万1000トン(同97%)であった。
 
出荷量の推移
 
 出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、北海道の3.60トンが最も多く、次いで長崎県の2.64トン、茨城県の2.60トンと続いている。その他の県で多いのは、宮崎県の2.51トン、静岡県の2.23トンであり、全国平均は3.07トンとなっている。
 なお、同資料によると、3年の北海道の10アール当たりの収量は3.58トン、全国平均は3.12トンとなっている。
 
令和2年産の主産地の単収

作付けされている主な品種等

 生食用の二大品種は、粉質系でホクホクした食感の男爵薯と、粘質系で煮崩れしにくいメークインであるが、消費の多様化により、煮込み料理などに向き、多くの収量を確保できるニシユタカや肉の色が黄色いキタアカリなど、さまざまな品種が作付けされている。
 とうやは、北海道、関東地方を中心に作付けされ、ニシユタカは長崎県、鹿児島県を中心に栽培されている。最近は、キタアカリなどジャガイモシストセンチュウに抵抗性のある品種が増加している。
 
主な品種

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和2年)を見ると、1月から3月まで、および8月から12月までは北海道産が多くの割合を占めている。北海道産の多くは8月から入荷が始まり、その後は貯蔵物の入荷が翌年の5月ごろまで続く。長崎産や鹿児島産など九州産の早春物(新じゃが)は12月以降に入荷し、6月ごろまで続く。九州産と北海道産の端境期には、静岡産、茨城産、千葉産、などが入荷している。
 
令和2年 ばれいしょの月別入荷実績(東京都中央卸売市場計)
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和2年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に、北海道産が多くの割合を占めている。3月から6月にかけては、鹿児島産および長崎産の入荷が多い。また6月から8月にかけては静岡産、熊本産、千葉産、茨城産、青森産などが入荷している。
 
令和2年 ばれいしょの月別入荷実績(大阪中央卸売市場計)

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場における令和2年の価格の推移を見ると、男爵薯は1キログラム当たり61~334円(年平均171円)、メークインは同58~409円(年平均195円)となっている。令和2年の月別の推移を見ると、各産地の天候不順などによる生産量の影響を受け、大きく変動している。全般的には、北海道産の入荷が始まる8月ごろから下降基調となり、その後は貯蔵物の調整出荷となることから安定的な値動きとなる。1月以降は、九州産の新じゃがの生産量によって変動の幅が変化する傾向にある。
 
卸売価格の月別推移(男爵)
 
卸売価格の月別推移(メークイン)
 
卸売価格の月別推移(男爵+メークイン)

輸入量の推移

 ばれいしょの輸入量の約9割は冷凍ばれいしょが占めており、主に外食産業向けのフライドポテトや量販店の総菜などに使われている。冷凍ばれいしょの令和2年の輸入量は、前年比92%の36万3808トンとなっている。生鮮ばれいしょは、ほとんどがポテトチップスへの加工に仕向けられている。生鮮ばれいしょの2年の輸入量は、前年比74.3%の2万3198トンである。
 2年の国別輸入量を見ると、冷凍ばれいしょは、74.9%を占める米国のほか、ベルギー、オランダ、カナダなどからも輸入されている。生鮮ばれいしょは、全量米国からの輸入となっている。
 
国別輸入量の推移(生鮮)
 
国別輸入量の推移(冷凍)
 
国別輸入量の推移(乾燥野菜)
 
国別輸入量の推移(その他調製野菜

輸出量の推移

 ばれいしょ(生鮮)の輸出は近年増加しており、令和2年の主な輸出先はマレーシアで全体の5割以上を占める。次いで香港、シンガポールなどの東南アジア向けとなっている。
 
国別輸出量の推移(生鮮)
 
国別輸出量の推移(冷凍)
 
国別輸出量の推移(その他調製野菜)

消費の動向

 ばれいしょの1人当たり年間購入量は26年以前は3500グラム台で推移していたが、27年以降は徐々に減少し、3200グラム前後で推移している。
 小売価格(東京都区部)の動向を見ると、25年の1キログラム当たり300円以降は上昇傾向にある。
 ばれいしょの主成分であるでん粉はエネルギー源となるほか、ビタミンCをはじめとするビタミン類を豊富に含んでいる。フランスでは別名「大地のりんご」と呼ばれ、ビタミンCはりんごの倍以上含まれる。ばれいしょのビタミンCは加熱しても壊れにくく、煮たりゆでたりしても高い栄養価を保つ。また、高血圧予防に効果的なカリウムや、腸内環境を改善する食物繊維なども豊富である。季節によって各産地からさまざまな品種が届くばれいしょは、その個性を楽しみながら、いろいろな料理に使いたい野菜である。
 
1人当たり年間購入量の推移
 
小売価格(東京都区部)の動向