しゅんぎくは、さわやかな香りとシャキシャキとした食感、鮮やかな緑が好まれ、鍋料理の定番として親しまれている野菜である。しゅんぎくの原産地は地中海沿岸といわれ、ヨーロッパで栽培されていた観賞用の「ハナゾノシュンギク」が、東アジアで野菜用として改良されたものと考えられている。
日本には、室町時代に中国を経て渡来し、江戸時代末期ごろから西日本を中心に栽培されるようになった。関東地方へと栽培が広まったのは、第二次世界大戦後のことである。なお、欧米人はキクの香りを好まないため食用とはせず、観賞用の植物として栽培している。
しゅんぎくは鮮度が落ちやすいため、運送事情の影響を受けやすい野菜である。近年は、収穫から店頭に並ぶまで一貫して低温に保つ「コールドチェーン」によって流通させることも多く、より鮮度の高い良質なしゅんぎくが消費者に届けられている。
平成28年の作付面積は、1960ヘクタール(前年比98.0%)と、前年よりわずかに減少した。
上位6府県では、
●大阪府198ヘクタール(同 96.6%)
●千葉県180ヘクタール(同100.0%)
●福岡県164ヘクタール(同100.6%)
●群馬県127ヘクタール(同100.8%)
●茨城県115ヘクタール(同100.0%)
●兵庫県115ヘクタール(同 97.5%)
となっている。
28年の出荷量は、2万4200トン(前年比94.9%)と、前年よりやや減少した。
上位5府県では、
●千葉県3430トン(同 96.1%)
●大阪府3390トン(同 96.0%)
●茨城県2010トン(同 94.8%)
●福岡県2010トン(同 96.2%)
●群馬県1740トン(同 98.3%)
となっている。
出荷量上位5府県について、10アール当たりの収量を見ると、茨城県の2.19トンが最も多く、次いで千葉県の2.17トン、大阪府の1.80トンと続いている。その他の県で多いのは、栃木県の2.57トン、愛知県の2.04トンであり、全国平均は1.53トンとなっている。
しゅんぎくは、葉の大きさや切れ込み方により、大葉種、中葉種、小葉種に大別される。さらに中葉種は株の形状により、株立ち型と株張り型に分かれる。大葉種は葉が大きく、切れ込みの浅い丸い形が特徴で、四国・九州地方を中心に出回っている。中葉種の株立ち型は、茎が立ち上がって分枝するため、伸張した茎を摘み取って出荷するもので、関東を中心に出回っている。中葉種の株張り型は、茎が立ち上がらず株が根元から横に張って生育するため、根付きのまま、または根元から切って出荷するもので、主に関西地方で出回っている。
主産地で多く作付けされている品種のうち、「さとゆたか」は中葉種の株立ち型であり、「冬の精」は中葉種の株張り型である。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成28年)を見ると、周年で出回っているものの、需要が多くなる1月から3月、11月から12月が主な入荷時期となっている。千葉産や栃木産を主体に、群馬産や茨城産など関東近県からの入荷が多いが、夏場は岩手産や青森産などの東北産も入荷している。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成28年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に、冬場を中心とした入荷となっている。1年を通して関西の主産地である大阪産の入荷が多く、和歌山産や福岡産のほか、岐阜産、京都産なども入荷している。
東京都中央卸売市場におけるしゅんぎくの価格(平成28年)は、1キログラム当たり501~1749円(年平均679円)の幅で推移している。天候などの影響で年によって違いはあるものの、入荷量の少ない8月や9月に高値となり、その後低下するが、12月や1月には鍋物需要などで上昇に転じている。
独特の香りが特徴のしゅんぎくは、栄養価が高い緑黄色野菜のひとつである。体内でビタミンAに変わるカロテンは、ほうれんそうやこまつなよりも多く含まれ、皮膚や粘膜、目の健康を保つほか、風邪の予防に効果があるといわれている。また、造血作用があるといわれている葉酸や高血圧の予防に効果的なカリウム、ビタミンE、カルシウム、鉄など、ビタミンやミネラルを豊富に含んでいる。
肉などのくさみを和らげるしゅんぎくは、すき焼きはもちろんのこと、定番である鍋料理や湯豆腐のほか、おひたし、ごま和え、サラダなど、さまざまな料理に活用できる。寒さに向かうこれからの季節に、鍋料理などでたっぷりと使いたい野菜である。