では、本戦略における個別施策をいくつかご紹介します。
(1)「DEEP VALLEY Agritech Award(ディープバレーアグリテックアワード)」
本市主催のアグリテックのコンテストで、本市の農業課題の解決に資する技術やアイデアを募集するものです(図4)。国内でも同様のコンテストが複数開催されてきていますが、本コンテストはその先駆けとなる存在です。
最優秀賞を受賞した企業には市からの出資交渉権(1000万円上限)が授与されますが、単なる賞金ではなく株式取得のための出資としているのは、市と企業との継続的な関係性を構築したいという目的があるためです。
これまで5回の開催で延べ114者からの応募をいただきました。
応募者の中には国のプロジェクトへの採択の対象やG7での出展などの実績のある、未来の農業のカギとなり得る企業がいくつもありました。具体的な企業については、次の章でいくつかご紹介します。
また、提案内容を評価する審査員は、北海道大学の野口教授をはじめ、農水省、埼玉県、グローバル企業、ベンチャーキャピタルなど、各界の顔とも呼べる方々に担っていただき、評価の質の確保に加え、審査後のフィードバックも応募企業にとっては大きな価値となっています。
(2)アグリテック交流施設アグリ:code22深谷(アグリコードツーツーフカヤ、通称:アグリコ)
アグリコは、生産者やアグリテック企業、農業関係事業者、研究者など、人と情報のハブとなる場所として、2023年10月30日にオープンしました。
アグリコの運営は、全国でコワーキングスペースの企画・開発・運営などを手掛けている株式会社ATOMicaへ業務委託をし、コーディネーターが常駐して相談・マッチングなどの支援をしています。コーディーネーターはできるだけ現場にも足を運び、地域との関係性の構築とともに実際の農業現場に触れることで、課題の本質を捉えたり、より効果的な提案・マッチングなどにつなげています。
また、アグリコではさまざまなテーマを設定したイベントを、月2回程度、継続的に開催しています。生産者や企業への認知が徐々に広まっており、一度利用あるいはイベント参加をしていただいた方の多くはリピーターになっています。
アグリコ設置の成果としては、これまでの戦略運営の中では関わりが少なかった方との関係性が構築できた、という点も挙げられます。例えば、ロボット工学関連の企業への助言ができる技術士の方など、新たな関係先ができることでより実のある支援につながっていると実感しています。
アグリコはJR深谷駅から徒歩10分程度の中心市街地に位置し、元々米問屋であった店舗を活用しました。この場所は旧中山道沿いであり、江戸時代には宿場町として賑わった地域です。時代を超え、今度はアグリテックに関わる人で賑わう場所にしたいという願いもこもっています(写真1)。
(3)伴走支援
市による企業への伴走支援により、事業が展開できるようサポートを行います。企業を根付かせるための、市の手厚い伴走支援はこの取り組みの大きな特徴であり、アワードでの受賞有無や企業規模の大小などに関わらず実施しています。