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話題 野菜情報 2026年10月号

お住まいの地域のポテトサラダの味付け傾向は?             ~ポテトサラダの「風味の地域性」~

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キユーピー株式会社 研究開発本部 野菜価値創造部 野菜・惣菜研究チーム 
相羽 孝亮
デリア食品株式会社 商品本部 商品開発部 商品開発課 波多野 由美
商品企画部 商品企画課 高谷 智子

1 はじめに~みんな大好きポテトサラダ~

 日本の食卓におけるばれいしょの調理用途は多岐にわたっており、ばれいしょ特有のなめらかな食感や、ホッとするような優しい味わいによって、家庭料理では欠かせない食材の一つになっています。
 ばれいしょを使った家庭で手作りされるメニューの中で、「ポテトサラダ」は、老若男女を問わず日本の国民食とも言えるほど浸透しており、各家庭でも独自のこだわりがあるほどレシピが多岐にわたっています。
 基本のレシピとしては、熱して火を通し、粗熱を取ったばれいしょに、具材としてきゅうりやにんじん、たまねぎを入れ、マヨネーズをベースとした調味料を混ぜ合わせます。マヨネーズベースの濃厚な味わいと、素材の風味の両方が楽しめるサラダとなっています。また、家庭内だけでなく、レストランや居酒屋においても、バラエティに富んだポテトサラダが提供されるシーンも多くなっています。
 さらに、昨今では共働き世帯が増え、調理に時間をかけられなくなったことにより、量販店やコンビニエンスストアで販売されている惣菜を購入するケースも多くなっています。全国の惣菜売り場において購入される副菜の中でも、ポテトサラダは長年上位にあり、「ポテトサラダ=惣菜売り場で買うメニュー」という認識も浸透しつつあります。
 このようにポテトサラダは、内食・中食・外食のさまざまなシーンで親しまれ、定番料理として日本の食卓に定着していきました。

2 日本でのポテトサラダの広がり

 日本でポテトサラダが広がったルーツは諸説ありますが、中でもロシア料理の「オリヴィエ・サラダ説」が有力と考えられます。ロシアのレストラン「エルミタージュ」のシェフだったリュシアン・オリヴィエが考案した、ばれいしょに蒸した鶏肉、ゆで卵、にんじん、きゅうりを加えてマヨネーズであえたサラダで、ロシアでは名物料理の一つとなっています。この料理を起点として、ばれいしょを使ったサラダが世界に広まり、中東、ヨーロッパでは、現在でも「ロシア風サラダ」という名前でメニューに載っているようです。
 ばれいしょが日本に食用として伝来したといわれるのは江戸時代ですが、当時のばれいしょの味は淡白で、和食に合いにくいという事情があったらしく、料理本に登場するのは1897(明治30)年以降です。その後、大正時代に入り、東京の帝国ホテルで現在の原型となったポテトサラダが考案されました。当時はハイカラで高級な料理だったと考えられますが、第二次世界大戦後に日本人の食生活が大きく変化する中で、一般的なメニューとして少しずつ認知され、学校給食にもキャベツ入りポテトサラダが提供されるようになりました。
 外国で生まれたポテトサラダが、米食中心の日本でこれほど好まれたのはなぜか?その理由の一つが、マヨネーズの存在だと考えられます。卵黄タイプのコクの強さが、日本で長年親しまれてきた調味料のみそやしょうゆのように「ご飯に合う味付け」を作り出していると推測されます。1925(大正14)年に日本で初めて発売されたマヨネーズが日本人に受け入れられ、広く浸透したからこそ「おかずになるポテトサラダ」が生まれ、日本独自の味に進化したと考えられます。
 ポテトサラダが家庭料理として広く浸透し始める中で、74(昭和49)年ごろから惣菜として販売されるようになりました(図1)。当時はばれいしょ、たまねぎ、にんじん、マヨネーズのみで構成され、パンに乗せて食べることを想定した商品でした。
 その後、中食事業の伸長予測の下、キユーピー株式会社が75(昭和50)年に設立したデリア食品株式会社は、今日に至るまでの50年間、ポテトサラダをはじめとする惣菜をお客さまに提供し続けてきました。そして、さらなるポテトサラダの市場活性化に向け、2015年に、10月10日を「ポテトサラダの日」に制定し(図2)、日本の国民食とも言えるポテトサラダの普及に商品だけではない角度からも携わってきました。

タイトル: p003

3 ポテトサラダの地域性に関する調査~皆さまにポテトサラダの楽しさを感じていただきたい~

 ポテトサラダは長年、家庭料理や外食メニューとして、さらにはスーパーなどで販売される惣菜として、進化を遂げながらおいしさが磨かれてきましたが、その中で味付けについては、元来は家庭の味として、各地域の嗜好(しこう)性を反映しているのではないかという認識が、ポテトサラダ業界の中に何となくありました。地域によって味わいや味付けが異なる代表例としては、しょうゆやだし、卵焼きなどが挙げられますが、ポテトサラダはこれらの例と比較して料理としての歴史が浅く、地域性があるのではないかとの認識が浸透していないこともあり、これまでほとんど検証されていませんでした。
 そこで、ポテトサラダの風味に地域性があることを消費者の皆さまに知っていただくことで、これまで以上に、ポテトサラダに対して興味や面白さを身近に感じていただけるのではないかと考え、ポテトサラダに多角度的に関わってきたわれわれがこの件を調査しましたので報告します。

