
ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 野菜品目の需給動向の「見える化」
野菜は天候などによって作柄が変動しやすく保存性も乏しいため、供給量の増減に伴い価格が変化しやすいという特徴があります。令和6年産についても、夏の高温や多雨、病害発生などの影響により、トマトやキャベツ、ブロッコリーなどの価格が高騰しました。これらの環境要因に加え、食の外部化・簡便化に伴う加工業務用需要の増加など、野菜を取り巻く情勢は大きく変化しています(1)。こうした中で、野菜の品目振興を適切に行うためには、短期的な動向だけでなく、中長期的な動向や品目全体の動向を俯瞰して捉える必要があります。
(1)市場統計情報に基づく各品目の需給動向分析
そこで、今回は東京都中央卸売市場(以下「都中央」という)の市場統計情報を用いて、野菜生産出荷統計の41品目※と、かんしょおよび野菜全体について需給動向の分析を行います。本来であれば、生産や家計消費、輸入、加工・業務用需要などの情勢も考慮する必要がありますが、今回は卸売市場の動向に注目します。これは、入荷量と単価の関係から需給動向を類推できることや、卸売市場は生鮮食料品などの流通の基幹的なインフラとしての役割を果たしており(2)、各品目の需給動向をある程度反映していると考えられるからです。
分析に当たっては、品目ごとに「入荷量」と「単価」について、図1で示したように「R元~R5年産の5カ年平均」を「H26~H30年産の5カ年平均」で除した値を算出し(単価は加重平均)、散布図にプロットします。対象が多数となるため、分析結果については、野菜生産出荷統計の分類に基づき、「根菜類・果菜類」(図2)および「葉茎菜類・香辛野菜・果実的野菜・その他」(図3)に分けてプロットします。また、入荷量と単価、販売金額の観点から各品目を六つのグループに分類しています(表1)。
※野菜生産出荷統計と市場統計情報とで品目は必ずしも一致しない(例えば、野菜生産出荷統計の「さといも」には、市場統計情報の「やつがしら」「セレベス」「京いも」も含まれる(3))。そこで、複数の品目が該当する場合は、原則として入荷量が最大となる品目のみ対象とするが、トマトは「トマト」「ミニトマト」、ねぎは「ねぎ」「こねぎ」、すいかは「すいか」「こだますいか」も対象とし、みつばは「根みつば」「切みつば」「糸みつば」を合算したものを対象とした。また、キャベツなどの指定野菜については、野菜生産出荷統計に準じて各作型(春・夏秋・冬など)を算出し、対象とした。その結果、分析対象数は82品目となっている。
(2)全体・類別の動向
全体の動向を見ると、「入荷量」が100%超となっている品目(グループ1、5、6)が約3割、「単価」が100%超となっている品目(グループ1、2、3)が5割超、「販売金額」が100%超となっている品目(グループ1、2、6)が2割超となっています。過半数の品目で単価上昇が見られますが、入荷量や販売金額が縮小する状況を踏まえると、実態としては供給減少により相対的に需要が高まっていることが要因と推測できます。
続いて類別に見ると、「根菜類」については、約8割がグループ3、4に位置しています。特に、ながいもやだいこん(秋冬)、ごぼうなどについてはグループ4となっており、需給の縮小が懸念されます。一方で、ばれいしょ類については、各作型がグループ2に位置しているため、入荷量が減少しているものの、需要が供給を大きく上回っていると推測できます。「葉茎菜類」は5割超がグループ3、4に位置していますが、はくさいやキャベツ、こまつななど、グループ5に位置する品目が3割超と他と比較して多いことが特徴です。次章でも触れますが、これら品目は、従前は需給が拡大傾向にあった品目であり、また、露地野菜であることから面積拡大が比較的容易であるため、供給が過剰気味になったことが主な要因と思われます。「果菜類」はグループ3、4が約7割を占めますが、供給が拡大するグループ1、6も約3割占めているという特徴があります。特にピーマンは全ての作型がグループ1となっており、需給の拡大が見て取れます。「果実的野菜」については、メロン類を除いてグループ1、2となっており、全体的な需要の高まりを推察できます。「香辛野菜」「その他」(3品目)については、焼き芋などの需要が拡大しているかんしょがグループ2となっており、需要が供給を大きく上回っていると思われます。