わけぎ(分葱)は、東洋在来のユリ科ネギ属の多年草の野菜で、ねぎの仲間である。
ねぎ類のなかでも分けつが多いことから“分葱”と書くほか、人という漢字に似ているなど、その由来は諸説あるが熊本県では“ひともじ”とも呼ばれている。気温が低いと生育が鈍るため、栽培は温暖な関西以西で盛んであり、特に瀬戸内海に面する広島県の島しょ部は冬でも枯れない柔らかいわけぎが生産できることから古くから有数の産地で、広島県は全国の収穫量の6割を占めている。ねぎよりも粘りと独特の香りがあるのが特徴で、βカロテンが豊富な緑黄色野菜である。本来のわけぎはねぎとたまねぎの雑種で、ねぎと違って種を作らず地下の球根(鱗茎)で増える。関西市場では「わけぎ」といえば、この「わけぎ」を指すが、関東市場では「わけねぎ」も「わけぎ」と分類している。
平成26年の作付面積は、116ヘクタール(24年比106.4%)と、24年よりかなり増加した。
上位5県では、
●広島県68ヘクタール(同 95.8%)
●群馬県11ヘクタール( - )
●愛知県7ヘクタール(同 50.0%)
●茨城県6ヘクタール(同100.0%)
●福岡県6ヘクタール(同150.0%)
となっている。
26年の出荷量は、1153トン(24年比87.0%)と、24年よりかなり大きく減少した。
上位5府県では、
●広島県732トン(同 84.6%)
●福岡県140トン(同129.6%)
●愛知県75トン(同 47.5%)
●神奈川県39トン(同 76.5%)
●茨城県38トン(同 97.4%)
となっている。
出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、福岡県の2.62トンが最も多く、次いで神奈川県の2.25トン、愛知県の1.17トンと続いている。その他の府県で多いのは、大阪府の1.50トン、沖縄県の1.45トンであり、全国平均は1.05トンとなっている。
わけぎは球根で栽培する野菜である。広島県で栽培される品種は、わけぎ農家の自家採種を中心に選抜され継承されてきたものであり、門外不出とされている。周年栽培の実現のため、さまざまな作型に対応できるように多様化してきた経緯がある。
東京都中央卸売市場では、わけぎの分類の中にわけねぎなどを含んでいる。その月別入荷実績(平成28年)を見ると、埼玉県、千葉県、静岡県を中心に通年、安定した数量が入荷しており、2月から6月にかけては群馬産も入荷する。冬場の12月に広島産が若干入荷する以外は関東近郊産地で占められている。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成28年)を見ると、ひな祭り需要に向けた2月、3月がピークとなり、4月以降は減少し、7~8月の夏場に底となり、9月に増加に転じ冬に向けて多くなる。産地としては、広島県が大きなウェイトを占めるが4月から6月には徳島産などもみられる。
大阪中央卸売市場におけるわけぎの価格(平成29年)は、1キログラム当たり511~1324円(年平均937円)の幅で推移している。29年11月~12月の高騰は、10月の多雨に加え12月の低温から生育が停滞したこと、また、野菜全般の価格高騰が影響している。
わけぎは、関西圏を中心に出回っている地方色の濃いねぎの一種である。古くから食されてきたが、昭和50年代後半から葉ねぎ類の需要が増加した中で、調理方法としては酢味噌和え(ぬた)で食べられることが多いことや産地が限られていることから生産量が大きく減少しているものの、最近、広島県ではレストランでのわけぎ料理の提供や「わけぎかまぼこ」などの販売が開始されている。