調査情報部 調査情報第二課
1)プロフィール
○原産地と日本への渡来
トマトの原産地はアンデスの高地です。そこから中央アメリカ、メキシコへ伝えられ、その後、地中海へと伝わりました。トマトが作物として発達を遂げたのはヨーロッパに伝わった時です。
18世紀に北アメリカで品種の改良が進み、病気に強く、果実の堅い品種が生まれました。東洋にはポルトガル人により伝えられました。日本へは18世紀の初頭に伝わりましたが、当時は鑑賞用でした。日本で食用として需要が高まったのは20世紀にアメリカの品種が入ってきてからです。
トマトは、生育に強い光が必要で、生育適温は25~26℃です。昼夜の温度差の大きいことを好み、ふるさと南米のアンデスの高地は、きわめて雨の少ない地域だったことを反映してか、雨が多いことを嫌います。日本では、トマトはもともと夏にしか出回らず、消費地の周辺で露地栽培されていました。しかし、食生活が洋風化して、食卓に欠かせない食材となり、周年供給に向けて各地で産地が広がり、冬は暖地、夏は高冷地と産地リレーにより一年中食べられるようになりました。
トマトは栄養的に実り豊かな野菜として広く料理に用いられ、世界でもっとも愛されている野菜の一つです。フランスでの愛称は“愛のりんご”、イタリアでは“黄金のりんご”と呼ばれています。
2)おもな産地
平成14年産のトマトの作付面積はミニトマトも含めて13,300ha、収穫量784,500tです。県別で作付面積が大きいのは、熊本県、茨城県、千葉県、北海道、福島県、愛知県の順番です。夏は北海道や青森県、福島県などの冷涼な地域、冬は熊本県、愛知県、福岡県などの温かい地域で生産されて出荷されます。
○世界のトマトの生産状況
FAOの2003年のデータで、世界のトマトの生産量を見てみると、中国が1位です。次いで、アメリカ、トルコ、インドと続き日本は23位です。
世界的には日本のような桃色系の品種より、赤色系のトマトが多く栽培されており、加工用としてホールトマト、トマトソース、ケッチャップ等の原料として利用されています。
3)栄養
○カロテン、ビタミンCを豊富に含んでいます。
カロテンは抗がん作用、老化防止作用、ビタミンCは免疫力の向上に効果があるといわれています。カロテンは体内でビタミンAに変わります。ビタミンAは皮膚や消化器の粘膜の働きを活発にしてくれます。また、ビタミンAとビタミンCは両方あるとより抗酸化作用が発揮され、両方とも豊富に含まれているトマトは大きな効果が期待できます。
また、リコピンも豊富に含まれています。リコピンは栄養素ではないのですが、近年ビタミンAより抗酸化作用は強力と言われており、トマトの健康食品としての価値が注目されています。
4)選び方と保存方法
○選び方
1.甘くてジューシーなトマトほど持ったときにずっしりと重みが感じられます。手にとって、重みのあるものを選びましょう。
2.全体の色が均一で赤色が濃く、皮にハリがあるものは良く日光に当ったものです。
3.ヘタやガクがピンとしているものが新鮮です。
おいしいトマトはどこが違う?
○保存方法
ポリ袋や密封容器に入れて、冷蔵庫の野菜室に入れます。発泡スチロールの受け皿付きで購入したものは、そのまま入れておけば熟れすぎを防ぎ、4~5日はもちます。
完熟したトマトはデリケートです。皮を傷つけるとそこから痛んでしまいます。傷をつけないようにしましょう。
○利用部位と食べ方
果実を生食もしくは加熱により食します。
トマトは緑黄色野菜で、ビタミンCとビタミンAが豊富です。また、よく食卓にあがり、1度で量を摂れる野菜として高く評価できる食材です。
ヨーロッパには「トマトの時期には下手な料理はない」ということわざがあります。これは、トマトさえ使えば料理は全ておいしくなるということです。