(1)原料野菜へのこだわり
ア 品質の高い原料野菜の基本は産地との信頼関係
パッケージサラダの品質や鮮度保持技術の基本は、品質の良い原料があってこそである。当社では、大半の原料野菜は国産で賄っている。野菜には季節ごとに栽培に適した産地があり、例えばレタスやキャベツは、日本列島で1年中どこかで栽培している。そのため当社では産地リレーによって納品の時期や量、規格を決めて、常に旬の野菜を調達している。また、産地と契約し、市場価格に左右されない取引を行うことで、生産者の経営が安定する。生産者が安心して野菜生産を続けられることは、野菜の品質維持にもつながっている。原料調達担当者が定期的に契約産地を訪問して、生産者の方々と「顔が見える関係」を作ることで信頼関係を築き、品質の良い野菜を提供してもらっている。当社では一般的に小売店で販売されている野菜と同等もしくはそれ以上に品質の高い野菜を日々納入してパッケージサラダに加工している(写真1)。また、工場に納品される野菜を日々チェックして、その品質のフィードバックを生産者に対し行っている。
また、年に1回「Grower of Salad Club」と称した表彰式を行っている(写真2)。本年で7回目の開催となり、日頃お世話になっている生産者の方々へ感謝の想いを伝えるとともに、約400ある契約産地の中から優秀な生産者を表彰し、今後の技術向上と安定的な生産と取引の継続、信頼関係の構築につなげている。
イ 産地の選定
当社では国内の契約産地の選定については、農薬の使用について日本の法律を遵守し、生産履歴をトレースできる産地を基準としている。また、当社の原料野菜は大半を国産で賄っているが、野菜の種類や季節によっては、一部外国産の野菜を使用せざるを得ないケースがある。その場合も、輸入に関わる会社を選定し、取引会社には残留農薬の検査結果の提出を義務付けて厳しいチェックをしている。その上で、野菜本来の品質に関して独自の基準を設け、野菜ごとにサイズや葉の枚数、傷みの状況などの基準を細かくチェックし、それに合致した野菜を供給できる産地に限定して生産を依頼している。
(2)製法のこだわり
ア 鮮度保持期間について
当社では、創業当時より積み上げてきた殺菌洗浄技術や窒素充填およびコールドチェーンの整備により、3年前に「千切りキャベツ」、2年前に「ミックスサラダ」の消費期限を、それぞれ加工日から5日間という業界最長のレベルに延長させた(2品ともキャベツ系を主原料とした商品)。
前出のサラダ白書の結果にもあるように、パッケージサラダの非利用者の中には、「日持ちがしないから」という認識がある一方で「なぜ3~5日の日持ちがするのだろう?」「なぜ色が変わらないの?」「保存料や漂白剤などの薬品を使っているのではないか」と思われている人はまだまだ多く、当社お客様相談室にも毎週のようにこの種のお問い合わせを頂いている。当社では、パッケージサラダの製造において保存料、防腐剤、漂白剤は使用していない。野菜を洗う際に殺菌料を使用しているが、これは水道水にも含まれている成分(次亜塩素酸ナトリウム)であり、それ以外の添加物は使用していない。なお、製造の最後に冷水でよくすすぎ洗いを行っており、お客様が召し上がる際には殺菌料の残留が水道水より下回っていることを確認している
(注2)。
では、当社のパッケージサラダはなぜ日持ちする(=鮮度が続く)のか。
まずは、製法特許を取得している、野菜にやさしい洗浄について詳しくご説明したい。
注2:コーンを含む商品については保存料不使用とは表記できない。コーンはレトルト殺菌した加工食品であり、
食品添加物として日持ち向上剤を使用している。
イ 野菜の洗浄・殺菌
生の野菜をカットして充填する「パッケージサラダ」において、殺菌を目的とした洗浄は不可欠である。その上で当社では、生の野菜の鮮度を失わないために野菜本来の抵抗力を残し、「細菌を減らす」から「細菌を増やさない」ようにするための洗浄を行っている。
当社の野菜の洗浄回数は「カットする前」と「カットした後」の2回である(写真3)。3回洗浄すると野菜への負担が大きくなるため、この方法をとっている。
その2回の洗浄についてキャベツを例に説明すると、キャベツの外側にはさまざまな雑菌が付着しているが、逆に内側は雑菌が少なくきれいな状態である。そして外側の葉は内側よりも硬くて丈夫なので、しっかり洗浄しても傷まないという性質がある。そのため最初に外側をしっかりと洗浄し、その後にカットする。次に柔らかい内側の葉を、炭酸水を使ってやさしく洗浄していく。こうした洗い分けをすることで、野菜を傷めずに、雑菌を細部までしっかり取り除くことが可能となる。もちろん、だいこんやたまねぎのようなほかの野菜は、洗浄に使用する炭酸水の濃度や洗浄強度も変え、それぞれの野菜にとって最善の洗浄方法を選定している。
その次は殺菌である。当社で使用する野菜は、ごく一般的な
圃場で栽培されているため、当然だが生育中に土や外気にさらされ、昆虫やほこりなどの異物はもちろん、目に見えない雑菌もたくさんついている。この雑菌を取り除かないと腹痛などの健康被害の可能性が高まったり、切り口から褐変などが始まってしまう。そのために殺菌料は使用するが、その殺菌料は国が食品の殺菌に正式に推奨しているものを使用している。
こうした洗浄・殺菌工程の工夫に加え、パッケージ内の気体コントロールや、パッケージフィルムにも品質を保持する工夫がある。
ウ 新製法:混合ガス充填について
2023年4月1日に、レタス・リーフ系の商品3品(写真4)の消費期限をこれまでより1日延長し、これも業界最長となる、加工日から4日間とすることができた。これは開発に約4年間かかった「混合ガス充填製法
(注3)」によるものである(写真5)。親会社であるキユーピー株式会社の研究所では、長年野菜の鮮度保持の基礎研究を行っており、その中でもガスの充填方法は、さまざまな野菜との組み合わせを何通りも模索してきた。その結果誕生したのが「混合ガス充填製法」である。鮮度保持に最も効果のある気体の組み合わせや手法を試行錯誤する中で、確かな効果が見られたため工場での採用に踏み切った。とはいえ、野菜の品質は品種や産地によって異なり、加工する工場がある場所の気候や水質などが変われば、その効果も変わる。そこで「混合ガス充填製法」を導入するに当たり、まずは各工場の環境の比較・分析を行い、その差異の改善にも力を入れてきた。その甲斐あって現在ではどの工場でも当該商品の消費期限を4日間とすることが可能となった(沖縄除く)。これは研究所と各工場が一体となり構築した、当社独自のノウハウである。
注3:商品の野菜の配合に合わせて、酸素・窒素・二酸化炭素をバランスよくパッケージ内に充填することで
鮮度を保つ製法のこと。