(1) 阪神・淡路大震災では、家庭、行政ともに備蓄がなかったため、避難所での食事は困難を極め、極端な野菜不足に陥りました。同上の避難所の食事調査で「配給食にどんな食品があったらいいと思いますか」と質問し、食品名で回答を求めました。「緑黄色野菜」が1位で5割を超え、「野菜」を合計するとほぼ全員でした(図2)
(1-41頁)。
もちろん、自分で備蓄をしていなかったことも問題です。実は筆者も被災者でしたが、全く備蓄をしていませんでした。当時、阪神間には地震はないという風評を信じて気楽にのんびりしていたからです。
以下に、避難所の食事でどんな栄養素が取れたかという質問の結果を示しました(図3)。
すると1位「でんぷん」、2位「脂肪」、3位「たんぱく質」で、「ビタミン」「ミネラル」は少ないという結果でした。
一般に、健康のバロメーターとして「快食」「快便」「快眠」といわれています。快便はどうでしょうか。避難所で便秘になった人の割合は約4割で、その訳を尋ねたところ「食べ物のせい」と回答した人が約半数、「トイレのせい」が約1割、「両方のせい」が2.5割でした。便秘の人には「お腹が空かない」と答えた人が多いことも分かりました。
(2) 2011年3月に発生した東日本大震災での食事はどうだったでしょう。
被災地での食事は困難を極めました。その記録によると、便秘を訴えた人にサプリメントと野菜ジュースなどを配布した結果、便秘が格段に解消したという報告がされています(図4)
(2)。
同じく4月29日~5月1日の調査報告で避難所の給与食事の栄養量を栄養基準と比較した結果、「過剰」はたんぱく質と食塩、「やや過剰」はエネルギーと脂質、「不足」はビタミンC、食物繊維、レチノール(動物由来のビタミンA )でした
(3)。
また、宮城県の報告では次の通りです(表1)。
目標の栄養量に比べて特に不足しがちな栄養素はビタミン類で、中でもビタミンCが不足しています。
(3) その後、熊本地震(2016年4月)が発生し、「今後の課題」として次のような報告がなされました。
「自衛隊による炊き出し(白米)が複数避難所で行われたが(中略)、白米のみでは食せないという意見も多くあり、自衛隊による炊き出し(白米)を最大限活用するためには、漬物、海苔や副菜などの備えも必要と考えられた」
この内容から、おかずがない状態で白飯が提供されたことが分かります
(4)。