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話題 野菜情報 2026年6月号

農業をスタイリッシュにデザインしながら規模拡大を続ける       平均年齢26歳の農業法人~有限会社アマリファーム~

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有限会社アマリファーム 代表取締役 甘利 崇雄
顔写真

1 アマリファームの概要

 有限会社アマリファーム(以下「弊社」という)は、長野県の東信地域に位置する、標高600~1200メートルの準高冷地と言われる小諸市でレタスなど高原野菜の栽培をしています(図1)。
 また、群馬県の高崎市に群馬支所を構え、長野圃場(ほじょう)と組み合わせてキャベツ、長ねぎの周年栽培を行っています。主要品目は、レタス、キャベツ、はくさい、長ねぎです。耕作面積は、長野圃場で30ヘクタール、群馬圃場で10ヘクタールほどです(両圃場のうち、レタスは15ヘクタール、キャベツは10ヘクタール、はくさいは10ヘクタール、長ねぎは5ヘクタール)。
 アマリファームは、2004年に法人化した農業法人で、私は三代目です。社員の多くは県外出身者で、社員数は現在(26年4月時点)28人、平均年齢は26歳と、農業関係の学びを経た若手が活躍しています(写真1)。設立当時の年間売上額は5000万円ほどでしたが、その後、規模拡大を続けて、現在は5億円となりました。
 
タイトル: p002b

2 デザイン業界から就農した自分にできること~農業は最も縁遠かった職業~

 私の前職はデザイン関係の仕事で、妻の実家が農家だったことから、結婚を機にそのまま就農しました。それまで就農したいといった希望や農業に憧れる気持ちは全くなく、正直、農業は自分の職業選択肢には無かった業種です。環境に慣れないこともあり、就農して1年間ほどは身が入りませんでした。
 そんな中、周りを見渡すと、農業をしているのは高齢者ばかりであることに気付き、「このままだと日本の農業はどうなってしまうのだろう?」と考えるようになり、そこから少し農業に対する考え方が変わりました。若い人材を集めるために農業の既存のイメージを変え、農業をしたい、日本の農地を守っていきたいと若者が思えるような農業を目指し、デザインの世界にいた自分に何かできることがあるのではないかと考え、まず、自分や会社の見せ方を工夫しようと思いました。出荷用の段ボール箱のデザインを自分で手掛け、見栄えを重視した事務所も構えました(写真2)。周囲からは、「事務所にお金をかける必要はない」という意見もありましたが、そこで働く人のことや取引先からの訪問があることなどを考えると、デザイン性、ファッション性にこだわることで、「格好いいこと」が農業の世界でも価値になるはずだという想いから実行しました。
 それと並行して、前職のデザインの仕事と農業に共通点があることに気付きました。デザインも農業も、自分が満足できるところまでやらないと終わりではない。どこまでも突き詰めることができる農業が面白くなり、そうなると農業はビジネスの間口が広いと感じるようになり、しかも、農業は人々の生活にとって必ず必要な職業であることから、今ではもう農業に悪い面が思いつかないくらいに、最も縁遠かったはずの農業が一番好きな職業になりました。
 
タイトル: p003

3 周年栽培体系構築の動機は二つ「安定収入と安定雇用」

 弊社の栽培体系は図2の通りで、長野圃場と群馬圃場で4品目を輪作して周年栽培を確立しています。
 その目的の1点目は、同一品目を周年で安定的に出荷できる体制を作ることで、安定した農業経営を目指しているからです。取引先にとっては、1生産者から1年を通じて調達できると仕入れがしやすいため、契約相手に選んでもらいやすいというメリットもあります。
 越境での輪作は、農地が1カ所に集約されている場合に比べて作業性は劣りますが、土壌環境を守るためには譲れませんし、昨今の気候変動のリスク分散にもつながっています。例えば、長野の夏秋作で生産量が減っても、その減収分を群馬の秋冬作で上乗せして計画すれば補完できます。規模拡大するほど、リスク分散は重要です。特に後から導入した長ねぎは、連作障害を防いでくれるのはもちろん、品質も素晴らしく、標高1000メートル以上の地で長ねぎを栽培している産地はほぼありません。また、はくさいは、近年の温暖化や局所的豪雨対策として、同じ長野県内でも弊社が位置する小諸市よりさらに標高の高い、1200~1400メートル地帯の川上村の若手農家の協力を得ながら安定供給に努めています。それでも不作となった際は、取引先の方に実際に圃場に足を運んでもらい、現場を見て状況を理解してもらっています。長年築き上げた信頼関係の下、不作の時も豊作の時も持ちつ持たれつで相互理解の上に乗り越えてきました。理想とする栽培体系構築のために、また、取引先の要望に応えるために、今後も作付け品目や栽培地域には柔軟に対応していきたいと考えています。
 2点目は、高齢化や離農の進む今後の農業を変えていくためには、若い人材、しかも農業に関心のある人材を周年で雇用する必要があると考えたからです。
 また、先代から引き継いだ後、私が契約栽培を主軸に経営を変えたのは、相場に左右される経営が周年雇用につながらないと考えたためです。就農、もしくは就職を希望する人たちは、不安定な売り上げの会社には就職しないと思いますし、自分たちの作った野菜の最終地点が見えることが、やりがいにつながるのではないかと考えています。
 計画生産も、天候に左右される野菜は100パーセント計画通りにはいかないのは当然ですが、会社の方向性や年度計画が分かると、仕事に対する意欲も高まると考えました。そして、契約栽培を行い、計画生産することで、会社の目標売り上げの達成度や設備投資の時期なども読めます。
 

