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話題 野菜情報 2024年6月号

ライスセンターを転用して広域選果機能と物流拠点機能を備えた集出荷施設に~JA全農山形おきたま園芸ステーション~

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全国農業協同組合連合会山形県本部 園芸部 園芸総合課 小松 幸広
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1 はじめに

 全農山形県本部(以下「JA全農山形」という)は、実需者ニーズに基づく生産振興を柱に、広域選果機能や物流拠点機能を具備した「園芸ステーション」を設置することで、直販事業の拡大に取り組んでおります。
 こうしたなか、平成31年4月に大規模な水田畑地化計画に基づく園芸生産振興が急務であった県南部の置賜(おきたま)地域に、休止中であったJA山形おきたまの施設「大塚ライスセンター」を改修し、「JA全農山形おきたま園芸ステーション(以下「園芸ステーション」という)」を開所しました(図1)。
 園芸ステーションは、地域生産振興品目である「えだまめ」と「アスパラガス」の機械選果のほか、シャインマスカット、デラウェア、西洋なしなどの特産果実や花き類の包装加工、予冷庫を活用した青果物の保管など、多目的な機能を持つ施設です。
 江戸時代、園芸ステーションがある置賜地域の藩主だった上杉鷹山(ようざん)公の言葉「為せば成る」から引用した4つのキャッチフレーズ「おいしい作物がたくさん“なる”!」「生産者の出荷労力が楽に“なる”!」「消費地への物流が円滑に“なる”!」「生産者も消費者も笑顔に“なる”!」を掲げ、園芸ステーションのシンボルマークも「成る(なる)」の愛称で親しまれています(図2)。





​2 園芸ステーションの概要

 園芸ステーションは、施設運営に係る管理業務をJA全農山形が実施しており、機械選果や包装加工などの作業に係る業務をJA山形おきたまに委託しています。
 当ステーションは、(1)転作田の活用を基本に、園芸作物(えだまめ、アスパラガス)の生産振興を図り、生産基盤の強化と農家所得の拡大を目指す(2)規模拡大による機械化(えだまめ)の推進と選果施設利用の誘導を行い、農作業の労力軽減を図る(3)共同選果・共同販売により品質の平準化と販売ロットの確保、安定出荷を実現し、有利販売に取り組む(4)包装加工業務ではマーケットインを起点とし、特産果実ギフト品などの付加価値商品の開発・販売提案で直販事業の拡大に取り組む(5)コンテナ集荷(バラ集荷)を行い、資材費削減による農家手取りの向上を図る-を目的とし、施設は大きく(1)えだまめ選果設備(2)アスパラガス選果設備(3)予冷設備-の3つのエリアに分かれています。


(1)えだまめの選果設備
 生産者が搬入した脱莢(だっきょう)(さやだけの状態にする)したえだまめを予冷・洗浄後、人手と色彩選別機などにより選別し、機械により自動で計量・袋詰めを行います(図3)。選果期間は7月下旬~10月中旬で、1日の最大処理量は8.3トンです。園芸ステーション活用により、生産者の作業省力化を図り、品種の組み合わせによる長期リレー出荷体制を確立しています。
 
タイトル: p004
 
タイトル: p005a
 
(2)アスパラガスの選果設備
 生産者が搬入したアスパラガスを人手とカメラ選別機により選別し、自動で計量・結束を行います(図4)。選果期間は4月中旬~9月下旬で、1日の最大処理量は1.8トンです。
 
タイトル: p005b

タイトル: p006

​3 有利販売の強化などの効果

 えだまめは、収穫してからいかに早く予冷し、洗浄、選果、袋詰めをすることができるかで品質や食味に大きな差が出ます。園芸ステーションは、収穫後、早期に予冷できる体制を整えており、鮮度保持に努めています。また、各機械を利用したスピーディーな作業と、高精度の全自動色彩選別機による選果により、高品質なえだまめを安定供給しています。
 えだまめ、アスパラガスとも、広域機械共選を行うことにより出荷ロットの拡大と集出荷の効率化が実現し、販売単価の安定につながっています。利用生産者は、選果・選別作業に費やしていた時間を栽培に集中することができるため、生産意欲が向上し、実際に作付面積や出荷量が増加し、えだまめに関しては複数の品種をリレーすることで長期出荷が可能になりました。これにより販売先からの信頼性が高まり、産地全体のブランド力の向上につながっています。
 また、入荷数量と時期を迅速かつ正確に把握し、計画的な出荷ができるため、これらを市場へ情報提供することにより、販売先の確保と高単価販売を実現しています。
 さらに、園芸ステーションの予冷庫を活用し、特産果実(さくらんぼ、デラウェア、シャインマスカットなど)を、実需のニーズに沿った量目や包装形態で加工して販売する直販事業にも力を入れています。大型予冷庫を活用することで荷物を一定期間保存できるため、大ロットでの出荷が可能となり、積載効率が向上し物流の効率化にもつながっています。

4 アップサイクル商品の開発

 当ステーションでは、機械選果で規格外となったえだまめを専門業者に委託し加工することで「冷凍むきえだまめ」として販売する事業に取り組んでいます。規格外品といっても理由は外見によるもので、品質は正品と同等のえだまめです。選果量425トンのうち、規格外品は139トンで(2021年)、これらをすぐに急速冷凍しているため、鮮度が命のえだまめの風味を最適な状態でキープしています。広域選果を行っているからこそ、まとまった量の規格外品を製品にアップサイクルできています。

5 今後の取り組み

 本年は園芸ステーション稼働6年目を迎え、引き続き生産者の労力削減による生産基盤の強化や有利販売による生産者所得の拡大を図っていきます。例えば、えだまめは現在、晩生種(「秘伝」)の搬入が集中し1日の処理可能量を超えることがあるため、極早生種~中早生種への作付け誘導を図り、搬入量の平準化に取り組んでいます。
 えだまめに限らず、規格外品から製造するアップサイクル商品の販路拡大や、包装・加工品の更なる販売提案と規格拡充の強化にも力をいれていきます。
 水田畑地化の流れにより休止していたライスセンターを、地域振興品目の選果場として有効利用するところからスタートした当ステーションは、今後も効率的で生産性の高い取り組みを展開していきます。
 

小松 幸広(こまつ ゆきひろ)
全国農業協同組合連合会山形県本部 
園芸部 園芸総合課
【略歴】
2015年 JA全農山形 畜産部 畜産酪農課
2019年 JA全農山形 管理部 企画管理課
2022年より現職