調査情報部 調査情報第二課
1)プロフィール
○原産地と日本への渡来
なすはインドが原産といわれ、もともと熱帯性の植物なので高温を好みます。
日本ヘは、中国から渡来し、8世紀の奈良時代には栽培されていました。当時の正倉院文書に「なすを献上した」との記載があります。「なす」というよび名は、夏にとれる野菜「夏の実(なつのみ)から「なすび」になり、いつしか「なす」になったという説が有力です。
「一富士ニ鷹三なすび」、「親の意見と茄子の花は千に一つの無駄は無い」など色々なことわざや詩に詠まれており、昔から身近な野菜であったことが分かります。江戸時代にはすでに徳川幕府が駿府になすの菜園をつくり、初夏になると早飛脚で江戸に送らせたという話もあり、今の促成栽培の前身を思わせます。
このように、昔からなじみ深いなすは、各地に在来種が誕生しました。現在は、栽培が容易で色がよい中長なすが広く栽培されていますが、かつては、それぞれの土地で特徴のあるなすが栽培されていました。現在でも丸なすなどは秋田県、山形県、新潟県、福島県、京都府などに残っていて、京都の"
○主な種類と特徴
2)おもな産地
○なすの平成15年産の作付面積は12,000ha、収穫量395,400t、出荷量292,300tです。前年対比で97%とやや減少しました。作付面積の減少は、労働力不足による規模縮小等のためです。平成15年産で作付面積の上位3県は、新潟県731ha、群馬県631ha、秋田県603ha、収穫量では、高知県43,200t、熊本県29,300t、福岡県28,100tです。作付面積と収穫量で県が違うのは、収穫量の多い県では、施設栽培による作型で収穫期間が長いため、単収が多いからです。
□東京都中央卸売市場におけるなすの月別県別入荷量及び県別割合(平成15年)
□大阪府中央卸売市場におけるなすの月別県別入荷量及び県別割合(平成15年)
○世界のなすの生産状況
FAOの2003年のデータで、世界のなす(なす属に含まれるもの全て)の生産量を見てみると、中国が1位です。次いで、インド、トルコ、エジプトで、日本は第4位です。
3)栄養
○なすのきれいな紫色はアントシアニン類の色素である「ナスニン」が含まれているからです。アントシアニン類は赤ワインと同じ「ポリフェノール類」ですから、動脈硬化や発ガンの予防、老化や高血圧の防止等に効果があるといわれています。
色素の「ナスニン」は鉄などの金属と結合すると安定します。漬物などに古いくぎをいれておくと、鮮やかな紫色をとどめておくことができます。
○食品成分表
4)選び方と保存方法
○選び方
1.実に張りがあり、皮がつやつやしてきれいなものが新鮮です。
2.なすの紫色が濃いものを選びましょう。なすの色は日光にあたると濃くなります。色が濃いのは、たくさんの日光にあたった証拠です。
3.へたの切り口が新しく、みずみずしいものは収穫したてです。
4.へたのとげがチクチクと痛いくらいのものは新鮮です。
5.ずっしりと重いほうが中の果肉が詰まっている証拠です。見た目より軽いものは中がスカスカしているものかもしれませんので要注意。
○保存方法
なすは低温が苦手です。冷やしすぎに注意しましょう。また、風に当ると水分が蒸発してしなびてきてしまいます。新聞紙で巻いて、ポリ袋にいれて冷蔵室で保管して下さい。なるべく早めに食べましょう。
○利用部位と食べ方
なすの食用部分は果実です。あえもの、炒めもの、揚げもの、焼きもの、漬物と色々な料理法で楽しめます。
<お詫び>
・4月号で掲載しました「世界のキャベツの生産状況」のFAOの数値はキャベツ以外の「アブラナ属(はくさい等)」が全て含まれた数値となっています。説明が不足していたことをお詫びします。