ここからは2024年問題に向けた当社の取り組みについて取り上げたい。
(1)独自の保管技術による青果物の在庫化(ストックポイント)
産地から消費地へのリードタイムが延びることで、到着時までの青果物の鮮度保持の技術は、産地側・実需側共に今後さらにニーズが高くなると考えており、当社では、以下の2種類の冷蔵倉庫を各拠点に設置し、さまざまな品目に合わせた保管体制を構築・運用している。
ア CA(Controlled Atmosphere)冷蔵倉庫は、従来の温度・湿度の調整に空気成分の調整を加え、さまざまな農作物を長期かつ新鮮に保存ができる(たまねぎやばれいしょなど)。
イ 当社で特許を取得している冷蔵倉庫(写真1)では、独自の技術により、農作物を腐敗させるエチレンガスを換気扇から庫外に排出している。また、超音波加湿器により、冷蔵保管によって起きる農作物の乾燥を防ぐことで、長期保管が可能となる(キャベツ、レタス、安納芋、シャインマスカット、柑橘類など。写真2)。
この鮮度保持と長期保管を可能とした技術により、消費地から離れた産地の農産品を当社冷蔵倉庫で一括保管・在庫管理し、出荷オーダーに応じた仕分け・納品まで、一気通貫での対応が可能となる。すでに冷蔵倉庫に保管しているたまねぎやばれいしょ、安納芋は、ほぼ通年出荷を実現している。
在庫化できることにより、産地にとっては1回当たりの出荷量を増やすことで出荷回数の低減や平準化が可能となり、実需側は、リードタイムの短縮や欠品回避、相場に応じた出荷調整が可能となる。
(2)コールドチェーンを実現する中継拠点の活用
今後の青果物流の課題解決の鍵になるのが、中継拠点の存在である。中継輸送は、トラックの長距離運行を複数のドライバーで分担することで、一人当たりの輸送距離を短縮しつつ、長距離輸送を可能とする。ドライバーにとっては、これまでの宿泊を伴う輸送から日帰りでの運行業務と労働時間の短縮が実現する。また、青果物の輸送においてはトラックの輸送中のみならず、中継拠点においても品目に応じた最適な温度で管理することにより、鮮度維持が可能となる。
2024年問題の課題解決の一つとして国土交通省も中継輸送の普及を目指しているが、令和3年時点のまとめでは、中継輸送に前向きな事業者は半数以上であるものの、実際に実施している事業者は16%にとどまっており、道半ばとなっている。
当社は鹿児島、鳥栖、倉敷、神戸と、西日本を中心に前述の保管施設を備えた大規模な拠点(ストックポイント)を設置しており、これらの自社ネットワークを活用した中継輸送により、九州・中四国の産地から、関東の消費地へのコールドチェーンを実現している。
(3)拠点シェアと共同物流などによる業界全体の最適化
これまで述べてきたことからも分かる通り、2024年問題は事業者単独の企業努力で解決できるものではなく、業界全体で取り組む必要がある。
当社でも、各地域の物流事業者と(1)中継拠点(ストックポイント)のシェア(2)共同配送(3)複数社間での最適配車―を目指し、連携を進めている。
具体的には、当社の岡山(倉敷)の拠点を各地域の物流事業者が中継拠点として活用できるよう、営業所となるオフィスやトラックの駐車場、ドライバーの休憩所などを整備し、九州・中四国の産地からの物流事業者と拠点をシェアすることにより、各社の長距離物流をサポートするほか、各集荷場所から物量を集約し、関東などの消費地に向けての幹線輸送を共同化する事で、配送コストと人員を抑制し物流資源の効率利用を図っている(図2)。
(4)産地のファーストワンマイルにおける連携強化
産地内における集荷の仕組みを効率化し、数量をまとめる集荷便の運用も始めている。すでに運用を開始している鹿児島県垂水市では、現地のエリアパートナーが各生産者の出荷数を把握し、当日の集荷ルートや物量を調整することで、集荷回数を減らすことができ、生産者もエリア内で数量をまとめることによって集荷コストの軽減が図れている。
このように、物流2024年問題への取り組みは、単一の経営体の努力だけで解決できるものではなく、業種・業界を超えたサプライチェーンを構成するすべてのステイクホルダーとの横断的な取り組みが必要となる。業界を超えた各事業者の強みを活かし、個社単体では成し得ない物流業界全体での物流資源の最適化を目指すべく、われわれは取り組みを進めている。