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話題 野菜情報 2023年4月号

GAP認証取得支援の取り組みで、 持続可能な農業経営を推進

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株式会社イトーヨーカ堂 マルシェ部 青果シニアマーチャンダイザー 佐久間 隼
顔写真

はじめに

 セブン&アイ・ホールディングスグループの環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』では、「持続可能な調達」を目標の一つとして掲げており、お客様に安心・安全・便利で環境にも配慮した商品を提供するために、グループ各社全体で持続可能性が担保された食品原材料の利用を進めています。その中でも、イトーヨーカ堂はかねてから持続可能な調達に取り組み、2002年から販売を行っている当社のプライベートブランド「顔が見える野菜。果物。」は、その時代に求められる安心・安全な農産物として、お客様の食卓に寄り添い続けてきました。

1 「顔が見える野菜。果物。」について

 「顔が見える野菜。果物。」とは、お客様に安心・安全でおいしい青果物をお届けし、生産者と消費者の距離を縮めていきたい、というイトーヨーカ堂の想いから生まれたブランドです。2002年の販売スタート時は5人の生産者でしたが、現在、生産者数は累計7000人を超え(図1、写真1)、2022年にはブランド創設から20周年を迎えることができました。

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 「顔が見える野菜。果物。」では、生産・流通・販売の各段階において独自の審査基準を設定しています。この基準を基に、全ての生産者の栽培履歴を毎作確認し、農薬や肥料の使用方法、残留農薬検査などにおいて、安心・安全であると認められた生産者の青果物だけを「顔が見える野菜。果物。」として出荷しています。基準をクリアした「顔が見える野菜。果物。」の生産者にはIDが付与され、IDによって生産から加工、流通、販売までの履歴情報をさかのぼることが可能です。つまり、「顔が見える野菜。果物。」には、「いつ、誰が、どこで、どうやって」生産をしたかを追うことが出来る、トレーサビリティシステムがあります(図2)。

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 生産者IDは商品パッケージに表示されています。お客様はIDを公式ホームページにて検索、もしくは二次元コードを読み取ることで、商品の生産者情報が検索でき、「生産者のこだわり」や「おすすめの食べ方」などの情報を見ることができます(写真2)。また、お客様に安心・安全であることを視覚的にわかりやすく伝えるため、生産者の似顔絵を商品パッケージに表示し、ブランド名の通り、生産者の「顔が見える」形で販売を行っています。

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 このようにトレーサビリティが確立されていることにより、お客様が安心・安全にお買い物ができると同時に、生産者特定が容易であることから、われわれバイヤーも産地を訪問し、生産者一人一人の作況や管理状況の確認を行うことができます。そして、実際に売り場に陳列した商品の品質に対しても、生産者ごとに評価を行うことが可能となっています。

2 生産者と共に成長を続ける、「顔が見える野菜。果物。」

 日本の農業は、農業就業者の減少や高齢化などのさまざまな課題を抱えています。これらの課題を解決し、持続可能な農業を行うためには、個人農家であっても企業同様に経営方針を持ち、透明性のある生産工程管理で農場に対する信頼性を高めることや、安全で働きやすい労働環境の整備などが必要です。そこで、イトーヨーカ堂は、生産者のGAPへの取り組みを支援するため、2009年から「顔が見える野菜。果物。」に、自己点検制度(通称「顔GAP」)を導入しました。GAPとは、食品の安全や環境保全、適切な労働環境などに関するさまざまなルールを遵守することで、将来にわたって持続可能な農業経営を目指す農業生産工程管理のことです。そして、東京オリンピック・パラリンピックの食料調達基準にGAP認証取得が義務化された社会動向を受け、段階的に「顔GAP」の項目内容のレベルアップを行い、2020年からはJGAP認証と同程度の基準となっています。
 このように、「顔が見える野菜。果物。」は常に時代に即した安心・安全とは何かを考えて基準の見直しを行っており、生産者は日々、生産管理方法の向上を図っています。私たちバイヤーは、安心・安全な青果物をお客様にお届けするという目標を生産者と共有し、共に一丸となってブランドの品質向上に励んできました(図3)。この生産者とバイヤーの両輪の取り組みが、今の「顔が見える野菜。果物。」を形作っている、と実感しています。ある時は共に土に触れ今後の展望を語り合う。この生産者と私たちバイヤーの顔が見える関係性によって、このブランドを長く続けることができたと考えています(写真3)。

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3 GAP認証普及のための、「顔が見える野菜。果物。ゴールドラベル」

 GAP認証は、お客様の食の安全を守るだけでなく、環境や生産者自身の安心・安全も守る仕組みですが、これまで自己流で農業に取り組んできた生産者にとっては、取得のための管理基準は非常に厳しいことも事実でした。取得難易度の高いGAP認証を、より生産者に積極的に取り組んでいただけるようにと、GAP認証を取得する生産者の商品は、より安心・安全な証として「顔が見える野菜。果物。ゴールドラベル」として通常の商品と差別化して販売しています(写真4)。

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 また、勉強会を開催し、すでにGAP認証を取得した生産者から直接、認証取得の経緯やメリット、実際の取り組みの様子などを他の生産者に紹介するなど、GAP認証取得の促進を支援してきました。
 その結果、GAP認証の取得率は増加し、生産者からは、「圃場(ほじょう)も倉庫もきれいになり、作業効率が上がった」「在庫管理をすることでコストが削減できた」「作業が明確になり、後継者の育成につながった」など、さまざまなメリットが報告されています。また、「難易度の高いGAP認証取得であったが、「顔GAP」への取り組みから始めることで、最終的にGAP認証を取得することができた」、というバイヤーにとっても喜ばしい生産者の声も頂いています。
 しかし、GAP認証はより信頼性の高い生産者を選ぶ基準となりますが、一般的にはまだ十分に知られていません。イトーヨーカ堂では、GAP認証を得た「顔が見える野菜。果物。ゴールドラベル」の価値を接客や販促物を通じてお客様に伝え、認知拡大を図っていきます(図4)。

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おわりに

 お客様および社会のため、さらなる安心・安全を求めて生産者と共に成長し続けてきた「顔が見える野菜。果物。」。取り組み開始から20年の月日が経ち、各地で生産者の代替わりを見届けては、この取り組みの価値が次世代に継承されるべき段階に移行していると感じています。顔が見える関係性で生産者と一体となり大切に守ってきた価値を、時流を捉えながら継続していかなければなりません。イトーヨーカ堂はお客様と生産者と共に持続可能な未来を見つめ、この国の農業の活性化を支えていきます。

佐久間 隼(さくま はやと)
【略歴】
株式会社イトーヨーカ堂 マルシェ部 青果シニアマーチャンダイザー
埼玉県出身。97年イトーヨーカ堂入社。
15年 青果部チーフマーチャンダイザー
17年 北海道食品チーフマーチャンダイザー
18年 青果部シニアマーチャンダイザー
20年から現職