温暖湿潤な気候の日本はきのこの宝庫で、しいたけをはじめ、まつたけ、しめじ、えのきなど数千種類ものきのこ類が存在する。胞子で増える生しいたけは、くぬぎなどの幹に胞子を植える原木栽培とおがくずに栄養となる米ぬかを加え滅菌した培地で栽培する菌床栽培の2つの栽培方法がある。秋田産のパッケージ画像に印刷されているどんぐりマークは国産の菌床を使っていることを証明するものである。菌床しいたけの原産地表示については、令和2年3月27付の消費者庁の食品表示基準Q&Aにより収穫した場所に加え、菌床が製造された場所も表示することが薦められている。
令和元年の生しいたけ(菌床栽培および原木栽培)の生産量は、7万1112トン(前年比101.9%)と、前年に比べてわずかに増加した。
上位5道県では、
●徳島県8,209トン(同 101.2%)
●北海道6,719トン(同 92.8%)
●岩手県4,254トン(同 101.4%)
●群馬県3,967トン(同 99.4%)
●秋田県3,625トン(同 102.1%)
となっている。
そのうち菌床栽培は、6万5198トン(前年比102.1%)と、前年に比べてわずかに増加した。
上位5道県では、
●徳島県8,156トン(同 100.8%)
●北海道6,539トン(同 93.1%)
●岩手県4,098トン(同 101.4%)
●群馬県3,426トン(同 98.8%)
となっている。
原木栽培は、5914トン(前年比99.1%)と、前年に比べてわずかに減少した。
上位5県では、
●静岡県791トン(同 98.1%)
●鹿児島県748トン(同 116.1%)
●群馬県541トン(同 103.7%)
●茨城県391トン(同 100.9%)
●大分県349トン(同 99.1%)
となっている。
同じように見えるしいたけだが、各地の気象や立地条件に適した品種選定が不可欠であり、さらに厚み、大きさ、形状によって多くの品種が開発されている。かつては菌床栽培においても、原木栽培用品種を使っており収量などが不安定だった。現在は、菌床栽培の専用品種の開発が進んでおり、また、原木栽培は植菌から収穫まで約2年間かかるのに対し、菌床栽培は4~5カ月であることから菌床栽培の生産量が増えている。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和元年)を見ると、入荷量は4~8月にかけて減少し、年末年始にかけて増えている。通年、岩手産、栃木産、秋田産が安定してボリュームが多く、次いで北海道産、千葉産となる。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和元年)を見ると、徳島産が通年で入荷し、数量的に大きな割合を占めている。秋田産、長崎産も見られるほか、年末にかけて岐阜産が増えている。
東京都中央卸売市場における生しいたけの卸売価格は、お正月需要もあり11~翌2月にかけて上昇する傾向があるが、年による大きな変動はみられない。産地別にみると、国産が1キログラム当たり800~1200円で推移しているのに対し、輸入品は同500~600円となっており価格差は大きい。
生鮮しいたけの輸入は中国産の割合が高いものの、近年は減少傾向である。乾燥しいたけも中国産が大部分を占めるが、輸入量は安定して推移している。
和食の食べ方のヒントとして「まごはやさしい」という言葉を耳にする。豆(ま)、胡麻(ご)、海藻(わ(かめ))、野菜(や)、魚(さ)、しいたけ(し)、いも(い)を食事に取り入れることでバランスよい献立ができるという語呂合わせである。しいたけは室町中期から食べられており、煮物、てんぷら、汁の実など古くから日本の食生活に欠かせない。また、うま味成分であるグアニル酸を含み、昆布とともに和食の要である出汁には欠かせない食材である。一人当たり年間購入数量は約530グラム、小売価格は1キログラム当たり約170円で安定して推移している。
栄養面では、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが豊富なほか、食物繊維も多く、低カロリーであるため健康食品としても存在感が大きい。乾燥させる場合は、カビが生えることがないように半乾きの状態から最後にレンジで乾燥させてから保存したい。
菌床栽培が増える傾向にあるが、原木栽培は日本の里山における生活を支えるだけでなく、森林を守ってきたという側面から、環境保護の面でも大きな役割を果たしている。
魅力の多いきのこ類だが、有毒なきのこによる食中毒も発生しているため、天然のきのこについては必ず専門家に確認するようにしたい。