そらまめはマメ科ソラマメ属の植物で、完熟した豆を利用する種類と未熟な豆を塩ゆでにして食べる青果用がある。日本への伝来は2つの時期があり、仏僧が中国から持参した短莢系統が奈良時代(8世紀)、明治政府がヨーロッパから導入した長莢系統が明治以降(19世紀)とされている。各地で日本独自の品種が作り出され、野菜用として西南暖地で栽培が広まった。呼び名に関しては、蚕の作る繭に似ている姿から「蚕豆」、空に向かって実る姿から「空豆」などの呼び名があるほか、五月マメといったように季節を感じさせる名称もある。概して温暖な気候を好み、生育適温が高いため収穫時期と地域は限定的である。
平成30年の作付面積は、1810ヘクタール(前年比95.3%)と、前年に比べてやや減少した。
上位5県では、
●千葉県358ヘクタール(同 94.7%)
●鹿児島県254ヘクタール(同 89.8%)
●愛媛県137ヘクタール(同 98.6%)
●茨城県135ヘクタール(同 98.5%)
●香川県89ヘクタール(同 100.0%)
となっている。
平成30年の出荷量は、1万100トン(前年比94.4%)と、前年に比べてやや減少した。
上位5県では、
●鹿児島県2,730トン(同 83.2%)
●千葉県1,820トン(同111.7%)
●茨城県1,350トン(同 98.5%)
●愛媛県563トン(同103.9%)
●宮城県349トン (同103.6%)
となっている。
出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、茨城県の1.27トンが最も多く、次いで鹿児島県の1.24トン、千葉県の0.73トンと続いている。その他の県で多いのは、熊本県の1.18トンであり、全国平均は0.80トンとなっている。
流通の大半を占めるのは陵西一寸や打越一寸、唐比の春などの品種に代表される“一寸そらまめ”である。さやが大きく、豆一粒の大きさが一寸(約3センチ)ほどあることから、この名称がついた。ひと莢に3粒以上の豆が入り収量が多く、また商品価値が高いため多くの産地で導入されている。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成30年)を見ると、12月から鹿児島産が入荷し始め、4月にかけて増加しながら推移する。ピークは5月となり、鹿児島産は減って、千葉県、茨城産、愛媛産、長崎産などが入荷する。6月以降は宮城産、秋田産、青森産などの入荷となるが入荷量は一気に減り、夏場の入荷はほぼない。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成30年)を見ると、12月から鹿児島産が入荷し始め、4月にかけて増加しながら推移する。ピークは5月となり、長崎産、愛媛産、和歌山産、大阪産などが入荷する。6月以降は青森産、岡山産、新潟産などの入荷となるが入荷量は一気に減り、夏場の入荷はほぼない。
東京都中央卸売市場における卸売価格は、出回り数量が増える3~7月はキログラム当たり500円前後で推移し、年末から年明けに高くなる傾向がある。8月は、一気に数量が減少することもあり価格が上がる傾向があるが、特に平成30年は1キログラム当たり1500円と過去2年の倍以上の価格となった。28年3月は数量が少なかったことから高騰した。
生鮮、冷凍とも輸入量は一定ではなく、輸入先も安定していない。
生鮮そらまめの輸入量は、平成28年以降、増えており、31年はインドからの輸入が多くなっている。一方、冷凍そらまめは、23年以降、中国産が減少するなかチリ産の比率が高まっている。
莢の内側にある真っ白な綿に包まれた、ぷっくり大きな薄緑のそらまめは初夏の到来を告げる野菜の一つである。
毎年、5月に両国で開催される大相撲夏場所では塩茹でのそらまめが常連客に人気の一品でもある。
エネルギー源となる糖質やたんぱく質を豊富に含んでおり、同じ豆類のえだまめに比べ、脂質が少ない。また、葉酸、ビタミンB1、ビタミンC、カリウム、鉄分も含んでいる。莢から外すと鮮度が落ちるので、莢付きのまま購入するのがおすすめである。莢から外した豆はさっと茹でて冷凍保存すればサラダなどにすぐに使えて便利である。スナップえんどうなど、他の豆類に押され気味のそらまめだが、春先から初夏にかけて店頭に並ぶ、旬が短い野菜なので時期を逃さず味わいたい。