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トマトの需給動向調査情報部

トマトは、栄養豊かな野菜として広く料理に使われ、世界で最も愛されている野菜の一つといわれている。南米にあるアンデス山脈の西側のペルー、エクアドル、ボリビアにかけての高原が原産地といわれ、コロンブスの新大陸発見によってヨーロッパ各地へと伝わった。当初はもっぱら観賞植物として栽培され、食用とされるようになったのは19世紀になってからのことである。イタリアやギリシャを中心に、いろいろなトマト料理や調味料的加工品が作られるようになり、世界的な野菜となっていった。

オランダ人によって日本に伝わったのは江戸時代初期で、当時は観賞用や薬用として用いられた。明治時代になり、米国から品種改良されたトマトが伝わったが、酸味が強く香りもきつかったため、当時の食生活に根づくことはなかった。その後、戦後の食の洋風化とともに、栽培技術が発展して品種改良も進んだ結果、消費量は急速に拡大した。

トマトは、果皮の色によって桃色系トマト、赤色系トマト、黄色系トマトのつに大別される。桃色系トマトは、甘みに富み酸味やトマト臭が少なく、生食用に利用される。赤色系および黄色系は酸味と甘みが強く、ジュースや加熱調理用に使われる。日本では生食が中心のため、桃色系が主流となっている。特に、完熟させてから収穫できるように品種改良された桃色系トマトである完熟系大玉トマトが、現在では最も多く出回っている。

作付面積・出荷量・単収の推移

平成27年の作付面積は、万2100ヘクタール(前年比100.0)と、前年と同様である。

上位道県では、

●熊本県1250ヘクタール(同103.3%)

●茨城県937ヘクタール(99.7%)

●北海道879ヘクタール(同101.0%)

●千葉県826ヘクタール(99.5%)

●愛知県511ヘクタール(98.3%)

となっている。

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27年の出荷量は、65万3400トン(前年比98.2)と、前年よりわずかに減少した。

上位道県では、

●熊本県12万2100トン(同100.2%)

●北海道万6700トン(97.6%)

●茨城県万4100トン(96.9%)

●千葉県万8800トン(93.7%)

●愛知県万8200トン(89.0%)

となっている。

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出荷量上位道県について、10アール当たりの収量を見ると、熊本県の10.10トンが最も多く、次いで愛知県の7.95トン、北海道の7.02トンと続いている。その他の県で多いのは、栃木県(9.42トン)、福岡県(8.83トン)であり、全国平均は6.01トンとなっている。

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作付けされている主な品種等

量販店などには、通常、ミニトマトも含めて20種から25種のトマトが並ぶといわれている。そうした消費者のさまざまな好みや作型、栽培環境などに応じて、トマトの品種は多数存在する。また、特定の品種ではないが、水やりを抑えるなど特別な栽培法で甘みを引き出したフルーツトマトが注目を集めている。

比較的多くの産地で作付けされているりんか409は、トマトモザイクウイルスや萎凋病などへの耐病性やネマトーダへの耐虫性を持ち、着果性の良い品種である。

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東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、年間を通じて他の品目より比較的多くの産地から入荷している。冬から春にかけては熊本産を中心に栃木産、愛知産などの入荷が見られ、夏から秋にかけては北海道産や青森産などが中心となっている。

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大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、東京都中央卸売市場と比べて入荷トップ産地の全体に占める割合が多い。冬から春にかけては熊本産が全体の60以上を占め、月から月にかけては北海道産が40前後を占めている。

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東京都中央卸売市場における価格の推移

東京都中央卸売市場の価格(平成27年)を見ると、トマトはキログラム当たり292514円(年平均371円)、ミニトマトはキログラム当たり551930円(年平均683円)の幅で推移している。年による差はあるものの、月や月から下げ基調が続いて月には最安値となり、その後に上昇する傾向にある。

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輸入量の推移

トマトの輸入量を見ると、生鮮に比べて加工品が圧倒的に多く、平成28年は生鮮の7383トンに対し、加工品は23万287トンである。生鮮トマトの輸入量は、25年をピークに減少傾向にあったが28年は増加に転じており、一定の水準を維持している。また、トマト加工品は24年をピークに漸減している。

28年の国別輸入量を見ると、生鮮では韓国が50以上、ニュージーランドが約16を占めている。加工品ではイタリアが40以上を占め、米国、中国と続いている。

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消費の動向

トマトの人当たり年間購入量は、トマトブームの影響もあって平成23年から増加傾向にあり、25年以降は4000グラム台と、安定した推移を見せている。

トマトはそのまま生食でき、一度にたくさん食べられるため、栄養分を摂取しやすい野菜である。トマトの赤色の成分はリコピンで、活性酸素を除去する抗酸化作用があり、老化の進行を抑制するほか、がんや動脈硬化を予防する働きがある。リコピンは熱に強く、煮たり焼いたりしても抗酸化力が低下しにくい。また、コラーゲンの生成を促し美肌効果が期待できるビタミンや、体内のナトリウムの排出を促すカリウムも含んでいる。さらに、酸味の主な成分であるクエン酸は、食欲を増進させる働きがあるため、食欲の低下しがちな暑い時期に取り入れると効果的である。

さまざまな効能を持つトマトは、生食はもちろん、いろいろな調理にも上手に使い、健康増進に役立てたい野菜である。

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