(1)ICTを活用した環境制御技術の推進
ア ICT研究会の体制整備
新品種に適した環境制御技術を確立するため、環境測定装置を導入した農家4戸と普及指導センター、両JA、試験場、ICT機器メーカーなどで平成29年に「ICT研究会」を立ち上げた。同研究会では、環境測定装置のデータを全メンバーにオンラインで共有し、LINEを活用してリアルタイムに情報交換できる体制を整備した(図5)。
イ ICT研究会の活動
(ア)勉強会の開催
ICT研究会では、定期的に勉強会を開催し(写真2)、温湿度や炭酸ガス濃度などの環境データに基づく栽培管理、環境制御機器の設定方法、EOD(日没後)加温や炭酸ガス施用などの新技術について情報交換を行った。
(イ)個別面談の実施
ICT研究会の会員農家を対象に、個別面談を年1回実施し、JAの出荷実績や環境モニタリングデータを整理した成績表(図6)を作成して、農家ごとの課題整理と次期作の目標設定を行った。
(ウ)LINEを活用した生育診断
栽培環境と生育状態を併せて把握するため、スマートフォンで撮影した画像による生育診断を導入した。農家自身が撮影した画像と生育調査データを送信してもらい、普及指導センターが取りまとめて分析し、栽培管理のポイントをLINE上で共有する体制を整えた(図7)。これにより、効率的かつ定期的な生育状況の確認と、きめ細やかな情報共有が可能となった。
ウ ICT研究会員以外への支援
両JAの生産部会全体の収量向上を図るため、平成31年に県域で作成された「『匠の技』実践マニュアル」や、令和3年に作成した「ICT導入の手引き」を活用し、環境制御技術の有益性を部会内に情報提供した(図8)。特に、低温寡照期の改善効果が高い炭酸ガス発生装置については、効果的な利用方法を周知し、補助事業も活用しながら導入を推進した。
(2)スマート農業の実装を牽引(けんいん)する組織の育成~収量・所得・研究会員の増加~
ICT研究会では、栽培環境のモニタリングや生育診断、勉強会活動により、会員の間で環境制御に対する高い意識が醸成された。ハウス内の炭酸ガス濃度などの環境データや生育調査を基にした栽培管理が浸透し、農家同士で「夕方の炭酸ガスの濃度設定をどうしているか」、「葉面積を保つためにどのような整枝方法をしているか」といった会話をしているのがよく聞かれるようになった。さらに、農家自ら勉強会や先進地視察を行うようになり、農家が主体となる活動も活発化した。
その結果、令和2年産の研究会員の平均収量は、10アール当たり20.5トンとなり、両JAの生産部会平均の同17.8トンを上回る成果が得られた。その後もICT研究会の会員平均収量は、両JAの生産部会平均を上回り続けている(図9)。
また、研究会員の経営分析をしたところ、技術導入に伴い経費は増加したが、それ以上に収量が増加し、所得は向上した(表2)。さらに、両JAの生産部会全体の研修会でICT研究会の成果を情報提供し、環境測定装置の導入を推進したところ、平成29年産では4戸だった研究会員が、令和6年産には75戸に増加し、イノベーションの中核となる組織を育成することができた。
現在もさらなる生産性向上を図るため、勉強会活動を継続して実施し、環境制御技術の普及拡大に取り組んでいる。