さといもは、サトイモ科の多年草で高温多湿を好み、日本では水田転換畑に栽培されている地区が多い。東南アジアや太平洋諸国ではタロと呼ばれ食生活の要となっており、この地域はタロイモ文化圏とも言われる。畑で栽培されることから「山芋」に対して「里芋」と呼ばれるようになった。日本には稲作が始まった縄文時代後期よりも前に渡来し、かんしょやばれいしょが渡来する江戸時代までは「いも」と言えばさといものことであった。種いもから子いも、孫いもと増えることから子孫繁栄の象徴にもなっており、いも煮会のように各地に行事が継承されている。
令和元年の作付面積は、1万1100ヘクタール(前年比96.5%)と、前年に比べてやや減少した。
上位5県では、
●千葉県1,160ヘクタール(同 92.8%)
●宮崎県951ヘクタール(同 94.2%)
●埼玉県803ヘクタール(同 98.6%)
●新潟県581ヘクタール(同 97.5%)
●鹿児島県550ヘクタール(同 95.8%)
となっている。
令和元年の出荷量は、9万2100トン(前年比96.6%)と、前年に比べてやや減少した。
上位5県では、
●埼玉県13,300トン(同 102.3%)
●千葉県10,600トン(同 78.5%)
●宮崎県9,980トン(同 86.8%)
●愛媛県7,450トン(同 111.9%)
●鹿児島県6,660トン(同 109.2%)
となっている。
出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、愛媛県の2.38トンが最も多く、次いで埼玉県の2.29トン、鹿児島県の1.45トンと続いている。その他の府県で多いのは、大阪府の1.77トンであり、全国平均は1.26トンとなっている。
全国的に栽培が盛んな「石川早生」の中でも、特に初夏から秋口に出回る小ぶりの芋は中秋の名月に皮ごと茹でて食べる調理方法が有名である。「土垂」(晩生種)は関東で栽培が多く周年、出回る。赤目芋とも呼ばれる「セレベス」も全国的に生産が多い。千葉県の「ちば丸」は戦略品目として産地で開発され厳格に種いもが管理されている。「大和早生」は新潟県で20年以上の歳月をかけて改良された品種である。また、「泉南中野早生」はもともと大阪府で改良された品種である。「大和芋」は加工用として知られる。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和元年)を見ると、8月以降、年末にかけて千葉産、埼玉産を中心に入荷が増え、ピークとなり12月には愛媛産、栃木産、新潟産なども入荷する。年明け以降は入荷量は減少し、5月~7月は鹿児島産、宮崎産など九州からの入荷となる。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和元年)を見ると、9月以降年末にかけて愛媛産、宮崎産を中心に福井産、鹿児島産、静岡産などからの入荷が見られピークは12月となる。年明け以降は一気に入荷量が減少し7月まで減少傾向で推移する。輸入の中国産は通年、安定的に入荷している。
東京都中央卸売市場における国内産の価格は、入荷量が減る5月~8月にかけて1キログラム当たり400円程度で推移し、需要期である年末年始は同300円程度(年平均386円)で推移した。平成元年の7月の急騰は、主力産地である宮崎県が停滞する梅雨前線による長雨と大雨の影響で収穫できず入荷量が激減したことによる。外国産は通年、1キログラム当たり200円程度(年平均192円)で安定的に推移している。
生鮮のさといもの輸入は、中国産が主流で年間4000トン程度で推移している。平成24年までは、景気悪化により消費者の低価格志向が進み、安価な中国産原料需要が高まったことから輸入量は伸びていたが、25年以降は日本円に対して元が上昇したこともあり、輸入量が減少した。また、農薬検出を契機に26年4月以降、中国産さといもに対する検査が強化され、27年に通常検査となったものの輸入量は回復していない。冷凍のさといもも中国産が主流で輸入量は3万トン程度で推移している。
さといもの食用部分は茎が変形した部分で、水分が多くいも類の中では低エネルギーの部類である。塩分排出に効果的なカリウムが多い。特徴であるぬめり成分は多糖類のガラクタンとたんぱく質が結合したもので、水溶性食物繊維に分類される。成長の仕方や食用部分によって大きく四つに分類できる(参考表)。食感も異なるため好みや用途によって使い分けたい。
1人当たりの年間購入量は、年々減少しているが、子孫繁栄の縁起物としておせち料理に使われるほか、正月を祝う飾りに橙や鏡餅と一緒に株ごと供える風習もある。特に京都の味噌仕立ての雑煮には欠かせない食材である。また、さといもの葉にたまった夜露を天の川のしずくにたとえ、そのしずくで墨を溶いて和歌をしたため願い事を書いたのが七夕の由来であるという説もあり、日本の文化に深く根差した野菜と言える。
さといもと葉の形状がよく似ている植物にクワズイモという有毒観葉植物があり、さといもと勘違いした誤食による食中毒も発生しているので注意したい。