鳥獣被害対策は、(1)個体群管理(鳥獣の捕獲)、(2)侵入防止対策(柵の設置や追い払い)、(3)生息環境管理(刈払いなどによる餌場・隠れ場の管理、放任果樹の伐採)-の3本柱が基本であり、これらの対策を適切に組み合わせ、地域ぐるみで総合的に取り組むことが重要です(図2)。
侵入防止柵を設置する場合は、対象となる野生鳥獣に有効なものを選ぶ必要があります。例えば、木や網を登ることができる獣種に対しては金網柵による物理的な防御よりも、電気柵の電気刺激による防御が有効です。また、侵入防止柵は設置して終わりではなく、柵下部地面の掘削による侵入や倒木による損傷部分からの侵入が報告されているので、定期的に見回りを行い、必要に応じて補修・管理を行うことが重要です。
対策を実施しているにもかかわらず被害が減らない地域では、稲刈り後の「ひこばえ(孫ばえ。樹木の根元や切り株から生えてくる若芽や枝のこと)」や野菜くずなどの収穫残さの放置といった「無意識の餌付け」が行われている、柵の設置やその後の管理が適切ではない、追い払いや捕獲が正しく行われていないなどの原因が考えられるため、対策の実践状況を点検の上、正しい知識と技術で対策を進めることが重要です。
鳥獣被害対策の担い手の減少・高齢化により、捕獲従事者や柵の管理者などの人手不足が進む中、ICT(情報通信技術)などを活用した捕獲、追い払いなどに関する研究・開発やICT機器などの導入が進められています。ICTなどを活用した鳥獣被害対策としては、センサーカメラやドローンによる野生鳥獣の生息・被害状況調査や遠隔監視・操作システムによる檻(おり)やわなでの捕獲といった技術があり、これらを組み合わせることで、見回りなどの労力の軽減や捕獲効果の向上が図られるものと考えています。これら生息・被害状況調査や捕獲実績、さらには柵やわなの設置状況などを地図上にまとめ、関係者で共有し、鳥獣被害対策の進捗管理を行うことは、経験や勘だけではなく、農作物などに被害をもたらす加害個体の生息状況および被害発生箇所のデータの蓄積・分析に基づく計画の策定や、「計画→実行→点検→改善」(PDCAサイクル)に基づく対策の改善にも有効です(図3)。
農林水産省では、「鳥獣による農林水産業などに係る被害の防止のための特別措置に関する法律」を踏まえ、鳥獣被害防止総合対策交付金により、市町村が作成する「被害防止計画」に基づく3本柱など、地域ぐるみの対策を支援しています。