4 人材育成のこと~体力も大事だけれど、「器用さ」と「コミュニケーション能力」も  農業には大切~

 どの業種でも、「人材育成」は大きな課題だと思っています。
 農業という業種柄、生き物や天気を相手にする仕事ですから、もちろん定時定休はありません。そのため、求人の際には、やはり農業という仕事をしっかり理解してもらい、「農業が好き」という人材募集から始めます。そうすることにより、社員間での意識の統一も図れますし、向上意識も高まります。また、苦手なことを克服させるよりも、得意なことを伸ばす指導も行っており、極力「適材適所」を人材育成の考え方としています。
 弊社では、従業員のうち半数は外国人労働者を雇用しています。彼らは仕事を覚えるのが早く、非常に能力が高いのですが、あるベトナム人スタッフの実家を訪れた際、その理由が分かりました。インフラが十分に整備されていない村で暮らしていた彼は、幼い頃から弟妹の面倒を見たり、何かが壊れたら自分で直したりするのが当たり前、直すための部品まで自分で作ってしまうような、そんな生活を送っていたのです。子供の頃から自立していた彼は、弊社内の他のスタッフに対しても面倒見がよく、手先も器用で、創意工夫や順応が身に付いているのです。生き物相手の農業は生き物に合わせて生活する必要があり、なおかつチームワークを大事にしている弊社では、彼らのような存在、スキルが大事だと感じています。弊社の外国人スタッフのうち、半数は特定技能2号(注)の資格を持っており、前述の周年栽培・周年雇用の整備や次章で紹介する福利厚生の手厚さなどで、いい人材が集まるのだと思います。
 
注:外国人向け就労ビザのうち、より熟練した技能を持つ者が取得できる在留資格。

5 スタッフが生き生きと働ける環境作り~こだわりの福利厚生~

 弊社は福利厚生にも力を入れており、もし退職や離職をしても「あの会社は良かった」と思われるような会社作りを目指しています。優秀な社員にはより手厚い福利厚生を整え、モチベーション維持の一つとしています。
 農業とアウトドアを結びつけ、アウトドアブランドのユニフォームや、機能性や作業性を重視し、圃場でも映え、外部のイベントや商談で着用しても目を引く作業制服の貸与(写真3)、住宅手当、家族手当、子供手当や有給休暇消化、海外研修も行っています。若い頃から海外を見てほしいという想いから、従業員のモチベーションにつながるような研修先を選んでおり、外国人スタッフのためには、京都など日本国内での研修も実施しています。
 コロナ禍には実施できませんでしたが、これまでに通算で9カ国ほど海外研修に行っており(令和7年度は韓国)、その国の食事や生活を見ることで、従業員の見分を広げてほしいと思っています。ある国でスーパーに立ち寄った際、売り場のキャベツを見て、自分たちが栽培しているキャベツと比べたり、栽培方法に興味を持ってあれこれ議論したりしている姿を見てうれしくなりました。自分たちの仕事に誇りを持った彼らのプロ意識が頼もしくもありました。
 
タイトル: p005

6 今後の農業のために~一つの成功例になりたい~

 農業は、天気のこと、土のこと、そして農薬、作物の特性、経営、販路、人材育成など、多くのことを網羅しないと成り立ちません。「お百姓さん」という呼び方がありますが、まさに100の知識・技術がないと成り立たない、レベルの高い仕事だと感じ、また、そこに面白さも感じます。私自身も、目を肥やすことやインプットを怠らず、農業に限らず音楽、映像、建築、サブカルチャーには高いアンテナを張り、従業員にも共有するように心がけています。
 「新規就農」というと、最初から独立し、すべて一から始めないといけないイメージがありますが、私に先代や先々代がいたように、すでにある農家や農業法人に「就職する」という道があることを若い人たちに知っていただきたいです。ゼロを1にするのは大変です。私にも最初に1があったからここまでやってこられたと、1を元に掛け算をしたから何倍にも規模拡大できたと感じています。弊社のような農業法人にまずは就職することで農業人口を増やし、みんなで日本の農地を守っていけたらと思っています。
 最近では高齢化に加え、生産コストの上昇により収益が確保できずに離農していく方が大勢います。弊社では、離農された方の農地を活用して、これからも規模拡大していきたいと考えています。将来的には、長野と群馬の農場の経営を二つに分けることや、自社の農業を生かせるための事業展開も視野に入れています。
 弊社の目標は、地域農業を支えながら、農産物を安定して生産、出荷することです。
 生産だけでなく、加工・販売まで一貫して取り組むことで、農業の価値を高め、持続可能な事業モデルを作ることを目指しています(写真4)。
 一方で課題としては、人手不足や資材価格の高騰、気候変動への対応など、農業を取り巻く環境が厳しさを増している点が挙げられます。そのため、効率化や品質向上、新たな対策に取り組んでいく必要がありますが、一法人ではなかなか難しいのが現実です。行政なども含め新たな対策を共に考える必要があると思います。
 日本の農業は、地域の暮らしや食文化を支える重要な基盤です。私たちは農業の未来を次世代につなぐために、現場から価値ある挑戦を続けていきたいと考えています。
 
タイトル: p006
 
 
甘利 崇雄(あまり たかお)
有限会社アマリファーム 代表取締役
 
【略歴】
1975年 名古屋市生まれ。
2003年 デザイン関連会社に勤務後、小諸市にある妻の実家の甘利家に就農。
2004年 「有限会社アマリファーム」を設立。法人化する。
2005年 群馬県高崎市にて10ヘクタールの圃場運用を開始。
2019年 真空予冷機・予冷庫を導入。
2022年 JGAP認証取得、エコファーマー認定、SDGs推進起業登録。
2024年 育苗ハウス竣工。長野県川上村に予冷庫竣工。