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話題 野菜情報 2023年2月号

コロナ禍の外食産業から見る野菜の需給動向について

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かなざわ食マネジメント専門職大学 フードサービスマネジメント学部  教授 堀田 宗徳
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1 はじめに

 2020年に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、2020年中、何度か感染者数がピークを迎え、その都度、主に飲食店を中心に規制を受ける形となり、外食産業界を含めた食産業界は、大きな打撃を受けた。
 この流れは2021年に入ってからも続き、2020年は1回であった緊急事態宣言が、2021年は3回発令されており、2020年よりも2021年の方が飲食店にとっては経営環境が厳しかったとも思える。
 2020年の外食産業市場規模は、前年と比べて30.7%減と、過去に例がない減少率ですべての業種において前年実績を下回っており、客観的な数字からもCOVID-19の外食産業への影響が大きかったことを物語っている。
 また、内食、中食、外食の合計を食全体のマーケットと考えた場合、2020年の食全体のマーケットは前年より9.4%減少し、70兆193億円と9年ぶりに前年実績を下回っている(表1)。

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 詳細をみると、内食が前年比2.2%増の44兆7260億円、中食が同1.8%減の7兆928億円、外食が同30.7%減の18兆2005億円である。
 しかし、2022年に入り、感染を抑えつつ経済も回していくという考えのもと、3月以降は食産業(飲食店など)への緊急事態宣言、蔓延防止等重点措置の発令もなく、通常営業が行われている。
 以上のようにコロナ禍3年目での外食などの状況を踏まえた上で、野菜需要の状況がどのようになっていたかを検証していくことにする。

2 COVID-19による消費者の食の変化

(1)食全体のマーケット
 食全体のマーケット(注)によると、COVID-19のパンデミック前の2019年は、8年連続で前年実績を上回り、前年比0.6%増の77兆2679億円となっている。このうち内食は、前年比0.3%の減の43兆7781億円、中食は前年比1.4%増の7兆2214億円、外食は前年比2.1%増の26兆2684億円であった。
 しかし、パンデミックとなった2020年では、食全体のマーケットは前年比9.4%減の70兆193億円となっており、食全体のマーケットが10%近く縮小したことは近年ではなかった事象である。
 内訳は前述の通りだが、特に外食の30.7%減は、市場規模の推計を始めた1975年以来、初めての大幅な減少である。
 これらのことから、外食産業がコロナの影響を大きく受けた結果、2020年の消費者の食が内食回帰となっていることが分かる。

注:食全体のマーケットとは、内食、中食、外食の支出額合計を指す。ここでは、内閣府の国民経済計算における家計の最終消費支出のデータを使用し、その中の「食料・非アルコール飲料」「アルコール飲料・たばこ」からたばこの販売金額を減じた数字に、外食産業市場規模を加えたものを採用した。
 また、外食は外食産業市場規模を、中食は経済産業省商業統計の料理品小売業を、内食は食全体のマーケットから外食、中食の数字を差し引いたものとした。


(2)食の外部化率と外食率
 公表された2020年の国民経済計算に基づき、2020年の食の外部化率と外食率について推計を行った。食の外部化とは、消費者が食費のうち食を外部に依存している支出額の割合であり、具体的には、食費に占める外食費と中食費の合計の割合である。2020年には前年の43.3%から7.2ポイントと大幅に低下し36.1%となった。コロナでの外出自粛、営業時間の短縮などで外食支出が減少したためである(図1)。

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 また、外食率は食費のうち外食に使っている支出額の割合であるが、2020年では前年より8.0ポイント低下し、26.0%となっている。
 過去から見てみると、食の外部化率は、2007年が45.2%と最も高く、その後緩やかに低下し、2010年辺りから横ばいで推移していたが、COVID-19の影響により2020年は大幅に低下し、1986年の水準となっている。
 外食率は、1997年の39.5%がピークで年々低下傾向を示し、2020年には26.0%と過去最も低い結果となっている。
 この食の外部化率、外食率の結果から、いかにCOVID-19が消費者の食へ大きな影響を及ぼしているかが分かる。
 COVID-19の影響がなければ、2040年には食の外部化率は70%になるという推計もあり、近い将来、食の世界では加工品が主流となると考えられていた。野菜においても、カット野菜のような加工された(付加価値のある)野菜の消費が増加し、素材としての野菜利用は減少していくと考えられることから、生産者も出荷先について消費者向けのみならず、業務用への対応もより必要となってくると考えられる。

3 内食回帰の消費者の野菜購入量の変化

 コロナ禍における消費者の内食回帰によって、野菜の需要がどのように変化したかを、総務省統計局の家計調査年報の野菜購入量を基に見てみる。
 まず、1世帯当たりの購入量を世帯人員数で除した1世帯1人当たりの野菜購入量を算出し比較した。
 それによると、年間生鮮野菜購入量は2018年が55.47キログラム、2019年が55.39キログラム(前年比0.1%減)、2020年が59.47キログラム(同7.4%増)、2021年が57.92キログラム(同2.6%減)となっている(表2)。

