(1)低温・高湿度の保管環境「雪下野菜」から着想
私たち日本人は、低温で高湿度の環境が食材の保管に最適であることを、古くから知っていました。ZEROCOは、今までの冷蔵庫・冷凍庫の低温での保管技術とは異なり、温度約0度・湿度100パーセント弱の低温・高湿環境を安定的に作り出し、管理・制御することにより、野菜などの細胞破壊を起こさずに鮮度を長く保つ技術を搭載した冷却庫です。この、低温・高湿度の安定した保管環境により、結露の発生が少なくなることで、ドリップや冷凍霜焼け凍結やカビの発生、腐敗リスクを抑え、食材の品質を長期間保持することが可能になります(写真2、図2)。
また、ZEROCOを生鮮品の長期保存を行う保管庫・冷蔵庫的な活用だけでなく、冷凍前の予備冷却として活用することで、細胞破壊を原因とするドリップを抑制し、出来立てのような冷凍食品が可能になります。この技術により、生産者は在庫を持ち、出荷時期を計画的に調整することができるようになります。
さらに、私たちはこの技術を、単なる保管装置ではなく、流通構造を変えるインフラとして捉え、外食産業を含めたあらゆる「食関連サービス産業」の業態転換および、労務環境負荷の低減、顧客満足度向上などに貢献出来る可能性を追求しています。
(2)時間を味方につけ、儲かる農業へ
これまでの農業は、「収穫した瞬間から劣化が始まる」ことを前提に、市場価格に従わざるを得ない構造でした。豊作時には価格が下落し、出荷が集中することで価値が
毀損されます。一方で、端境期には価格が高騰し、需給が不安定になります。この振れ幅の中で、生産者は価格決定権を持ちにくい立場に置かれてきました。
実際に、柑橘類の卸売価格は、出荷最盛期には需給緩和により大きく下落し、端境期には供給量の減少に伴い上昇する傾向があります。例えば、みかんでは出荷が集中する時期と端境期とで、同一等階級であっても単価が数倍のレンジ(幅)で変動することは珍しくありません。メロンにおいても同様に、出荷ピーク時には相場が下押しされる一方、供給が絞られる時期や需要期には価格が大きく上振れします。品種・等級・産地条件を揃えた場合でも、「出荷のタイミング」によって価格差が生じてしまいます。
しかし、保存期間を延ばし、品質を維持したまま出荷タイミングを選択できるようになれば、需給バランスを見ながら供給量を調整することが可能になります。これは単なる在庫機能ではなく、「時間を活用した価格設計」を可能にするということです。価格の急落局面で無理に売り切る必要がなくなり、適正価格での販売を選択できる。結果として、収益の平準化と利益率の改善につながります。私たちは、この技術により、農業を「量を出す産業」から、「価値を設計する産業」へと転換することが、農業を持続可能で、かつ儲かる産業へと進化させる鍵になると考えています(図3)。
(3)ニッポン中に保管拠点を、セカイへ輸出
まず、生産の拠点となる川上(産地)にZEROCOを設置することを最優先とし、現在、北海道千歳市に約50坪(約165平方メートル:1坪=3.3058平方メートル)、熊本県熊本市植木町に約70坪(約231平方メートル)、徳島県鳴門市に約100坪(約331平方メートル)の大型ZEROCOを導入し、野菜・果物の保管と流通の実証を進めております。
さらに、ZEROCOを搭載したトラック輸送は現在も実証実験を続けており、2026年からは九州での本格的な活用実証を迎えます。将来的にリーファーコンテナとの組み合わせにより、空輸に頼らず、海運で日本のフレッシュな青果を海外へ届ける構想です(図4、写真3、4)。