にんじんはセリ科の野菜で、原産地はアフガニスタン東部で橙色、白色、黄色、紅紫色、黒紫色などさまざまな色があったといわれている。オランダで花開いた品種改良によって開発された中身までオレンジ色の西洋系の「カロテンにんじん」は明治時代に日本へ導入され、現在の主流品種となっている。一方、アジアを経由して江戸時代に導入された東洋系は細長く色も多彩であったが栽培面積は減少し、現在は京料理やおせち料理に欠かせない果肉まで真っ赤で肉質の柔らかい「金時にんじん」がよく知られている。
平成29年の作付面積は、17,900ヘクタール(28年比100.6%)と、28年に比べてやや増加した。
上位5道県では、
●北海道5,060ヘクタール(同104.5%)
●千葉県3,050ヘクタール(同 98.4%)
●青森県1,160ヘクタール(同 97.5%)
●徳島県978ヘクタール(同 98.0%)
●茨城県863ヘクタール(同100.6%)
となっている。
平成29年の出荷量は、532,300トン(28年比105.9%)と、28年に比べてやや増加した。
上位5道県では、
●北海道178,500トン(同130.5%)
●千葉県94,800トン(同 95.0%)
●徳島県49,800トン(同105.5%)
●青森県34,900トン(同 98.9%)
●長崎県28,300トン(同 99.3%)
となっている。
出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、徳島県の5.43トンが最も多く、次いで北海道の3.80トン、長崎県の3.56トンと続いている。その他の県で多いのは、和歌山県の4.30トン、茨城県の3.64トンであり、全国平均は3.33トンとなっている。
日本で古くから栽培されている東洋系のにんじんは極めて抽苔しやすかったことから、かつては夏まきの長根種が主流であった。にんじんの品種の分化は、食生活の変化や労働生産性の面から戦後に急速に進み、現在では西洋系の短根種が主流となり、それに適応する育種および栽培技術の進展により通年栽培が可能になっている。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成29年)を見ると、11~3月にかけては千葉産が中心で埼玉産、茨城産などの近在からの入荷が続き、2月以降、鹿児島産もみられるが、3~5月は徳島産が中心の入荷となる。6月は再び千葉産などの近在からの入荷となり、7~10月は北海道産、青森産が中心となった。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成29年)を見ると、11月から年明け3月までは長崎産、鹿児島産が増え、3~5月は徳島産が増えてくる。6月は長崎産、和歌山産が中心となり、7月は北海道産、青森産が入荷し始め、8~10月は北海道産が大部分を占める。
東京都中央卸売市場における国内産にんじんの価格は、5~9月にかけて上昇し、年末から2月にかけて底となる傾向があるが、平成28年の9~11月は天候不順により高騰し、そのまま29年に入っても高値のまま推移したが、その後、7~9月にかけては北海道産の入荷が平年よりも多かったことから下落した。
生鮮にんじんの輸入先国は、中国が大部分を占めるほかベトナムや台湾からの輸入も見られ、平成28年は国内産の価格上昇により輸入が増えた。にんじんジュースは米国のほかニュージーランドやポーランドからの入荷が見られ、3~5万トンで推移している。
にんじんの輸出実績を見ると、台湾向けが大部分を占めており、次いで香港向けが多い。台湾国内でも野菜生産は行われているが、夏場は気温が高く端境期となること、また台風の影響などから収量が減少するため輸入が増える傾向にある。にんじんに関しては、生産は冬場に限られており、日本からは主に夏場に収穫期が重なる北海道から輸出されている。また、日本では販売が難しいLサイズ以上の大型にんじんが好まれるという特徴がある。年によって数量の変動が大きいが、特に平成27年および28年は台湾が不作で価格が高騰したことから日本からの輸入が急増した。
にんじんの1人当たりの年間購入量は2700~3000グラムで安定しており、炒め物や煮物など和洋中、幅広い料理に使われるほか、その鮮やかな色からお菓子やジュースの原料としても人気があり、長期貯蔵も可能であることから消費は安定している。カロテンの語源がCarrot(にんじん)であることからも想像できるとおり、にんじんは緑黄色野菜のなかでも特にβ-カロテンが豊富な野菜として知られている。β-カロテンは脂溶性なので油を使った調理やドレッシングなどで取り入れるのが効果的である。3~5月にかけては柔らかく甘みのある新にんじんが出回り始めるので、サラダやジュースの材料として積極的に取り入れたいものです。