4 ポテトサラダの風味(味付け)の分析データの調査方法~各地域の風味の違い~

 今回は、北海道・東北・首都圏・中部・関西・九州の6地域において、ランダムに選択した各10カ所の量販店の惣菜売り場で販売されているポテトサラダを用い、それぞれの甘味をデジタル糖度計で、また、塩味・うま味・酸味を味認識装置(味覚センサー)で測定し、計60品の平均値を基準(0点)とし、各サンプルの値との差を「分析データ」として用いました。その地域ごとの分析データの平均値を用いてグラフを作成しました(図3)。
 このグラフから、全国の平均と比較して各地域のポテトサラダの風味に違いがあることが示されました。また、私見ですが、全国平均に最も近い地域が首都圏であることも非常に興味深いと感じます。首都圏はさまざまな地域から人が集まるため、他のメニューにおいても平均的な味付けに落ち着く傾向にありますが、ポテトサラダも同様である可能性が示唆されました。

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5 各地域の嗜好性との関連性について~各地域固有の食文化からの視点~

 また、一般的に知られる各地域の食事の嗜好性を、官公庁などで示されているデータや文献(注)から引用して次の四つの視点で定性的にまとめ(図4)、それらがどの程度ポテトサラダの味付けに反映されているかを明らかにするため、ポテトサラダの分析データと比較しました。
 1)調味料消費量傾向
 2)1)を基にした嗜好性が高い味(甘味:砂糖/塩味:食塩・しょうゆ/旨味:みそ/酸味:酢・マヨネーズ・マヨネーズ風味調味料)
 3)歴史的背景
 4)特徴的な郷土料理
 


 
 その結果、各地域の食事の嗜好性とポテトサラダの風味傾向が定性的に合致する部分があることが分かりました(表)。また、風味の嗜好性を細かく見ると、各地域の食文化と調味料消費傾向とが定性的に合致する傾向にありました。
 

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6 本調査のまとめ

 本調査結果から、各地域固有の食文化の背景にある、気候や歴史、特産物などが、日々の食卓の味を形作り、ポテトサラダの風味にも反映されている可能性が示唆されました。「北海道のポテトサラダは甘い」や「関西のポテトサラダはだしの風味傾向に似て薄味」という一種の都市伝説のような認識が、今回得られた結果によって可視化できたと考えます。
 この結果によって、各地域のポテトサラダを「地域の食文化を反映したご当地メニュー」として手に取っていただく機会を増やすことができれば、多くの方にポテトサラダをより身近に感じていただくことができ、さらにばれいしょに関わる業界を活性化できる可能性も考えられました。

7 おわりに 本調査結果の活用~ご当地ポテサラ~

 デリア食品では、ばれいしょの知識やポテトサラダの魅力を社内外に発信する人材を育成する社内検定「ポテサラマイスター」制度を2025(令和7)年に新設しました。また、今回の調査で明らかになった地域性の要素も捉えながら、全国の認定されたマイスターたちの知見や地域愛を結集した「ご当地ポテサラ」(全19品)を展開する「ご当地ポテサラキャンペーン」を26(令和8)年7月から開始しました(図5)。地域特有の食材や料理を取り入れた意外性のある商品を順次発売し、新たな食体験を提案していきます。
 われわれは、今後もポテトサラダの魅力を発信することで、食卓にポテトサラダのおいしさと楽しさと豊かさを届ける取り組みを続けていきます。

タイトル: p006a
 
(注)総務省統計局家計調査(家計収支編)調査結果(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2022年(令和4年)~2024年(令和6年)平均)/農林水産省ホームページ「うちの郷土料理」/(一社)日本調理科学会 家庭料理研究委員会 総まとめ報告書/2013年3月 キユーピー通信_vol.79

・「ご当地ポテサラ」
URL https://www.deria-foods.co.jp/products/local_products.html

タイトル: p006b


 
タイトル: p006c
相羽 孝亮(あいば こうすけ)
キユーピー株式会社 研究開発本部 野菜価値創造部 野菜・惣菜研究チーム
【略歴】
2014年 キユーピー株式会社入社
ポテトサラダの原料(ばれいしょ・マヨネーズ)研究・開発やおいしさの評価手法の開拓に従事。「日本一のポテトサラダ」の実現に向け、おいしさ・やさしさ・ユニークさを備えた価値の創出に取り組む。
 
タイトル: p006d
波多野 由美(はたの ゆみ)
デリア食品株式会社 商品本部 商品開発部 商品開発課
【略歴】
2009年 デリア食品株式会社入社
惣菜のおいしさの見える化や日持ち向上技術などの開発に従事。主にポテトサラダのおいしさの要素を探る研究開発に取り組む。
 
タイトル: p006e
高谷 智子(たかたに ともこ)
デリア食品株式会社 商品本部 商品企画部 商品企画課
【略歴】
2024年 デリア食品株式会社入社
機器分析と官能評価を通じたポテトサラダのおいしさの見える化に従事。生活者ニーズ調査を商品開発へつなげ、顧客視点の商品開発とブランドの魅力向上に取り組む。