当工場は食品安全規格の衛生管理ISO22000を取得しており(図1)、原料の生産履歴が明らかな契約生産者のほうれんそうを使用しています。地元のJA熊本市や個人生産者約30人、熊本大同青果農産部・営農部(自社栽培面積約30ヘクタール)らと、年間の作付け計画を打ち合わせ、収穫時期と予定収量(単収×面積)を決めますが、工場には定時、定量での入荷が必要なため、
播種の時期を当社で調整し、生産者に伝えています。ただ、どんなに綿密な計画を立てても、播種後の降雨がなければ結局は発芽の時期が重なってしまい、収穫時期や収穫量にばらつきが生じてしまうことが悩みの種です。そのため、契約産地の
圃場巡回を重視し(写真3)、生育確認、防除指導、他圃場の情報提供などを行っています。それでも、露地栽培のため天候次第では1週間で病害のまん延や虫の大量発生が起こり、そのほかにも高温・低温障害・集中豪雨・台風・降雪・霜害など、ありとあらゆる問題が発生し、その都度現実的な対応策が求められます。これらの解決には、品種選定や防除方法などの栽培技術の一層の向上も必要だと考えて取り組んでいます。
生産コストの削減や効率化の取り組みとして、まず、圃場の選定は工場の近くであることを重視しています。現状では平均すると車で片道30分程度の場所にある圃場が大半を占めていますが、一層の効率化のため、今後は15分程度の場所に増やしたいと考えています。また、圃場は公益財団法人熊本県農業公社と連携して、農地集約を進めています。
収穫は自社所有の乗用型収穫機を持ち込んで行っています(写真4)。10アールのほうれんそうを、手収穫であれば通常7人で2日半かかるところ、収穫機を使って4人で1時間で収穫できる体制を構築し、生産者の作業負担を軽減しています。特に露地栽培のほうれんそうは、耕うん・施肥から、収穫・出荷までにかかる総労働時間の約85%を収穫以降の作業に費やします。そこで、収穫機械の持ち込みとオペレーション、工場までのトラック輸送といった収穫以降の作業をすべて当社が請け負い、代行することで、生産者は収穫作業や人の手配に煩わされることなく栽培に専念することができるため、作付面積の拡大を実現しています。