ちんげんさいは、はくさいやかぶと同じアブラナ科アブラナ属に分類される。日本における歴史は浅く、昭和47年の日中国交回復以降に中国から伝わった「中国野菜」(注)の一種である。導入当初は、葉茎の色によって青軸パクチョイ、白軸パクチョイと呼ばれていたが、58年に農林水産省による新野菜の統一名称が改められた際に葉柄が緑のものはちんげんさいと定められた。中国語では青梗菜と書き、広東語の読み方である。
注:中国野菜には、ちんげんさいの他、パクチー、にんにくの芽、豆苗、クウシンサイ、タアサイなどがある。
令和元年の作付面積は、2140ヘクタール(前年比98.6%)と、前年に比べてわずかに減少した。
上位5県では、
●茨城県498ヘクタール(同 100.4%)
●静岡県312ヘクタール(同 97.5%)
●群馬県144ヘクタール(同 96.6%)
●愛知県133ヘクタール(同 100.0%)
●埼玉県104ヘクタール(同 92.0%)
となっている。
令和元年の出荷量は、3万6100トン(前年比96.3%)と、前年に比べてやや減少した。
上位5県では、
●茨城県10,300トン(同 93.6%)
●静岡県7,100トン(同 100.7%)
●愛知県2,610トン(同 101.2%)
●埼玉県2,050トン(同 94.0%)
●長野県1,640トン (同 95.9%)
となっている。
出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると静岡県の2.41トンが最も多く、次いで茨城県の2.32トン、埼玉県の2.24トンと続いている。その他の道県で多いのは、熊本県の2.12トンであり、全国平均は1.92トンとなっている。
はくさいが中国の華北地方で発達した品種群であるのに対し、ちんげんさいを含む不結球のタアサイ型ツケナは華南地方で発達したため、比較的、高温耐性がある。同じ県内でも水はけや標高、栽培時期によって品種が異なる。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和元年)を見ると、通年で茨城産、静岡産、千葉産が入荷しており、数量のピークは3~5月となっている。茨城産が圧倒的なシェアを占めているが、4~11月には埼玉産や群馬産もみられる。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和元年)を見ると、静岡産、愛知産が通年で入荷している他、5~10月には長野産のシェアが大きくなる。
東京都中央卸売市場における卸売価格は、露地物が出回る3~7月は1キログラム当たり200~300円で推移し、ハウス物が出回る冬場にかけて上昇する傾向が見られる。
ちんげんさいは、静岡県から生産が広まった中国野菜で、当初は高級な食材として扱われていた。アクがほとんどなく、煮る、焼く、炒める、蒸すなど、どんな調理方法でも鮮やかな緑色が保たれ、利用価値が高いことから一般家庭にも広まっていった。通年栽培が可能で、軽量なので収穫作栽の負担も少なく、栽培期間も短いなどの理由から産地も広がり、現在では手のひらサイズのミニちんげんさい、菜花のように花芽を利用する品種もある。
βカロテンが多い緑黄色野菜であるが、カルシウムも豊富に含まれる。茹でる際は、少量の湯のなかに塩と油を加えて、蒸し茹でにすると風味が残って、色鮮やかに仕上がる。根本が厚い場合は、切り込みを入れると火の通りがよくなる。冬場にかけて出回るハウス物は柔らかく食べやすいので、クリーム煮やお浸し、肉料理の添え物に活用したい。