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 野菜購入量が大きく伸びた2020年の詳細を見ると、葉茎菜が7.7%、根菜が9.1%、他の野菜が4.0%とそれぞれ前年より増加しており、前年を下回った品目はれんこん(前年比3.3%減)、トマト(同0.5%減)であった。
 この状況は、2020年の新型コロナパンデミックに伴う外出自粛などにより、自宅で調理をする機会が多くなり、野菜の購入量も増加したことによるものと考えられる。
 2021年は、生鮮野菜全体で2020年の購入量を下回っているが、2019年と比較すると大部分の品目で上回っており、内食回帰が継続しているもの思われる。ただし、2020年と異なるのは、2021年は内食と中食を融合した内食回帰ではないかと思われる点である。
 調理食品の100世帯1人当たりの購入頻度増減率を見ると、2019年が6.9%、2020年が2.6%、2021年が4.9%でそれぞれ前年に比べ増加しているが、2020年の増加率が縮小している(表3)。これはサラダについても同じ傾向を示している。すなわち、2020年は、素材を購入して調理をしたことで調理済みのサラダの購入頻度が減り、2021年は内食に中食を取り入れることで、サラダの購入頻度が上がったと考えられる。

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 以上のように、最初のパンデミックでは素材から調理する内食であったため生鮮野菜の購入量が増加したが、2年目には内食の内容に中食も組み入れたことで、素材としての生鮮野菜の購入量が減少したものと考えられる。

4 COVID-19前後の外食産業の食材仕入額および野菜仕入額の推計

 前年比30.7%減と、過去に例がない大きな減少率となった2020年の外食産業市場の、食材仕入額や野菜仕入額がどのように変化したかを見ることにする。
 まず前提として、外食産業の食材率(売上高に占める食材仕入額の割合)を30~35%とする。
 2019年の外食産業全体の食材仕入額は、同年の外食産業市場規模が26兆2684億円であったことから、7兆8805億~9兆1939億円と推計される。
 さらに、農林水産省の外食産業原材料需要構造調査によると、食材仕入額全体に占める野菜・その加工品の仕入割合は、11.7%となっていることから、外食産業全体の野菜・その加工品の仕入額は、9220億円から1兆757億円と推計される。2019年の野菜の産出額が2兆1515億円であったことからすると、その半分近くを外食産業が仕入れていることになる。
 同様に2020年の外食産業全体の食材仕入額は、5兆4602億円から6兆3702億円となり、野菜・その加工品の仕入額は6388億円から7453億円と推計される。
 以上のことから、2019年から2020年にかけて、外食産業全体の食材仕入額が2兆4203億円から2兆8238億円程度減少したと推計され、うち野菜・その加工品の仕入額では2832億円から3610億円程度減少したと考えられる。
 このように、COVID-19の影響により野菜の仕入れが大きく減少したことで、生産者や流通業者などの各方面に甚大な影響を及ぼしていることがうかがえる。

5 まとめ

 直近、2022年は、コロナ感染を抑制しながら経済を回していくという考えの下、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置などの規制がなかったことや、水際対策の緩和などにより、外食産業界も通常営業が行われた。
 それにより、多くの企業で前年より大幅な売り上げの伸びがみられたが、収益面では各社、苦労しているのが現状である。
 今後は、売上高などがコロナ禍前の2019年の水準にいつ戻るのか注目される。
 一方で、2022年は、世界的なインフレの中、エネルギー問題によるガス・電気の値上げ、円安、食材の高騰、物流費・人件費コストの上昇などに直面し、経営努力も限界に達して、メニュー価格の引き上げに踏み切る企業が多くなっている。中には、2022年に2度の値上げをした企業も出てきており、現在のところ値上げに対して「仕方がない」という消費者の容認はあるものの、値上げが頻繁に続けば客数の減少への影響が懸念されるところである。
 また、2023年に食品メーカーなどが業務用加工品などの値上げを発表しており、値上げの流れは今後も続くものと思われる。
 野菜については、肥料価格の高騰やエネルギー問題による石油、電気価格の引き上げにより、今後ハウス栽培などの野菜に影響が出るものと思われる。
 いずれにしてもウィズコロナの中で、消費者の食行動を見極めることにより、コロナ禍以前の水準以上に外食産業の売上高や利益が回復することが、本当の意味での外食の復活である。生産から消費の食の流れが機能することで、野菜の需要も拡大する。その意味でも外食産業の復活がカギとなってくる。


堀田 宗徳(ほった むねのり)
【略歴】
かなざわ食マネジメント専門職大学フードサービスマネジメント学部 教授
1989年4月 財団法人外食産業総合調査研究センター入社
2009年4月 宮城大学食産業学部フードビジネス学科准教授
2022年4月より現職