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今月の野菜


えだまめ
緑がすがすがしい夏らしさを演出するえだまめは、ビールの友として欠かせない、日本の夏の風物詩です。

調査情報部 調査情報第二課



学名:Glycine max
英名:soybean
仏名:soja
日本での呼び名:枝豆
植物学上の分類:マメ科
えだまめの花

1)プロフィール


 えだまめは、大豆の莢つきを若取りしたもの、つまり、未成熟の大豆です。“えだまめ”という名前の由来は、その名のとおり枝付きのまま茹でて食べたことからこう呼ばれています。未成熟の大豆を食べるという食習慣は、日本独自のことのようで、最近は、日本食ブームや冷凍品の普及により海外でも食べられるようになりましたが、まだごくわずかです。

 大豆の原産地は、中国の華北地方から東北地方、または東南アジアとされています。中国では、大豆を紀元前から食用として栽培していました。日本への渡来の時期ははっきりしていませんが、「日本書紀」や「古事記」に大豆の栽培の記載がみられることから、弥生時代に稲作と一緒に朝鮮半島を経由して伝わったと考えられます。さらに、未成熟な大豆、つまりえだまめとして食べ始めた時期も定かではありません。しかし、江戸時代の中期の文献に、「大豆を莢葉の柔らかいうちから食べた」、「夏にえだまめ売りの姿が町でみられた」、などの内容が書かれた文が記述されていることから、その頃にはえだまめを食べる習慣が日本にはあったと考えられます。


その日のうちに食卓に届くよう、夜明け前に収穫されるえだまめ

 えだまめは、未成熟の大豆といいましたが、品種改良によってえだまめに適した専用種も開発されました。食卓に莢ごと上がるえだまめに求められることは、莢が密生していること、莢数が多いこと、食味が良いこと、子実が大きなものなどです。さらに、えだまめの莢の色については、鮮やかな緑色が好まれます。えだまめとして、市場に出回っている品種は、それらを反映したものとなっています。“奥原早生”や“白鳥”などは、莢の周りを褐色の毛茸(細かい産毛のようなもの)で包まれた品種であり、“サッポロミドリ”や“三河島”などは白色の毛茸で包まれた品種です。また、大豆の一種である茶豆や黒豆も独特の風味が好まれて、えだまめとして食べられるようになりました。茶豆も黒豆も成熟する前は、莢も子実も緑色です。これらは、古くから特定の産地で需要があったものですが、近年、全国的に販売されるようになりました。主なものに、山形の“だだちゃ豆”や京都周辺の“丹波黒”などがあります。これらも、えだまめ用として収穫せず、そのまま生育させていけば、いずれ大豆になります。

 えだまめは、土性についての適応性は広く、ほとんどの土壌で栽培できます。ただし、乾燥しやすい畑は、着莢率が落ちてしまうため、水分に富み、やや重い土での栽培に適しているといえます。マメ科の植物の特徴として、自ら土中の窒素を固定して自分の肥料分として利用することができるため、多肥栽培をした後の畑での栽培には気をつける必要があります。

 えだまめの味は、鮮度が決め手となります。収穫後、時間が経つにつれ、豆の中の糖分が少なくなっていくので、その日のうちに食卓に届くよう、収穫は夜明け前に行い出荷するところが多いようです。えだまめの収穫は、需要の多い夏場に合わせ行いますが、最近は、居酒屋などでのおつまみとして一年中需要があるため、海外からの冷凍えだまめも出回っています。冷凍えだまめは、収穫後すぐに茹でて冷凍するため、比較的糖分が失われることはありません。


2)品種と種類




3)主な産地

 日本国内のえだまめの収穫量は、7万3,100トン(平成16年産)です。主産地では、夏の需要に合わせ5月頃から出荷します。トンネル栽培のものから出荷し始め、後半になると露地ものを出荷します。えだまめは、低温には比較的強く8℃で発芽し、10℃でも生育しますが、生育適温は20℃~25℃です。平成16年産の収穫量は、千葉県、山形県、新潟県、埼玉県、群馬県が多く、この5県で全体の5割弱を占めます。

