ほうれんそうはアカザ科に分類されていたが、アカザ科がヒユ科に統合されたことから、現在はヒユ科に分類されている。ほうれんそうの波稜とはペルシャを意味しており、原産地のアフガニスタン周辺の中央アジア地域から回教徒によってシルクロードを経て東西に伝番され、大きく西洋種と東洋種に分類される。西はアフリカを経てヨーロッパ、さらに米国に伝わり、東はイランから漢の時代の中国に伝わった。日本へは17世紀に中国を経由して伝わった東洋種が日本在来品種の基礎となった。現在は、明治時代以降に欧米から伝わった西洋種と東洋種を交配した一代雑種が主流となっている。
平成30年の作付面積は、2万300ヘクタール(前年比99.0%)と、前年に比べてわずかに減少した。
上位5県では、
●千葉県2,110ヘクタール(同 94.2%)
●埼玉県2,020ヘクタール(同 99.5%)
●群馬県1,910ヘクタール(同 104.9%)
●茨城県1,240ヘクタール(同 105.1%)
●岐阜県1,240ヘクタール(同 97.6%)
となっている。
平成30年の出荷量は、19万4800トン(前年比100.8%)と、前年に比べてわずかに増加した。
上位5県では、
●千葉県23,300トン(同 76.9%)
●埼玉県20,100トン(同 101.5%)
●群馬県19,600トン(同 115.3%)
●茨城県16,200トン(同 102.5%)
●宮崎県13,900トン(同 117.8%)
となっている。
出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、宮崎県の1.65トンが最も多く、次いで茨城県の1.44トン、千葉県の1.21トンと続いている。その他の府県で多いのは、京都府の1.60トンであり、全国平均は1.12トンとなっている。
ほうれんそうは、昼の長さが長いと花芽ができて花茎が伸び、味が落ちる。そのため、秋まきには抽苔が早い東洋系、春まきや北海道の産地では晩抽性の西洋系が多い。東洋系の葉は厚みが薄く切れ込みが大きい三角形型(剣葉)で根本は赤く甘みがあり、種子は棘があり角ばっている。一方、西洋系の葉は厚みのある卵型(丸葉)では種子は丸い形状である。現在、広く出回っているのは一代雑種品種で、東洋種と西洋種の特徴を併せ持ち、種子は丸い形状であるのが特徴である。播種時期をずらすことで長期間の収穫や周年栽培を実現している。もともと雌雄別株であるが、中間的な性質ももつ株もあり一代雑種の採種に利用されている。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成30年)を見ると、群馬産、茨城産が通年に渡り見られ、11~5月は埼玉産、千葉産など近在産地からも入荷し、11月および3月がピークとなっている。5~10月にかけては岩手産、岐阜産が見られ、気温が高くなる7~9月までは数量が減少する。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成30年)を見ると、12~3月にかけて徳島産、福岡産が大部分を占め、茨城産、群馬産、大阪産、兵庫産もわずかに入荷する。4月は産地が切り替わり、4~11月は福岡産が徐々に減少する一方で、岐阜産が大部分を占める。わずかに関東の茨城産、群馬産、北海道産の入荷もみられる。
東京都中央卸売市場における生鮮ほうれんそう(国内産)の年間の価格推移をみると、おおむねキログラム当たり400円から900円の間で推移し、気温が上昇して入荷量が減少する7~9月にかけて高くなる傾向がある。平成29年11月から翌30年2月にかけては、秋に到来した台風の影響を受けて高騰したが、30年11月は好天に恵まれて出荷が大幅に前進したことから、29年の半値以下まで下落した。令和元年は、露地作で播種が遅れたことから冬場に高くなった。
生鮮ほうれんそうは、米国からの輸入量が平成27~28年に一時的に急増したものの、29年以降はほぼ輸入がない状態となっている。冷凍ほうれんそうの輸入数量は、年々、増加しており、多くが中国産だが、台湾、イタリアからの入荷もみられる。
甘みの強い寒締めほうれんそうやサラダ向けなどバラエティが増えているなか、小売価格に大きな変動はなく安定して推移している。緑黄色野菜のなかでも特に栄養価が高く、ビタミンK、葉酸、鉄が豊富に含まれる。また、最近、ほうれんそうに含まれるルテインが目の網膜を増加させることがわかり、光の刺激から目を守ることから機能性表示食品として登録されている産地や冷凍ほうれんそうも出てきている。冷凍ほうれんそうは、カットや下茹ですることなく調理に利用でき、栄養価の損失も少ないため、冷凍野菜のなかでも人気が高い。栄養価が高く、冷凍、生鮮、サラダ用と季節を問わず入手できるので、幅広く食生活に取り入れてほしい。