ごぼうはキク科ゴボウ属の野菜で、原種はヨーロッパからアジアにかけての広い範囲に分布していたとみられる。中国では古くから薬草として栽培され、日本へも薬草として平安時代に渡来し、その後、平安中期には食用として調理方法などが確立されたと記録が残っている。一般的な細長いタイプの「滝野川群」、それ以外(葉茎を利用するものや太いタイプ)の2群に大別される。酸性土壌を嫌い、耐暑性、耐寒性はあるが耐湿性は弱い作物である。また連作障害があるので同じ圃場の場合、4~5年は栽培間隔をあけることが望ましい。
平成30年の作付面積は、7710ヘクタール(前年比97.0%)と、前年に比べてやや減少した。
上位5県では、
●青森県2,350ヘクタール(同 100.4%)
●茨城県830ヘクタール(同 96.5%)
●宮崎県617ヘクタール(同 95.4%)
●北海道615ヘクタール(同 95.8%)
●鹿児島県445ヘクタール(同 97.4%)
となっている。
平成30年の出荷量は、11万7200トン(前年比95.4%)と、前年に比べてやや減少した。
上位5県では、
●青森県46,600トン(同 99.1%)
●北海道12,500トン(同 82.8%)
●茨城県12,500トン(同 94.7%)
●宮崎県7,680トン(同 85.8%)
●群馬県6,850トン(同 92.9%)
となっている。
出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、北海道の2.20トンが最も多く、次いで青森県の2.11トン、群馬県の1.82トンと続いている。その他の県で多いのは、千葉県の2.06トンであり、全国平均は1.75トンとなっている。
代表産地の栽培品種は全て細く長い滝野川系である。春播きにも秋播きにも対応できる柳川理想は幅広い産地で導入されている。産地の気候と作型によって品種の違いが見られるほか、若掘りサラダ用に向く「すなお白肌」など用途によっても品種の選択が変わってくる。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成30年)を見ると、6~8月は群馬産を中心に減りながら推移し、9月からピークの12月にかけては青森産の入荷増に伴って全体の入荷量が増える。1~5月にかけては安定した入荷量となっているが、年間を通して青森産の存在感が大きく、次いで鹿児島産、茨城産、熊本産の入荷が見られた。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成30年)を見ると、6~9月は群馬産を中心に九州の鹿児島産、宮崎産、熊本産の入荷がある。9月以降ピークとなる12月、さらに翌5月にかけては、北海道産、茨城産、青森産などの東日本からの入荷が見られる。
東京都中央卸売市場における国内産の価格は、7~11月にかけて下降し、年末需要の高まる12月に上昇するという傾向がある。中国など外国産の価格はキログラム当たり200円前後で通年、安定している。
生鮮ごぼうの輸入量は、ほぼ横ばいで推移しており多くが中国産で、次いで台湾産の輸入も見られる。中国産は春と秋の2回収穫され、通年輸入されるが、台湾産は年1作であり4~6月に入荷量が多い傾向がある。冷凍、塩蔵に関しては中国からのみの輸入となっている。
食用としているのは日本だけと言われていたが、食物繊維や色素およびえぐみの素であるポリフェノールが豊富なことから、健康意識の高まりとともに中国や台湾でも消費されるようになっている。
ごぼうの魅力であるえぐみや香りは、皮に近い方に豊富なのでなるべく皮は薄くむくようにしたい。泥付きごぼうは香りや日持ちの良さが魅力であるが、価格変動が激しいのが流通関係者の悩みである。近年、パッケージ素材の改良から洗いごぼうも日持ちがよくなり、利便性や安定した価格から消費が伸びている。また、長く成長させずに若掘りするごぼうは肉質が柔らかく「サラダごぼう」として出回っている。
泥付きごぼうは洗いごぼうよりも香りやえぐみが強く感じられるので、洗いごぼうはサラダやかき揚に、泥付きごぼうはきんぴらや煮しめ、豚汁など長時間加熱するものにと使い分けるのも一手である。
ごぼうの仲間として、根だけでなく葉や茎を食用とする「葉ごぼう」があるが、なかでも大阪を中心に春の味覚として知られる「八尾若ごぼう」は地域団体商標として登録され大切に受け継がれている。また、根菜の果肉中心部分に空洞ができることを「スが入る」といい、一般的には欠点となるが、成田山新勝寺の精進料理に欠かせない「大浦ごぼう」の場合、大きいもので太さが30センチほどにもなり空洞があるのが特徴である。千葉県匝瑳市の大浦地区でわずかに生産されるが、ほとんどが精進料理用に奉納されるため一般の市場には出回らず、成田市指定天然記念物にもなっている。
近年、小売価格は上昇しており、年間購入数量は減少傾向ではあるものの、「たたきごぼう」「きんぴらごぼう」などはおせち料理に供されるほか、茶道で新年最初のお稽古である初釜で供される「花びら餅」にもごぼうが使われるなど日本の食文化に深い関わりのある野菜の一つといえる。