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話題 野菜情報 2023年9月号

あなたの知らないパッケージサラダの世界

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株式会社サラダクラブ 広報・広告宣伝部 次長 吉田 政道
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1 はじめに~「サラダ白書(注1)」からみるパッケージサラダの利用実態など~

(1)パッケージサラダの市場規模
 
株式会社サラダクラブ(以下「サラダクラブ」という)は、1999年にキユーピー株式会社と三菱商事株式会社の合弁会社として設立した。創業当時、日本のスーパーマーケットではパッケージサラダ(野菜などを食べやすくカットした、そのまま食べられるサラダのこと)と呼べる商品はほとんど見当たらなかったが、この約20年間で、取引先や原料生産者、関係各社ともにこの市場を作り、現在約20%の市場シェアを持つメーカーに成長した。
 現在ではスーパーマーケットやコンビニエンスストアで当たり前に並ぶパッケージサラダは、青果売場の必需品になりつつある。当社の調べでは2022年度のパッケージサラダの市場規模は約1969億円となっており(図1)、この10年間で2倍以上成長し、今後もこの拡大傾向は続くと予想している。

注1:当社では2010年から毎年2月に一般消費者に対し、野菜やサラダに関わる事柄について調査を行い、
    「サラダ白書」として発表している。
    「サラダ白書2023」は、全国2060人の20~69歳の男女にWebアンケートを行った(実施期間:
    2023年2月21日~24日)。

 

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(2)市場拡大の背景
 パッケージサラダは、女性の社会進出や高齢化による時短・簡便ニーズの高まりや、単身世帯の増加により個食化が進んだことなどを背景に、手軽に新鮮な野菜が摂れる商品として市場が拡大してきた。それに加え、直近3年間は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、食事、運動、睡眠、そのほかの生活習慣の見直しが進み、健康生活の基本的な行動の1つとして、野菜摂取への意識も高まった。パッケージサラダは、健康意識の高まりと、生活スタイルの変化に合致した商品として、今後もニーズが高まるとみられている。

(3)野菜不足解消に使いたい商品No.1
 厚生労働省が推奨している1日当たりの野菜摂取量の目標値350グラムには未だ約70グラム足りていないと言われているが、その野菜不足をどのようにして解消したいかの意識を当社が調査した結果、「パッケージサラダを利用したい」という人が一番多いことが分かった(図2)。おそらく他の野菜ジュースや惣菜、冷凍野菜、サプリメントと比較して「パッケージサラダは生の新鮮な野菜そのもの」という認識が向上したことと、前述のように身近なスーパーやコンビニエンスストア、近年ではドラッグストアでも手に入るようになったことがその理由と考えられる。

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(4)それでもまだ半分の人が使っていない、その理由は?
 
また、同白書によると、パッケージサラダの利用経験者は約52%となっており、まだ約半分の人は利用経験がないことが分かる。実はこの10年くらい利用経験率はさほど大きくは伸びていない(図3)。
 その理由を調査すると、「保存料や防腐剤を使っていそうだから」「漂白剤を使っていそうだから」「鮮度が落ちている/傷んでいると思うから」「どんな野菜が使われているか分からないから」といった、パッケージサラダに対する誤解があることが分かった(図4)。
  これらの結果から、まだまだ知られていないパッケージサラダの世界を正しく知っていただくために、当社の原料へのこだわりや製法のこだわりをご紹介したい。
 

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2 パッケージサラダの鮮度保持の秘密

(1)原料野菜へのこだわり
ア 品質の高い原料野菜の基本は産地との信頼関係
 パッケージサラダの品質や鮮度保持技術の基本は、品質の良い原料があってこそである。当社では、大半の原料野菜は国産で賄っている。野菜には季節ごとに栽培に適した産地があり、例えばレタスやキャベツは、日本列島で1年中どこかで栽培している。そのため当社では産地リレーによって納品の時期や量、規格を決めて、常に旬の野菜を調達している。また、産地と契約し、市場価格に左右されない取引を行うことで、生産者の経営が安定する。生産者が安心して野菜生産を続けられることは、野菜の品質維持にもつながっている。原料調達担当者が定期的に契約産地を訪問して、生産者の方々と「顔が見える関係」を作ることで信頼関係を築き、品質の良い野菜を提供してもらっている。当社では一般的に小売店で販売されている野菜と同等もしくはそれ以上に品質の高い野菜を日々納入してパッケージサラダに加工している(写真1)。また、工場に納品される野菜を日々チェックして、その品質のフィードバックを生産者に対し行っている。
 また、年に1回「Grower of  Salad Club」と称した表彰式を行っている(写真2)。本年で7回目の開催となり、日頃お世話になっている生産者の方々へ感謝の想いを伝えるとともに、約400ある契約産地の中から優秀な生産者を表彰し、今後の技術向上と安定的な生産と取引の継続、信頼関係の構築につなげている。

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イ 産地の選定
 当社では国内の契約産地の選定については、農薬の使用について日本の法律を遵守し、生産履歴をトレースできる産地を基準としている。また、当社の原料野菜は大半を国産で賄っているが、野菜の種類や季節によっては、一部外国産の野菜を使用せざるを得ないケースがある。その場合も、輸入に関わる会社を選定し、取引会社には残留農薬の検査結果の提出を義務付けて厳しいチェックをしている。その上で、野菜本来の品質に関して独自の基準を設け、野菜ごとにサイズや葉の枚数、傷みの状況などの基準を細かくチェックし、それに合致した野菜を供給できる産地に限定して生産を依頼している。
 
