にんにくの原産地は中央アジアといわれ、紀元前3200年ごろには古代エジプトで栽培されていた。当時は薬用などとして使用され、ピラミッド建設時の労働者には、たまねぎとともに強壮剤として重宝されていたといわれている。
日本には奈良時代に渡来したが、その臭いが好まれなかったため食用とはされず、薬用として栽培されていたようである。食用として広まったのは第2次世界大戦後のことであり、食の洋風化に伴い、栄養価の高い香辛料としてさまざまな料理に使われている。
世界のにんにく生産の大半を中国が占めており、日本にも大量に輸出されている。卸売市場での取扱高は国内産と中国産がおおよそ半分ずつを占め、国内産では青森県の出荷量が群を抜いている。
平成27年の作付面積は、2330ヘクタール(前年比100.9%)と、前年よりわずかに増加した。
上位5道県では、
●青森県1350ヘクタール(同99.3%)
●香川県95ヘクタール(同99.0%)
●北海道92ヘクタール(同137.3%)(注)
●宮崎県70ヘクタール(同100.0%)
●岩手県60ヘクタール(同96.8%)
となっている。
注:北海道の前年比は、平成25年との比較である。
27年の出荷量は、1万4300トン(前年比102.1%)と、前年よりわずかに増加した。
上位5道県では、
●青森県9980トン(同102.6%)
●香川県580トン(同89.9%)
●宮崎県467トン(同91.4%)
●北海道460トン(同172.3%)(注)
●大分県213トン(同90.5%)
となっている。
注:北海道の前年比は、平成25年との比較である。
出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、青森県の1.02トンが最も多く、次いで宮崎県の0.70トン、香川県の0.68トンと続いている。その他の県で多いのは、徳島県(0.93トン)、和歌山県(0.85トン)であり、全国平均は0.88トンとなっている。
にんにくは、寒地栽培の品種と暖地栽培の品種とに分けられる。寒地栽培の品種は青森県や北海道などで作付けされており、ホワイト六片、福地ホワイトなどがある。これらは、中身が6片に分かれていて粒が大きいという特徴を持つ。暖地栽培の品種は香川県、宮崎県、大分県などで作付けされ、上海早生などがある。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、中国産と青森産が主体となり、周年出荷されている。中でも中国産は、12月を除くすべての月で入荷量第1位となっている。5月から7月にかけては、香川産の入荷が目立つ。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に青森産と中国産が主体となって周年出荷されているが、3月から6月までを除き、青森産がトップとなっている。また、5月を除き、青森産と中国産とで90%以上を占めている。
東京都中央卸売市場の価格(平成28年)を見ると、国内産にんにくは1キログラム当たり1263~2497円(年平均1677円)、海外産にんにくは1キログラム当たり303~414円(年平均364円)の幅で推移している。国内産と海外産とでは、4~6倍の価格差がある。
にんにくの輸入量を見ると、加工や冷凍に比べて生鮮が多く、平成28年は生鮮2万597トン(全体の72.0%)、加工6228トン(同21.8%)、冷凍1797トン(同6.3%)となっている。それぞれの輸入量は安定的に推移している。また、冷凍では、にんにくの球(鱗茎類)のほかに、にんにくの芽など(葉・花・茎菜類)が輸入されている。
28年の国別輸入量を見ると、いずれも中国からの輸入が圧倒的に多い。
にんにくの供給量(収穫量+輸入量)を見ると、4万トン台で比較的安定しており、増加傾向にある。
独特の香りを持つにんにくは、パスタや肉料理、炒め物などに欠かせない。また、糖質、ビタミンB1などを豊富に含んでおり、栄養面での効果も注目されている。にんにく特有の強い香りのもとはアリシンという成分で、強い抗菌作用や抗酸化作用を持ち、風邪やがんの予防などに効果的であると言われている。さらに、アリシンはビタミンB1と結合するとアリチアミンとなり、ビタミンB1の吸収を高めるとともに、体内での持続性が良いと言われている。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えるため、にんにくはスタミナ増強に効果的であると言える。さらに、スコルジニンという成分も含まれており、エネルギー代謝を活発にして肥満を防ぐ作用や、血行を高めて冷え性を改善する作用がある。
パンチのある風味が特徴のにんにくは、疲労回復などに効果的なスタミナ野菜である。