調査情報部 調査情報第二課
1)プロフィール
○原産地と日本への渡来
原産地は中央アジアという説と地中海という説があります。
古代エジプトで栽培され、紀元前33~28世紀の第一王朝時代の壁画にもたまねぎの絵が描かれています。また、ピラミッドを築く労働者にたまねぎとにんにくを食べさせたという記録もあることから、その時代からすでに食用されていたようです。
ギリシャでは紀元前10世紀、ローマでは紀元前5世紀に栽培がされていました。旧約聖書や千夜一夜物語にもたまねぎを食べたり、精力剤にしたりという話がいくつか出てきます。ヨーロッパ一帯に広まったのは16世紀からと言われています。
日本へは、明治時代に北海道開拓使が導入しました。
たまねぎは、耐寒性が強く、低温下でも発育します。熱帯でも土壌条件がよければ育つことから世界中で広く栽培され、食べられています。
食用部分の結球は、日長と温度が関係しています。品種によって、ある一定の日長時間になると結球が始まります。日の長さは温度も関係しており、温度が低いと高いときより長い日長が必要となります。
たまねぎの分類はいくつかありますが、「甘たまねぎ」と「辛たまねぎ」に大別できます。これは、たまねぎに含まれている「硫化アリル」の量により、沢山含まれていれば「辛たまねぎ」、少量であれば「甘たまねぎ」となります。日本で栽培し、食用とされているのは、ほとんど「辛たまねぎ」です。明治時代に政府が積極的に導入したものです。
日本で主に栽培されている「黄たまねぎ」は作型で分類します。
作型による分類は春まき栽培、秋まき栽培が基本で、更に細分化しています。
・春まき栽培…3~4月に播種し、9~10月に収穫、9~翌4月まで出荷する作型。
北海道で採用されている。
・秋まき栽培…9~10月に播種し、5~6月に収穫、5~7月まで出荷する作型。
府県産のたまねぎの作型。
○主な種類と特徴
2)おもな産地
○北海道が日本一の産地です。
日本のたまねぎの総作付面積は平成14年産実績で25,422haです。そのうち、北海道が48%の12,300ha、次いで、佐賀県、兵庫県、愛知県、長崎県と続きます。
北海道は、その他の府県産の産地と違って、播種が3月、収穫が8~10月という春まき栽培を行っています。収穫後、冷蔵貯蔵をして、秋から春先まで出荷を行います。
府県産のたまねぎは秋まき栽培です。北海道とはちょうど逆になり、春先から夏にかけて主に出荷を行っています。春先に店頭に並ぶ府県産の「新たまねぎ」は、辛みが弱く、サラダとして生でも食べられます。
□東京中央卸売市場におけるたまねぎの月別県別入荷割合(平成15年)
□大阪府中央卸売市場におけるたまねぎの月別県別入荷割合(平成15年)
資料:東京都中央卸売市場年報、大阪府中央卸売市場年報
○世界のたまねぎの生産状況
FAOの2003年のデータで、世界のたまねぎの生産量を見てみると、中国が群を抜いて世界生産量の約46%を占めて第1位です。次いで、インド、アメリカ、トルコと続きます。更に、イラン、パキスタンと続き、日本は第8位です。
日本では、たまねぎの利用は加工用や外食用等の業務用の利用が多く、輸入たまねぎとの競合があり、近年中国からの輸入数量が増加しています。日本の作付面積は平成2年の30,200haを境に減少し始めています。
東京都中央卸売市場における2003年の国内産たまねぎの単価は100円、海外産合計は75円、中国産63円、アメリカ産73円となっており、外国産のたまねぎのほうが価格が安くなっています。
3)栄養
○たまねぎには、疲労回復、食欲増進、動脈硬化防止などに効果がある成分が含まれています。辛み成分の硫化アリルはビタミンB1と結合してアリチアミンとなり、ビタミンB1の吸収、保持をよくします。ビタミンB1は疲労回復、食欲不振に効き目がある成分です。また、硫化アリルは動脈硬化の原因となる血栓やコレステロールの代謝を促進し、血栓ができにくくする作用があります。これが「血液サラサラ」に繋がっています。
また、ガンに効能があるという報告もされており、今後の研究に期待がかかっています。
○食品成分表
4)選び方と保存方法