(2)製法のこだわり
ア 鮮度保持期間について
 当社では、創業当時より積み上げてきた殺菌洗浄技術や窒素充填およびコールドチェーンの整備により、3年前に「千切りキャベツ」、2年前に「ミックスサラダ」の消費期限を、それぞれ加工日から5日間という業界最長のレベルに延長させた(2品ともキャベツ系を主原料とした商品)。
 前出のサラダ白書の結果にもあるように、パッケージサラダの非利用者の中には、「日持ちがしないから」という認識がある一方で「なぜ3~5日の日持ちがするのだろう?」「なぜ色が変わらないの?」「保存料や漂白剤などの薬品を使っているのではないか」と思われている人はまだまだ多く、当社お客様相談室にも毎週のようにこの種のお問い合わせを頂いている。当社では、パッケージサラダの製造において保存料、防腐剤、漂白剤は使用していない。野菜を洗う際に殺菌料を使用しているが、これは水道水にも含まれている成分(次亜塩素酸ナトリウム)であり、それ以外の添加物は使用していない。なお、製造の最後に冷水でよくすすぎ洗いを行っており、お客様が召し上がる際には殺菌料の残留が水道水より下回っていることを確認している(注2)
 では、当社のパッケージサラダはなぜ日持ちする(=鮮度が続く)のか。
 まずは、製法特許を取得している、野菜にやさしい洗浄について詳しくご説明したい。

注2:コーンを含む商品については保存料不使用とは表記できない。コーンはレトルト殺菌した加工食品であり、
   食品添加物として日持ち向上剤を使用している。


イ 野菜の洗浄・殺菌
 生の野菜をカットして充填する「パッケージサラダ」において、殺菌を目的とした洗浄は不可欠である。その上で当社では、生の野菜の鮮度を失わないために野菜本来の抵抗力を残し、「細菌を減らす」から「細菌を増やさない」ようにするための洗浄を行っている。
 当社の野菜の洗浄回数は「カットする前」と「カットした後」の2回である(写真3)。3回洗浄すると野菜への負担が大きくなるため、この方法をとっている。

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 その2回の洗浄についてキャベツを例に説明すると、キャベツの外側にはさまざまな雑菌が付着しているが、逆に内側は雑菌が少なくきれいな状態である。そして外側の葉は内側よりも硬くて丈夫なので、しっかり洗浄しても傷まないという性質がある。そのため最初に外側をしっかりと洗浄し、その後にカットする。次に柔らかい内側の葉を、炭酸水を使ってやさしく洗浄していく。こうした洗い分けをすることで、野菜を傷めずに、雑菌を細部までしっかり取り除くことが可能となる。もちろん、だいこんやたまねぎのようなほかの野菜は、洗浄に使用する炭酸水の濃度や洗浄強度も変え、それぞれの野菜にとって最善の洗浄方法を選定している。
 その次は殺菌である。当社で使用する野菜は、ごく一般的な圃場(ほじょう)で栽培されているため、当然だが生育中に土や外気にさらされ、昆虫やほこりなどの異物はもちろん、目に見えない雑菌もたくさんついている。この雑菌を取り除かないと腹痛などの健康被害の可能性が高まったり、切り口から褐変などが始まってしまう。そのために殺菌料は使用するが、その殺菌料は国が食品の殺菌に正式に推奨しているものを使用している。
 こうした洗浄・殺菌工程の工夫に加え、パッケージ内の気体コントロールや、パッケージフィルムにも品質を保持する工夫がある。
 
ウ 新製法:混合ガス充填について
 2023年4月1日に、レタス・リーフ系の商品3品(写真4)の消費期限をこれまでより1日延長し、これも業界最長となる、加工日から4日間とすることができた。これは開発に約4年間かかった「混合ガス充填製法(注3)」によるものである(写真5)。親会社であるキユーピー株式会社の研究所では、長年野菜の鮮度保持の基礎研究を行っており、その中でもガスの充填方法は、さまざまな野菜との組み合わせを何通りも模索してきた。その結果誕生したのが「混合ガス充填製法」である。鮮度保持に最も効果のある気体の組み合わせや手法を試行錯誤する中で、確かな効果が見られたため工場での採用に踏み切った。とはいえ、野菜の品質は品種や産地によって異なり、加工する工場がある場所の気候や水質などが変われば、その効果も変わる。そこで「混合ガス充填製法」を導入するに当たり、まずは各工場の環境の比較・分析を行い、その差異の改善にも力を入れてきた。その甲斐あって現在ではどの工場でも当該商品の消費期限を4日間とすることが可能となった(沖縄除く)。これは研究所と各工場が一体となり構築した、当社独自のノウハウである。

注3:商品の野菜の配合に合わせて、酸素・窒素・二酸化炭素をバランスよくパッケージ内に充填することで
   鮮度を保つ製法のこと。


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3 終わりに

 パッケージサラダはすでに日本の食卓に浸透しつつあり、今後も健康意識の向上や、近年言われる「タイパ(タイムパフォーマンスの略)」のような生活意識の変化とともに、市場はまだまだ伸びるであろう。
 パッケージサラダの原料調達や製造工程を知っていただくことで安全・安心に利用いただき、その簡便さや、手軽に野菜を摂取できるなどのメリットが改めて認識されることで、一層利用が促進され、野菜の消費拡大と国民の健康増進に寄与できることを願っている。


吉田 政道(よしだ まさみち)
株式会社サラダクラブ 
広報・広告宣伝部 次長
【略歴】
1991年4月 キユーピー株式会社 入社。同年から家庭用営業として横浜支店や大阪支店、さいたま営業所などで量販企業を担当。
2010年から株式会社サラダクラブへ出向 主に名古屋支店で営業活動。
2016年より株式会社トウ・アドキユーピー。
2019年より現職。