調査情報部 調査情報第二課
1)プロフィール
ほうれんそうの原産地は、コーカサスからイランあたりの西アジアで、イスラム教の広がりに伴い、東西に伝わりました。東は、シルクロードを経て、中国へ渡ったのが「東洋種」、西は、北アフリカ、ヨーロッパ経由でアメリカへ渡ったのが「西洋種」です。
日本に伝わったのは、「東洋種」が江戸時代初期、「西洋種」が江戸時代末期だと言われています。大きな切れ込みのある葉の「東洋種」は、昔からよく栽培されていましたが、現在は甘みが強い東洋種と、多収量で抽台しにくい西洋種をかけあわせた一代雑種が主流です。
「ほうれんそう」の語源は、中国語で「ペルシャ」(現在のイラン)を、「ほうれん」と呼ぶところからきています。ほうれんそうを食べて元気もりもりになるアメリカ漫画の「ポパイ」は、菜食家協会が菜食PRのために誕生させたもので、最初は、ほうれんそうの缶詰ではなく、キャベツ丸ごと1個を食べている絵だったそうです。
イタリア・フィレンツェ(英語読みだと「フローレンス」)の名門メディチ家からフランスへ嫁いだ女性が大のほうれんそう好きで、今でも「フローレンス風」と名のつく料理には必ずほうれんそうが入っています。
2)品種と種類
3)主な産地
ほうれんそうの収穫量は31万トン(平成15年産)です。ほうれんそうの生育適温は15~20℃で冷涼な気候を好みます。かつては都市近郊で夏場以外の期間に生産されていましたが、近年は東洋種と西洋種の一代雑種を冷涼な地域で雨除けハウスを利用し、夏場でも栽培するようになり周年供給体制ができています。生長が早い夏場では、種まきから収穫まで25日から30日程度と短期間であることから、雨除けハウスの中で4、5回作付けされています。
□東京都中央卸売市場における「ほうれんそう」の月別入荷割合及び県別割合(平成15年)
□大阪府中央卸売市場における「ほうれんそう」の月別入荷割合及び県別割合(平成15年)
資料:東京都中央卸売市場年報、大阪府中央卸売市場年報、大阪市中央卸売市場年報
注:( )はその月の県別出荷割合
○世界のほうれんそう【世界のほうれんそうの生産概況(2003年)※】
※FAO『FAOSTAT Agricultual Production』
2005.2.8現在のデータによる。
世界のほうれんそうの生産量は12,619千tです。中国が86%ととび抜けて多く、次いでアメリカ、日本は第3位です。日本は中国から冷凍ほうれんそうを輸入しています。2001年は輸入数量がピークとなり約50千tが輸入されました。しかし、残留農薬の問題により2002年、2003年は大幅に減少しました。このため、中国では、輸出農産物の検査管理の厳しくし、2004年は約15千tと、また増加傾向です。
4)栄養
ほうれんそうは、野菜の中で鉄分が最も多く、鉄分の吸収を助けるビタミンCも豊富に含まれています。その他にも、カロテン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンCなどビタミン類も多く、さらに葉酸、食物繊維も豊富なので、非常に栄養価の高い野菜といえるでしょう。
また、ほうれんそうに含まれるシュウ酸は結石の原因になるといわれていますが、ゆでて水にさらせば溶け出ますので、よほど大量に食べなければ大丈夫です。
5)選び方と保存方法
○選び方
1.葉がみずみずしくて、つやがあり、新鮮なもの。
2.茎は太すぎず、しっかりしているもの。
3.根が濃いピンクのものは、味の良い東洋種の性質を備えています。