□東京中央卸売市場における月別入荷割合(平成16年)

 
□大阪中央卸売市場における月別入荷割合(平成16年)


○ 世界のえだまめ
 えだまめを食べる習慣は、世界にほとんどありません。そのため、中国や台湾、タイでは主に日本への輸出用にえだまめを栽培しています。日本のえだまめが出回る前の3月から5月にかけて、主に台湾から生鮮のえだまめが輸入されますが、あまり多くありません。(2004年の輸入実績は、約1,400トン。)しかし、日本では1年中えだまめの需要があります。鮮度が重要なえだまめは、冷凍えだまめの形態で日本に輸入されることがほとんどです。主な輸入相手国は、台湾、中国、タイ、インドネシアで、2004年の冷凍えだまめの輸入実績は約70,000トンでした。収穫されたえだまめは、その日のうちに冷凍加工され、日本に輸出されます。


中国山東省のえだまめのほ場


4)栄養
 えだまめは、未成熟な大豆ですから、豆と野菜の両方の栄養的特徴を持った野菜といえます。
 まず、「畑の肉」といわれる大豆同様、エネルギー、脂質、良質なたんぱく質に富んでいます。100g中含まれるたんぱく質は11.7%で、これは卵の12.3%に近い数値です。また、大豆には含まれないビタミンAやCを含んでいることは特徴的です。その他、ビタミンB類も多く含まれています。特にビタミンB1は、白米やパン、肉や魚などのエネルギー源(糖)を代謝し、エネルギーに変える働きを持ちます。そうめんやアイスクリームなど冷たいものを食べる機会の多い夏場は、胃腸の消化機能が低下してしまいがちであるため、ビタミンB1の摂取は、疲労回復、夏バテ防止に重要となります。また、えだまめのたんぱく質の中に含まれるメチオニンは、ビタミンAやビタミンB1、ビタミンCとともに、アルコールの分解を助け、肝臓の負担を軽くします。つまり、“ビールの友としてのえだまめ”は、非常に理にかなったことなのです。それ以外にも、えだまめに多く含まれる食物繊維は便秘の改善に、カリウムは高血圧の原因となるナトリウム(塩分)の排出を助け、利尿作用を促す作用があります。
 また、えだまめは、莢ごと茹でますので、茹でてもそれほど栄養成分が変わることはありません。

5訂 日本食品成分表 可食部100g当たり



5)選び方と保存方法
○選び方
1 枝つきのえだまめは、鮮度が良く日持ちがするため、できるだけ枝つきのえだまめをお奨めします。枝つきの場合は、枝の節と節の間隔が短く、莢が密生しているものを選びましょう。
2 莢の緑色が濃く鮮やかで、莢がピンと張りしっかり中身が詰まっているもの、均等に豆が入っているものは良いえだまめの証拠です。



○保存方法
 とにかく鮮度が重要なえだまめは、できるだけ早めに食べることが重要です。生で保存したい場合は、できるだけ低温で、また、乾燥を避けて保存しましょう。長く保存したい場合は、塩水で硬めに茹でてから冷ましたものを、ポリ袋などに入れ、冷凍して保存しましょう。



○まめ知識
<おいしいえだまめの茹で方>
 えだまめを茹でる前に莢を塩でもみ、たっぷりのお湯で茹でましょう。茹で上がったえだまめは、ざるに移しすばやく冷やします。早く冷ますことで、余熱による茹ですぎや莢の色が変わることも防げます。料理屋さんでは、冷房の風を当てたり、氷水にさっと通すこともするそうです。
 塩茹でに飽きたら、豆ご飯やかき揚げにしてもおいしく食べられます。また、宮城県や山形県には、えだまめをすりつぶし、砂糖で味をつけた“ずんだ”という餡が、餅や団子の餡として親しまれています。



産地紹介
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