全国に10カ所以上ある当社のトマト菜園のうち、大型菜園の一つである「いわき小名浜菜園(福島県)」は、およそ東京ドーム2個分の規模です。安全・安心でおいしい生鮮トマトを1年中お届けするために、温室で栽培しています。天井までの高さが5~6メートルにもなるオランダ式のガラス温室は、採光性や換気に優れ、長期間の栽培が可能です。1年間栽培すると、樹の高さは15~20メートルまで成長し、1本の樹から収穫できるトマトは、150~200個ほどになります(写真2)。
大型菜園では、養分を含んだ水で育てる「養液栽培」を採用しています。トマトの状態に合わせて必要成分を調整し、年間を通して品質のバラつきを少なくするために、天候により給液量などをコンピューターで管理しています。温室内外の温湿度・日射量・風向・風速をモニタリングし、天窓換気、温湯暖房、遮光カーテン、細霧によってトマトに適した環境になるようにコントロールしています(写真3)。
栽培に適切な温度を保つための暖房に使う熱源には、環境に優しいLPガスを使用しています。燃焼時に発生するCO2を回収して、トマトの生育に必要な光合成に有効利用しています。また、「響灘菜園(福岡県)」では、近隣の陸上風力や、大規模太陽光発電所から一部電力を受電するなど、自然エネルギーを積極的に活用し、使用するLPガス自体を削減し、化石燃料の使用量低減にも取り組んでいます。
さらに、「八ヶ岳みらい菜園(長野県)」と隣接するカゴメ富士見工場では、工場の排出CO2および排熱を、菜園のトマトの光合成や温度管理に活用しています。また、菜園と工場で発生する植物性残渣を基に発生させたバイオメタンガスを、再生可能エネルギーとして、工場における野菜飲料の加熱・殺菌工程で使用しています(図)。
トマト栽培で発生するトマトの葉や茎などは、廃棄せず自社処理施設にて堆肥にしています。響灘菜園では、毎年発生するトマトの葉に、コーヒーかすを混ぜて堆肥化を促進しています。このように効率的に有効利用することで、トマトの葉などの廃棄量を年間2500トンから250トンにまで削減しています。また、最小限の水で生産できるトマト栽培システムの開発のほか、ハウスの屋根に降った雨水を収集・貯水し、
潅水に利用しています。さらに、前述の八ヶ岳みらい菜園と富士見工場では、富士見町内の
入笠山を水源とする井戸水を使用しており、カゴメグループでは2015年から、当該区域の約150ヘクタールを「カゴメの森」と命名し、水源涵養林の保全に努めるなど、水資源の有効利用や保全活動を通じて、資源循環型農業に取り組んでいます(写真4)。
トマトを栽培する上で、必要最低限の農薬は使用しますが、生態系を崩さないための当社のこだわりがあります。化学化合農薬の使用を抑えるために、外部からの虫の侵入防止や、虫の発生状況を毎日モニタリングして早期対応しています。さらに害虫の天敵を導入したり、微生物防除剤や電解水を利用するなど、生き物と共生する農業を目指しています。