「野菜の相場予測情報」は、単に価格の高低を確認したり断定したりするための情報ではなく、少し先に起こり得る変化を事前に把握し、生産、加工、流通、販売の各段階で、不確実性を踏まえながら早めに対応を検討するための共通指標として活用できる。予測情報の提供は、CSVファイルでのデータの連携や(図4)、PDFファイルによるレポート提供により行う(図5)。また、データ提供だけではなく、産地の天候解説や予測値の要因解説コンサルティングも実施する(図6)。以下では、(1)産地、(2)加工・業務用、(3)食品メーカー、(4)小売り―の各場面に分けて、価格と数量の予測の活用事例を整理する(図7)。
(1)産地での活用
産地にとって、「野菜の相場予測情報」は各農家の収穫・出荷の段取りを検討するための判断材料になる。野菜は、天候によって生育が前進したり遅れたりしやすく、出荷が特定の時期に集中すれば価格が下がるなど、産地の収入への影響は大きい。数週間先の価格と市場への入荷数量の見通しを把握できれば、出荷順序、出荷先、荷姿、規格別の出し方、収穫作業や人員配置の優先順位を検討しやすくなる。
特に、予測数量の増加が見込まれ、価格の低下が見込まれる場合には、販売先との事前調整や、加工向け出荷など販売先変更の可能性を早めに検討することができる。一方、予測数量の減少が見込まれる場合には、供給量が不足する局面として、生育状況を確認しながら、無理のない範囲で、出荷時期や出荷量を調整する判断材料となる。近年では、高温や渇水などによる生産の不安定化に対応するため、作柄安定技術や安定供給体制の構築が重要な課題として位置付けられ、「野菜の相場予測情報」は、こうした現場を支える定量的な補助情報として活用できる。
(2)加工・業務用での活用(カット野菜工場での場合)
カット野菜工場では、原料野菜を安定的に確保しながら、歩留まり、製造量、販売先への供給量を調整することが重要になる。カット野菜は、家庭での簡便化志向や中食需要の広がりを背景に需要がある一方、原料となるキャベツ、レタス、にんじん、たまねぎなどの価格や入荷(収穫)量の変動を受けやすい。
「野菜の相場予測情報」を活用すれば、原料価格が上がりやすい品目、数量が減りやすい品目を早めに把握し、調達先の分散、在庫可能な原料の前倒し確保、商品規格や配合の見直しを検討しやすくなる。例えば、キャベツの数量減少と価格上昇が見込まれる場合には、ミックス野菜における配合比率の見直し、代替原料の検討、販売先への価格・供給条件の事前説明などに活用できる。反対に、数量が増え価格が下がりやすい局面では、増産や販促提案に向けた原料確保を進める判断材料となる。
(3)食品メーカーでの活用
食品メーカーにとっては、「野菜の相場予測情報」は、原材料調達、製造計画、商品設計、販売先への提案を検討するための情報になる。野菜を使用する食品メーカーでは、相場上昇が見込まれる品目について、調達時期の前倒し、複数産地からの調達、冷凍・乾燥・加工原料の活用、規格変更や商品設計の見直しを検討できる。例えば、トマト、たまねぎ、キャベツなどを使用する調味料、スープ、惣菜、冷凍食品、野菜飲料などでは、原料価格の上昇や入荷量の減少が、製造原価や販売計画に影響する可能性がある。15週先までの価格・数量の方向感を把握することで、短期の仕入れ判断だけでなく、数カ月先の販促計画、見積もり、取引先への提案に向けた説明材料としても活用しやすい。
一方、相場が低下し、入荷量が増える見通しの品目については、国産原料の活用拡大や、期間限定商品の企画、量販店向けのメニュー提案、野菜摂取を訴求した販促企画につなげることができる。加工・業務用野菜では、国産野菜の活用拡大と安定供給体制の構築が政策上も重視されており、「野菜の相場予測情報」は、メーカー、産地、中間事業者が同じ見通しを共有し、調達と販売を連動させるための情報基盤として活用できる。
(4)小売りでの活用
スーパーマーケットなどの小売業においては、「野菜の相場予測情報」は、仕入れ量、売価設定、販促企画、売場づくり、惣菜・関連商品の展開を検討する上で活用できる。野菜は日々の食生活に密接に関わる商品であり、価格変動は消費者の購買行動に反映されやすい。
予測価格が低下し、入荷量が増える見通しの品目については、チラシ掲載、平台展開、まとめ買い提案、旬や産地を訴求した販促を組みやすくなる。特に、キャベツ、レタス、トマトなど日常的に購入される品目では、価格が下がりやすい時期を事前に把握することで、販売数量の拡大や関連商品の売場展開につなげやすい。一方で、価格上昇や入荷減少が見込まれる場合には、仕入れ数量の調整、代替品目の提案、カット野菜・冷凍野菜・惣菜などを含めた売場構成の見直しに活用できる。
(5)リードタイム別の活用
「野菜の相場予測情報」を実務で活用する際には、予測対象とする期間に応じて使い方を分けることが有効である。
1~3週先の情報は、足元の出荷・仕入れ・販売対応に活用しやすい。農家にとっては、現地の生育状況や収穫適期を踏まえながら、出荷時期の微調整、出荷先の配分、規格別の出し方、収穫作業や選果作業の優先順位を検討する際の参考になる。卸売業者や小売業者にとっては、入荷量や価格の方向感を早めに把握することで、仕入れ量、売価、売場展開、特売の可否を検討しやすくなる。
4~8週先の情報は、目先の対応だけでなく、少し先を見越した準備に向いている。カット野菜工場では、原料野菜の調達先の確認、産地切替の検討、在庫可能な原料の前倒し確保、商品規格や配合の見直しなどに活用できる。小売りでは、チラシ掲載、平台展開、関連商品の売場づくり、代替品目の提案など、販促計画の検討材料として利用できる。
9~15週先の情報は、中期的なシナリオとして利用可能である。食品メーカーやカット野菜工場では、原料価格の上昇や数量の減少が見込まれる品目について、複数産地からの調達、冷凍・乾燥・加工原料の活用、商品設計の見直し、販売先への説明や価格交渉の準備を検討するきっかけになる。
このように、リードタイムが短い情報は現場の即応判断に、リードタイムが長い情報は関係者間の準備や調整に活用しやすい。「野菜の相場予測情報」は、農家、普及指導員、卸売業者、カット野菜工場、食品メーカー、小売業者が、少し先の変化について、これまでよりも早めに調整を始めるための共通材料である。