気候変動対策には、「緩和策」と「適応策」という2本の柱があります。
このうち、「緩和策」とは、地球温暖化の原因となっている温室効果ガス(二酸化炭素やメタンなど)の排出削減とその吸収対策です。例えば、施設園芸における省エネ設備(燃油に依存しない加温技術の導入)や省エネ農機の普及、中干し期間の延長などによる水田からのメタン削減などの取り組みが農業分野における緩和策です。
他方、「適応策」とは、既に生じている、またはこれから生じるであろう地球温暖化の影響に備え、被害を軽減・回避する対策です。例えば、換気、かん水の実施や施設栽培への
細霧冷房装置・遮熱性の高い被覆資材の利用、高温耐性品種の導入などの取り組みがこれに当たります。
トマトの適応策としては、昇温抑制、安定着果・生産等の対策として、遮光、遮熱資材の活用、換気、かん水、細霧冷房などが行われています(表3)。なお、報告の中では、各種資材・設備の導入にはコストや労力がかかるほか、天候に応じた栽培管理の徹底が普及上の課題として挙げられています。また、「令和6年夏の記録的高温に係る影響と効果のあった適応策等の状況レポート」においては、一部の県から裂果防止の適応策として、
果梗捻枝(注)の技術が報告されています。
(注)果梗を捻って枝を曲げたり、ペンチで潰したりすることで、裂果を防止する技術。
いちごの適応策としては、花芽分化の安定・促進への対策として、遮光資材の活用、遮熱剤の散布、細霧冷房、新品種導入、クラウン部(いちごの成長点が集中する株元)冷却、培地の昇温抑制などが行われています(表4)。なお、いちごにおいても各種資材・設備を必要とする対策では、導入コストや労力の増加が普及上の課題となっています。
そのほかの野菜については、施設で栽培されている品目は遮光、換気等の栽培管理が適応策として報告されています。また、施設、露地の両方ともかん水や品種の選定、病害虫の適期防除が報告されています(参考)。
