みつばは、にんじんやパセリなどと同じセリ科の植物で、数少ない日本原産の野菜である。1本の茎に3枚ずつ葉がつくことから、この名前がある。古来から、至る所の湿地などに自生が認められ、山村などでいわゆる野草として利用されてきた。野菜として栽培され始めたのは江戸時代といわれている。
独特な香りをもつみつばは、露地栽培や水耕栽培で密生させて作る、葉柄が全体に青い「糸みつば(青みつば)」、軟化栽培して根を切り取った「切りみつば(白みつば)」、根に土寄せして根付きのまま出荷する「根みつば」の3種類に大別される。
現在出回っているみつばの主流は、水耕栽培の糸みつばである。平成28年の東京都中央卸売市場の取扱高を見ると、糸みつば1820トン(89.1%)、切りみつば48トン(2.4%)、根みつば174トン(8.5%)となっている。生産量が多く価格も比較的手頃な糸みつばは、家庭用として店頭で見かけることが多いが、切りみつばや根みつばは外食などの業務用として使われることが多い。
平成28年の作付面積は、979ヘクタール(前年比95.0%)と、前年よりやや減少した。
上位5県では、
●茨城県193ヘクタール(同 78.1%)
●千葉県161ヘクタール(同 99.4%)
●愛知県106ヘクタール(同 98.1%)
●静岡県82ヘクタール(同100.0%)
●大分県62ヘクタール(同100.0%)
となっている。
28年の出荷量は、1万4300トン(前年比97.9%)と、前年よりわずかに減少した。
上位5県では、
●千葉県2630トン(同 97.0%)
●愛知県2440トン(同 97.2%)
●茨城県1530トン(同 91.6%)
●埼玉県1410トン(同107.6%)
●静岡県1250トン(同100.0%)
となっている。
出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、埼玉県の2.53トンが最も多く、次いで愛知県の2.38トン、千葉県の1.73トンと続いている。その他の府県で多いのは、大阪府の2.29トン、奈良県の2.05トンであり、全国平均は1.56トンとなっている。
出荷量の多い産地の中で、愛知県や埼玉県、静岡県、全国7位の大阪府などは、水耕栽培の糸みつばを主力とする産地といえる。千葉県や茨城県は、水耕栽培の糸みつばもあるが、切りみつばや根みつばの産地でもある。
主産地で多く作付けされている品種は、「先覚」「柳川2号」である。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成28年)を見ると、12月が最も多く、次に1月から4月が比較的多い。5月から9月の夏場は少なく、10月以降に増加傾向となる。各月とも千葉産が全体の40%以上を占めており、茨城産や埼玉産、静岡産など関東近在産地からの入荷が多い。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成28年)を見ると、東京と同様に12月の入荷が最も多く、それ以外の月は60~70トン台に平準化されている。各月とも大分産、三重産、愛知産および大阪産の入荷が多く、この4府県の占める割合が90%以上となっている。
東京都中央卸売市場における糸みつばの価格(平成28年)は、1キログラム当たり338~1098円(年平均567円)の幅で推移している。年による違いはあるものの、1月から6月ごろまでは下げ基調で推移し、7月から9月ごろにかけて上げ基調に転ずる。その後、需要期である12月に最高値となる傾向にある。
緑黄色野菜であるみつばはカロテンが豊富で、3種類のみつばの中では糸みつばに最も多く含まれている。また、3種類ともにカリウム、カルシウム、鉄などのミネラルが豊富であり、ビタミンC・E・Kなども含んでいる。独特の香り成分には、食欲増進や精神鎮静などの効果があるといわれている。
さわやかな香りとみずみずしい緑、シャキッとした歯ごたえのみつばは、日本料理を引き立てる日本古来のハーブである。お吸物や茶わん蒸し、雑煮などに入れて香りを味わったり、おひたしやあえ物などで食感を楽しむなど、もっと日々の食事に取り入れたい野菜である。