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今月の野菜 野菜情報 2022年1月号

こまつなの需給動向

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調査情報部
主要産地

こまつな
 

 こまつなは、かぶやはくさいと同じアブラナ科で、本来は冬の野菜である。寒さに強く、霜が降りてから甘みが増すと言われ、冬菜とも呼ばれる。江戸時代、東京の小松川(東京都江戸川区)付近で作られていたことからこの名前が付いたと言われている。江戸庶民の重要な冬野菜で、江戸っ子の雑煮には欠かせないものであった。

 現在では品種改良や栽培方法が工夫され、また栽培期間も短くさまざまな環境に適応できることから、ハウス栽培、トンネル栽培、露地栽培と年間4~8作され、周年出回っている。

 全国で生産されており、東京、神奈川、埼玉、千葉などの都市近郊が主な産地であるが、各地でさまざまな種類が栽培されており、新潟県の女池菜(めいけな)や大崎菜、福島県の信夫菜(しのぶな)、京都府の畑菜(はたけな)など、多くの地方品種がある。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和2年の作付面積は、7550ヘクタール(前年比103.4%)と、前年よりやや増加した。
上位5都県では、
・茨城県  1330ヘクタール(同122.0%)
・埼玉県  830へクタール(同 99.8%)
・福岡県  680ヘクタール(同 96.7%)
・群馬県  554ヘクタール(同101.7%)
・東京都  457ヘクタール(同100.0%)
となっている。

作付面積の推移
 
 令和2年の出荷量は、10万9400トン(前年比107.1%)と、前年よりかなりの程度増加した。
上位5都県では、
・茨城県  2万3000トン(同125.0%)
・埼玉県  1万2300トン(同 99.2%)
・福岡県  1万1700トン(同101.7%)
・東京都  7980トン(同100.6%)
・神奈川県  6720トン(同103.4%)
となっている。

出荷量の推移
 
 出荷量上位5都県について、10アール当たりの収量を見ると、茨城県の1.86トンが最も多く、次いで東京都の1.82トン、福岡県の1.76トンと続いている。その他の府県で多いのは、大阪府の1.89トン、京都府の1.79トンであり、全国平均は1.61トンとなっている。

令和2年産の主産地の単収

作付けされている主な品種等

 こまつなの品種は、播種(はしゅ)期や生育期の違いにより、極早生品種から晩生種まで使い分けられているが、多く使用されているのは早生種と中晩生種である。主産地で多く作付けされている品種は、早生種では「春のセンバツ」、中晩生種では「いなむら」などである。
 こまつなは周年栽培が可能であるが、最も労力を必要とする収穫作業を分散するために、生育期間の異なる品種を組み合わせたり、播種をずらすなど、さまざまな工夫をしている。

主な品種

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和2年)を見ると、もともとは冬の野菜であったが、1年を通じて安定した入荷量となっている。首都圏の市場の中でも特に東京都中央卸売市場への入荷が多い茨城産が各月の入荷量の51~65%を占めるなど、東京産を含めた関東産の入荷量が圧倒的に多い。

令和2年 こまつなの月別入荷実績(東京都中央卸売市場計)
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和2年)を見ると、東京都中央卸売市場と比べて7月の入荷量の少なさが目立つ。1年を通じて福岡産が各月の入荷量のトップを占め、特に7月、8月、9月以外は全入荷量に占める割合は70%を超えている。関東の茨城産のほか、関西の近在産地である大阪産も周年で入荷している。

令和2年 こまつなの月別入荷実績(大阪中央卸売市場計)

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場におけるこまつなの価格(令和2年)は、1キログラム当たり175~399円(年平均233円)の幅で推移している。年によって違いはあるものの、価格は夏場に向けて上がり、冬場に下がる傾向にある。正月商材としての引き合いが強く、12月下旬ごろから1月の初荷直後まで高値がつくこともある。

卸売価格の月別推移(国内産)

輸入量の推移

 こまつなの輸入は全て冷凍によるものである。平成25年の輸入量は1000トンを超えていたが、26年以降は600トン台に急減し、30年以降は200トン以下となっている。
 令和2年の国別輸入量を見ると、全量(156トン)を中国が占めている。

国別輸入量の推移(冷凍)

輸出量の推移

 こまつな(生鮮)の輸出は近年増加しており、令和2年の主な輸出先はタイで、全体の約5割を占める。次いで英国、フランス、ドイツなどの欧州向けが多い。

国別輸出量の推移(生鮮)

消費の動向

 こまつなの供給量(収穫量+輸入量)を見ると、平成26年以降は11万トンを上回っており、総じて増加傾向にある。
 江戸時代から冬の青菜として親しまれてきたこまつなは、緑黄色野菜の中でも栄養価が高く、ビタミンKなどのビタミンやミネラルを豊富に含んでいる。ビタミンKは止血作用があるほか、カルシウムが骨に沈着するときに必要なたんぱく質を活性化させる働きがあり、骨の形成に役立つ。また、カロテンやビタミンCも豊富で、ともに強い抗酸化作用があるため、動脈硬化を抑制したり、がんを予防する効果が期待できる。
 こまつなはあくが少ないため下ゆでの必要がなく、栄養面でも優れて何とでも相性が良いことから、家庭での利用はもちろん、学校給食でも多く使われている。おひたしや炒めもの、和えもの、味噌汁など、用途が広く彩りの良いこまつなは、一年を通じて食卓にのせたい野菜である。

供給量の推移(収穫量+輸入量)