(1)日本の社会構造の推移
中食市場が拡大した背景には、少子高齢化や単身世帯増加などの日本社会の変化が大きく関係している。日本は2010年頃を境に人口減少に陥っており、さらに高齢者の割合は25%を超える超高齢化社会に突入している。高齢者の割合については、2030年頃には30%を超えるとの予測も出ており、さらなる高齢化は避けられない状況である。一方、世帯構成を見ると単身世帯は増加し続けており、現在は全世帯の3分の1が単身世帯である。総務省統計局の予測では、2040年には単身世帯の割合が全体の40%程度にまで増加するとみられ、社会問題化している。単身世帯では、食材を買っても消費しきれない場合があり、調理の手間をかけないような食生活になりやすくなる。また、高齢になると食べる量が減るため、家庭内廃棄を避け経済的な合理化を求めることから加工済みの食品へのニーズが増え、市場が活発化している。
そのほか、中食市場の拡大については共働き世帯の増加も大きな要因とみられる。1980年代に一般的だった専業主婦世帯は、徐々に世帯数が減っており、90年代後半を境に共働き世帯と世帯数が逆転。現在では専業主婦世帯数は共働き世帯数の半分以下にまで低下している。
(2)家庭内支出の状況
家庭の食料支出を見てみると、総務省「家計調査年報」では調理済み食品が2000年代後半から家庭の支出額として上昇傾向を続けており、2019年は外食に続く支出額となった。それが2020年には逆転し、家庭内で最も支出額の多い品目となっている。2020年は新型コロナにおける行動制限などがあったため、外食にとっては厳しい状況になったと推察される。しかしながら、飲料や肉類、菓子などの加工食品についても支出額は増えており、家庭で消費される食品が推移していることを感じさせる内容となっている(図3)。
ここで、外食と調理食品の支出金額について、年収別で比較する。2009年、2019年の2期を比較してみると、外食の支出金額については年収の高さに比例して大きくなる。年収約350万円以下の世帯では外食の年間支出金額が5万~10万円となったのに対し、約850万円以上の世帯では25万~30万円であった。一方、調理食品では約350万円以下の世帯で8万~10万円、約850万円以上の世帯で12万~16万円と支出金額の差が小さく、どの年収世帯も一定量の購入が認められた。
外食の場合は高所得者の利用度は高いが、惣菜は幅広い層が利用していることが分かる(図4)。