だいこんは、アブラナ科ダイコン属の1年草で冷涼な気候を好む野菜である。中央アジアが原産地の一つとして考えられており、地中海沿岸諸地域、中国地域で特に分化が進んだと考えられている。栽培、利用の歴史は古く、日本へは8世紀頃に中国から伝わったとされ、「日本書紀」(720年)にも和名の“オオネ”として記録がある。
広く栽培されるようになったのは江戸時代からで、飢饉対策として作付けが奨励され、江戸時代の後半には多くの品種が出そろったと言われる。
平成29年の作付面積は、3万2000ヘクタール(28年比99.1%)と、横ばいで推移した。
上位5県では、
●北海道3,480ヘクタール(同103.0%)
●青森県2,970ヘクタール(同 99.0%)
●千葉県2,750ヘクタール(同 98.2%)
●鹿児島県2,090ヘクタール(同101.0%)
●宮崎県1,880ヘクタール(同 97.9%)
となっている。
29年の出荷量は、108万7000トン(28年比98.4%)と、28年よりわずかに減少した。
上位5県では、
●北海道161,300トン(同117.7%)
●千葉県130,700トン(同 92.6%)
●青森県116,000トン(同101.2%)
●鹿児島県85,500トン(同 97.7%)
●神奈川県72,000トン(同 85.6%)
となっている。
出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、神奈川県の6.61トンが最も多く、次いで千葉県の5.09トン、北海道の4.95トンと続いている。その他の県で多いのは、長崎県の6.95トン、和歌山県の5.99トンであり、全国平均は4.14トンとなっている。
夏だいこんと冬だいこんは栽培特性が違うことから、品種も大きく異なっている。栽培の歴史が古く、日本全国でそれぞれの土壌、気候に適応した作型に分化したこと、さらに用途も幅広いことから日本における品種数は世界的に見ても多いと言われている。 主に“青首だいこん”と“白首だいこん”の2つの品種群に大きく分かれるが、流通の主流は青首だいこんである。青首だいこんは辛味が弱く甘みがあるのが特徴で広く好まれており、白首だいこんは漬物やツマなどで多く利用される。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成29年)を見ると、6月から11月までは北海道、青森県といった東北の産地からの入荷が見られる。11月から5月にかけては近在の千葉県、神奈川県、茨城県の入荷が大きな割合を占めるほか、徳島県や鹿児島県からの入荷も見られる。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成29年)を見ると、6月から10月は北海道産や東北、北陸からの入荷割合が高く、11月から5月にかけては長崎県、徳島県、和歌山県、鹿児島県などからの入荷がみられる。
東京都中央卸売市場におけるだいこんの価格(平成29年)は、1キログラム当たり76~151円(年平均96円)の幅で推移している。平成29年12月は天候不順による生育不良や肥大遅れにより、千葉県および神奈川産の入荷量が大幅に減少し、価格が上昇した。
生鮮だいこんの輸入量は、国内の天候不順の影響を受けて平成24年に急増したが、その後は減少し28年、29年は3500トン程度で推移している。年によって韓国や豪州、メキシコからの輸入も見られるが、中国からの輸入が大部分を占めている。冷凍だいこんは23年に減少したものの、ここ数年は300から350トンの間で推移している。
昭和から平成のはじめにかけては、1人当たり年間購入量は6キログラム程度あったが、ここ数年は4~5キログラムの間で推移している。家庭で漬物を作る人が少なくなったこともあり、さといも、はくさいと並んで消費量の落ち込みが大きい野菜の一つである。東京都区部の小売価格は1キログラム当たり180円前後で推移しているが、価格が高くなると購入数量が減るような傾向が見られる。
一方で、加工・業務用野菜としては欠かすことができない品目であり、サラダ、ツマ、おろしといった生食用、おでんなどの煮物用、切り干しだいこんといった保存食用、さらに漬物用と用途が多様であり、年間を通して需要がある。特に近年は、コンビニエンスストアのおでんが大きなマーケットとなっている。