調査情報部 調査情報第二課
1)プロフィール
平安時代の有名な随筆『枕草子』の中に「あてなるもの…(中略)いとうつくしき稚児のいちごなど食いたる(上品なもの…とてもかわいい幼子がいちごなどを食べている様子)」と今から千年以上前の文献に“いちご”という言葉が出てくるように、いちごは、大昔から日本で食べられていました。しかし、この時代のいちごは、木いちごのような野生種であり、今、私たちが食べているものとは違います。現在の形状のいちごは、大航海時代にアメリカ大陸の野生種がヨーロッパに持ち込まれ、オランダやイギリスで交雑され、江戸時代末期にオランダ人により長崎に運ばれてきたと言われています。
ハウス栽培の様子
近年普及しつつある、床を1mほど上げた「高床栽培」の様子。立ったままの作業が可能となり、収穫作業が軽減されました。
日本では、1899年福羽逸人博士により“福羽”という品種が育成され、多くの日本のいちご品種の基礎となりました。その後、高度経済成長期のハウス栽培の普及や品種改良により生産量は増加し、昭和40年代以降日本の食卓でおなじみとなりました。その頃は4月~5月が出荷の最盛期でしたが、ハウス栽培により大幅に出荷時期は早まり、今ではすっかり冬の顔となりました。クリスマスケーキやアイスクリームなど業務用の需要も多く、日本のいちごの消費量は世界でもトップクラスです。
根に培養液を与えて育てる養液栽培
2)品種と種類
3)主な産地
いちごの収穫量は、198,200トン(平成16年産)です。都道府県別にみた収穫量の割合は、栃木県が全国の15%を占め、次いで福岡県10%、熊本県7%となっており、この3県で全国の約3割を占めています。
□「いちご」の月別入荷量および県別割合(平成16年)
資料:東京都中央卸売市場年報、大阪府中央卸売市場年報、大阪市中央卸売市場年報
注:( )はその月の県別出荷割合
〇世界のいちご
[世界のいちごの生産概況(2005年)※]
2005年の世界のいちごの生産量は、3,522千トンです。最も多いのは、アメリカで全体の28%、次いでスペイン、ロシア連邦と続き、日本は韓国と同率4位の6%を占めています。日本は、クリスマス商戦などでいちごの需要が多くなる時期には、アメリカや韓国から生鮮いちごを輸入しています。
日本では、生で食べるのが主流ですが、アメリカやヨーロッパでは、ジャムにして食べられることが多いようです。
※FAOSTAT 2006.2.5のデータによる
アメリカのいちごのほ場露地栽培が主流です。
4)栄養
いちごといえば、ビタミンCの含有量の多さは野菜の中でもトップクラスです。100gあたり含まれる量は62ミリグラム、これはみかんの約2倍に相当します。10粒ほど食べれば1日に必要な量が補える計算になります。ビタミンCは免疫力を高める効果があります。いちごの旬は、風邪が流行る冬場ですから、やはり生で食べることをおすすめします。その他、いちごには、食物繊維の一つペクチンや成長発育に必要な葉酸が含まれていることも特徴です。
5訂 日本食品成分表 可食部100g当たり
※酸化防止用として添加品あり。
5)選び方と保存方法
○選び方
1 色が濃く、つやのあるものを選びましょう。
2 ヘタの緑が濃く、しおれていないものを選びましょう。
3 果肉の硬さは品種により違いますので、用途に応じて選びましょう。パック詰のものは、底から見てつぶれていないか確認しましょう。
○保存方法
いちごは水気を嫌うので、洗わず冷蔵庫で保存し、2~3日で食べきりましょう。ヘタをとって洗ってしまうと、せっかくのビタミンCが水に溶けてしまいます。ヘタをつけたまま、ざるでさっと洗うのが良いでしょう。また、冷凍保存する場合は、一粒ずつ離して冷凍庫へ。凍ったらポリ袋へいれ保存すれば、風味も損なわれにくく、使いやすいでしょう。